7月6日月曜日 16:30

「熊谷陣屋」
吉右衛門に教わったという海老蔵の初役・熊谷直実(くまがい・なおざね)。
自分がすることに手いっぱい。
周りは、芝雀(しばじゃく)の相模(さがみ)、魁春(かいしゅん)の藤の方(ふじノかた)、梅玉(ばいぎょく)の義経、左團次(さだんじ)の弥陀六(みだろく)と経験豊か、役が手に入った役者で固めているから、海老蔵だけ別の芝居から飛び込んできた人みたいに見える。

帰り道twitterに

「海老蔵、カミさんに黙って子供を殺してしまってテンパってる熊谷をよく表現していたと思う」
とコメントした人のを読んでウマイ!と思った。この人は海老蔵熊谷を非難している意図はなさそうだけど、コメント通り、見たことのない熊谷になってしまっている。

藤の方に敦盛の死を語る最初『戦場の義は是非なしと御諦め下さるべし』などと言う直前、相模に向かって笑顔を見せる。何なのだろうこれ。

敦盛の死を語っている時の扇の扱いが荒っぽく床を打つ音が響き、刀を敦盛に見立て砂をはたく仕草でも鞘を思い切り叩くので音が出る。

義経が座って敦盛の首実検(くびじっけん)を促すせりふを言っている間、ギロギロ、ギロギロ目を動かして梅玉の芝居の邪魔になる。

どれも、役に腹がないから何かしていないと芝居してる気持ちになれないのではないかな。

しかし相変わらず見得をした瞬間の顔の立派さは抜群。

「怪談 牡丹燈籠」
この演目なら中車は芝居がしやすいだろう。今まで見た中で一番素直に芝居をしていた。
玉三郎はこの日せりふがたどたどしいところがあって今一つ。
海老蔵の三枚目は特にどうということもなし。

元の脚本でも最後は妙な終わり方なので、今回の様に中車の伴蔵がお露の幽霊に取りつかれたように追われて駆け込み幕となるというのはすっきりしていい。

お露は坂東玉朗(ばんどう・たまお)らしい。抜擢なのだろう。きれいだったしきちんと勤めていた。

これだけ笑いを取る芝居になると、猿之助の三遊亭円朝が途中で出てくる意味がわからなくなる。「怪談噺だから円朝」ということなのだろうけれどなあ。

夕食は三越地下の物産展で、福岡市の日本料理「海木」のだしいなり4個\1.296。
ちょこんと乗っている蓼の葉も効いておいしかったけれど、1個¥300だものなあ。

*首実検 討ち取った首がその者の首であるかどうかを確かめること。また、その儀式。(日本国語大辞典より)

*元の戯曲 この芝居は円朝の噺を元に、大西信行が脚色して文学座で上演したものを歌舞伎にっもってきたもの。

*坂東玉朗 昭和52年生まれ。玉三郎の弟子。国立劇場第十四期歌舞伎俳優研修所修了生。研修所を出て役者になった人が主だった役につくのは、あまりないことなのだが、
玉三郎はコレと目を付けた役者に役を振ることがよくある。