7月15日水曜日 11時
「南総里見八犬伝 なんそうさとみはっけんでん」
幕が開くと大屋根なので、隣の人がワア~と声を上げた。つかみはOK。
でも〈芳流閣屋上(ほうりゅうかくおくじょう)の場〉と〈円塚山(まるつかやま)の場〉だけの上演なので、物語のおもしろさはほとんど無し。
市川右近の犬飼現八が炎の中から出てくるときの仕掛けに迫力があった。
赤いライトと煙で炎がメラメラとあがり、国立劇場で布をひらめかせたのよりおもしろかった。
もうひとつ、梅玉(ばいぎょく)の犬山道節が*幕外の引っ込みをしたとき、手の仕草がきれいで見事だった。
梅玉の荒事なんて珍品としか言いようがないけれど、きれいな荒事というのも気持ちがいいものだなと新鮮な発見。
「与話情浮名横櫛 よはなさけうきなのよこぐし」
海老蔵個人史としては、せりふがうまくなっている与三郎(よさぶろう)。
毎度のことだが見た目の美しさでは引けを取らないけれど、粗(あら)が目に立つのも彼ならでは。
お富(とみ)に一目ぼれをして*羽織落としとなるところの立ち姿の悪いこと。羽織を落とすことに気が行っているのか、からだの重心がおかしい。
「*御新造(ごしんぞ)さんぇ、おかみさんぇ」まではよかったが、「しがねぇ恋の」からはいつも通り不安定な音程。
この妾宅から去って*下手(しもて)にはけるとき、背中を見せて忍び足の仕草をするところ、あまりに形が悪くて滑稽になってしまい客席から失笑が漏れる。
舞台に居る人たち、なんでここで笑いが起こったのかわかったかな?
中車(ちゅうしゃ)の多左衛門(たざえもん)。キセルを手にして手首を交差させリラックスしたすわり姿をみせるだけのところで、硬直してしまっている。
形をとるというのは難しいのだなと思わせる。
玉三郎は貫禄の美しさ。特に風呂上りに化粧を直している姿が色っぽい。
「蜘蛛絲梓弦 くものいとあずさのゆみはり」
過去に2回見たと思うが、今までで一番まとまっているように見えた。なぜかな?
按摩の踊りが特によかった。杖の上に重ねた手と、胸が躍っていて、派手な動きはないのに座っている私の胸から肩もつられて動いてしまいそう。
袴の柄が蜘蛛の糸の上に蝶々。ちょっとおもしろい柄だった。
押し戻しに海老蔵。こういう何も考えていない役なら文句なく彼のもの。グッと目をむいたとき客席から感嘆の声があがった。
目玉が前に飛び出る顔が浮世絵の誇張ではないとわかったのは彼の顔を見てのことだものなあ。
*幕外の引っ込み
幕を完全に閉めてから、花道に残った役者が退場すること。空間が狭くなることで客と役者の一体感が強まり、クローズアップ効果がある。
*羽織落とし
恋に落ちた瞬間など、茫然自失となった気持ちを表す方法。着ている羽織をちょっとした仕掛けで、自然に肩からハラリと落ちたように見せる。
今回、海老蔵は自然に見せられなくて、落ちる少し前から羽織の襟をはだけていた。
*御新造(ごしんぞ)さん
町家の富貴な家の妻女をいう。また、他人の妻女、特に、新妻や若女房をいうのに用いた。
*下手(しもて)
客席から見て左側。
「南総里見八犬伝 なんそうさとみはっけんでん」
幕が開くと大屋根なので、隣の人がワア~と声を上げた。つかみはOK。
でも〈芳流閣屋上(ほうりゅうかくおくじょう)の場〉と〈円塚山(まるつかやま)の場〉だけの上演なので、物語のおもしろさはほとんど無し。
市川右近の犬飼現八が炎の中から出てくるときの仕掛けに迫力があった。
赤いライトと煙で炎がメラメラとあがり、国立劇場で布をひらめかせたのよりおもしろかった。
もうひとつ、梅玉(ばいぎょく)の犬山道節が*幕外の引っ込みをしたとき、手の仕草がきれいで見事だった。
梅玉の荒事なんて珍品としか言いようがないけれど、きれいな荒事というのも気持ちがいいものだなと新鮮な発見。
「与話情浮名横櫛 よはなさけうきなのよこぐし」
海老蔵個人史としては、せりふがうまくなっている与三郎(よさぶろう)。
毎度のことだが見た目の美しさでは引けを取らないけれど、粗(あら)が目に立つのも彼ならでは。
お富(とみ)に一目ぼれをして*羽織落としとなるところの立ち姿の悪いこと。羽織を落とすことに気が行っているのか、からだの重心がおかしい。
「*御新造(ごしんぞ)さんぇ、おかみさんぇ」まではよかったが、「しがねぇ恋の」からはいつも通り不安定な音程。
この妾宅から去って*下手(しもて)にはけるとき、背中を見せて忍び足の仕草をするところ、あまりに形が悪くて滑稽になってしまい客席から失笑が漏れる。
舞台に居る人たち、なんでここで笑いが起こったのかわかったかな?
中車(ちゅうしゃ)の多左衛門(たざえもん)。キセルを手にして手首を交差させリラックスしたすわり姿をみせるだけのところで、硬直してしまっている。
形をとるというのは難しいのだなと思わせる。
玉三郎は貫禄の美しさ。特に風呂上りに化粧を直している姿が色っぽい。
「蜘蛛絲梓弦 くものいとあずさのゆみはり」
過去に2回見たと思うが、今までで一番まとまっているように見えた。なぜかな?
按摩の踊りが特によかった。杖の上に重ねた手と、胸が躍っていて、派手な動きはないのに座っている私の胸から肩もつられて動いてしまいそう。
袴の柄が蜘蛛の糸の上に蝶々。ちょっとおもしろい柄だった。
押し戻しに海老蔵。こういう何も考えていない役なら文句なく彼のもの。グッと目をむいたとき客席から感嘆の声があがった。
目玉が前に飛び出る顔が浮世絵の誇張ではないとわかったのは彼の顔を見てのことだものなあ。
*幕外の引っ込み
幕を完全に閉めてから、花道に残った役者が退場すること。空間が狭くなることで客と役者の一体感が強まり、クローズアップ効果がある。
*羽織落とし
恋に落ちた瞬間など、茫然自失となった気持ちを表す方法。着ている羽織をちょっとした仕掛けで、自然に肩からハラリと落ちたように見せる。
今回、海老蔵は自然に見せられなくて、落ちる少し前から羽織の襟をはだけていた。
*御新造(ごしんぞ)さん
町家の富貴な家の妻女をいう。また、他人の妻女、特に、新妻や若女房をいうのに用いた。
*下手(しもて)
客席から見て左側。