5月27日水曜日 国立能楽堂 13:00

「名取川」
山本則重(のりしげ)、則俊(のりとし)。
自分の出家名を川に流してしまったと思い込む、かなり素っ頓狂なご出家。
則俊が川に流されるところなど、かなり激しい動きで勤めてダイナミックな舞台。
そこはかとなく、可笑しくて良い狂言。

「隅田川」
友枝昭世(ともえだ・あきよ)、宝生閑(ほうしょう・かん)。
シテが出る前の小鼓・成田達志(なりた・たつし)、大鼓・亀井忠雄(かめい・ただお)の掛け合いに聞き応えあった。気持ちが舞台に吸い込まれた。良い「間」の見本みたいな打ち方だった。

宝生閑の舟中の語りは、最初弱々しく聞こえたが、子が亡くなったと述べる瞬間の哀れさは耳に染み入る。
この宝生閑の一言と同時に友枝昭世の母の手から笠が滑り落ちた。ゆっくりと、本当にゆっくりと二度シオル間は、この日一番。ただ、ただ悲哀に身を浸すような時間だった。

目元が美しい面は曲見(しゃくみ)だそうだ。