5月30日土曜日 新国立小劇場 18:00
主人公・エリーダ、今の言い方なら「めんどくさい女だなあ」ということになりそう。
1889年に初演されたイプセンの作品。
「人形の家」が出ていく女のバージョンなら、この作品は戻ってくる女のバージョンということか。
古いところも目に立つが、「こんなはずではなかった」「別の選択があるはずだ」と迷う気持ちに古さはない。
医者の後妻として裕福な生活を送るエリーダの言い分は、豊かなればこそのわがままにも映りかねない。
ただ麻美れいの心地よいなめらかな声で語られると、それはアンニュイな美しい悩みに聞こえてくる。
医者から謎の船乗り男に乗り換えたところで、マイナーチェンジでしかないだろうが、彼女にとっては「主体的に選んだ」という明確な意識が重要なのだろう。それはわかる。
しかし結婚十数年を過ぎてから遡って、結婚のきっかけを
「あなたは私を買った。わたしはわたしを売ったのよ」と言われては亭主の立つ瀬がないだろう。亭主役が村田雄浩なので、見た目にも気の毒さが際立つ。
その十数年前、結婚を決めた瞬間の気持ちはこうだったと見せるのが、エリーダの義理の娘ボレッテと元家庭教師の結婚。この対比が効いている。外の世界を見るための資金を結婚という形で手に入れることは「売買」だ、ともいえる。
プロポーズを受け入れた後、ボレッテがうつむいて暗い表情を見せるのも「売買」であることがいずれ意識に浮かび上がってくる予兆かと。
白で統一されたファッションのエリーダ一家に対して黒づくめの見知らぬ男役の眞島秀和。エリーダを奪いに来て断られたらどうするのだと聞かれ「俺は自由な男だから死を選ぶ」とピストルを出したところは、危うくコントになりかけていた。短い時間しか出番がないので、役作りが難しかっただろうな。
池田ともゆきの美術もよかった。
甲板を思わせる板敷で船にも波にも見えるステージを作っていた。
上演最中の20:30頃、少し大きな地震が来たので芝居が中断され、15分ほど後に再開された。揺れが来てすぐに頭上を見たけれど、幸いライトなどがない場所だった。客席が舞台を360度囲むような形の劇場は客席上にも吊り物があるから怖い。
主人公・エリーダ、今の言い方なら「めんどくさい女だなあ」ということになりそう。
1889年に初演されたイプセンの作品。
「人形の家」が出ていく女のバージョンなら、この作品は戻ってくる女のバージョンということか。
古いところも目に立つが、「こんなはずではなかった」「別の選択があるはずだ」と迷う気持ちに古さはない。
医者の後妻として裕福な生活を送るエリーダの言い分は、豊かなればこそのわがままにも映りかねない。
ただ麻美れいの心地よいなめらかな声で語られると、それはアンニュイな美しい悩みに聞こえてくる。
医者から謎の船乗り男に乗り換えたところで、マイナーチェンジでしかないだろうが、彼女にとっては「主体的に選んだ」という明確な意識が重要なのだろう。それはわかる。
しかし結婚十数年を過ぎてから遡って、結婚のきっかけを
「あなたは私を買った。わたしはわたしを売ったのよ」と言われては亭主の立つ瀬がないだろう。亭主役が村田雄浩なので、見た目にも気の毒さが際立つ。
その十数年前、結婚を決めた瞬間の気持ちはこうだったと見せるのが、エリーダの義理の娘ボレッテと元家庭教師の結婚。この対比が効いている。外の世界を見るための資金を結婚という形で手に入れることは「売買」だ、ともいえる。
プロポーズを受け入れた後、ボレッテがうつむいて暗い表情を見せるのも「売買」であることがいずれ意識に浮かび上がってくる予兆かと。
白で統一されたファッションのエリーダ一家に対して黒づくめの見知らぬ男役の眞島秀和。エリーダを奪いに来て断られたらどうするのだと聞かれ「俺は自由な男だから死を選ぶ」とピストルを出したところは、危うくコントになりかけていた。短い時間しか出番がないので、役作りが難しかっただろうな。
池田ともゆきの美術もよかった。
甲板を思わせる板敷で船にも波にも見えるステージを作っていた。
上演最中の20:30頃、少し大きな地震が来たので芝居が中断され、15分ほど後に再開された。揺れが来てすぐに頭上を見たけれど、幸いライトなどがない場所だった。客席が舞台を360度囲むような形の劇場は客席上にも吊り物があるから怖い。