6月25日木曜日 18:30 帝国劇場
歌舞伎役者・尾上松也(おのえまつや)が出ているから一度見てみようかなと思っていたところにe+会員限定公演の案内がきたのでとってみた。

松也以外の出演者はほとんど知らず、顔ぶれをざっと確認したのも2日前。
その時点でわかったのは
花總まり→宝塚の娘役だった人かあ
井上芳雄→NHK BSドラマ「そこをなんとか」を猿之助が出ているからと見ていたら、突然歌い出した一瞬が抜群にうまかったので覚えていた人。それまでに十分有名な人だったのね。
という程度で、久しぶりに帝国劇場へ足を運ぶ。

楽しかった!
事前に知っていた主役二人が抜群に歌がうまかった。

花總まりのエリザベートは子供時代から、老年まで姿・声に違和感がない。尤も老年はかなりの若作り。
井上芳雄のトートはうっとりする声に乗せて、次々と歌い上げる様みごと。
期待の松也はいまひとつ。高音を2回はずしたし、狂言回しとして自在に声を操るところまではいかず一本調子。見た目はよかった。

どのナンバーもよかったし、井上芳雄に本当にほれぼれしたのは当然のことだが、エリザベートが夫のフランツ・ヨーゼフ1世(佐藤隆紀)と心通わぬことを二人で歌う「夜のボート」は、長年すれ違って来た夫婦の悲哀がにじみ出ていて随分と聞きごたえあった。
佐藤隆紀は部屋に閉じこもったエリザベートに「どうか出てきて」と懇願する歌も切々とした情感があふれ芝居になっていたなあ。この役が美人の女房に振り回される間抜け亭主に見えると一遍に芝居が薄くなってしまうだろうから、彼がうまくて助かった。

このミュージカルはエリザベートを悲劇の女王に見立てているわけではないので、物語が進むにつれて、彼女の思慮の足りなさも感じ取れる。
筋が通っているのは姑・ゾフィーの方で、その地位にあれば果たさねばならぬ義務があるというのは尤も。それを追行するには自分を殺さねばならぬというのも尤も。
だが歴史の流れも、人生も正論通りにはいかず崩壊していく。それがダイナミックに、ドラマティックに目の前で展開されて見ごたえあった。

しかしこのミュージカル、ぼやっと初めて見に行く私の様な者が少数派なのは確かだ。
隣席の同年輩の男性は一人で見に来ていたが、手拍子、拍手ともに間髪入れずのタイミングで打つから、あきらかにリピーターだった。
休憩時間の漏れ聞こえる会話も別キャストとの比較。

エリザベートの髪飾りのレプリカを何種類か売っている売店で、そのほとんどが売り切れて入荷待ちだと話している販売員さんが「次にお越しになった時に取り置き云々」とリピート前提に話しているのに驚きながら歩いていたら、別の売店でも「次回お出でになった時」と話しかけているのにはビックリした。

いやあ~、東宝ミュージカル、商売うまいわあ。出演者
尾上松也