5月21日木曜日 国立能楽堂

「翁」
翁・観世清和。名前の漢字を元に戻したそうな。

談山(たんざん)神社所蔵の翁面(摩多羅神面)をつけての演能。通常使うものよりかなり大きいとのことだったが、脇正面から見ても大きいのがよくわかった。

談山神社では非常に狭いお堂の中で上演するので、国立ではどう工夫するのかと思っていた。
地謡は囃子方の後ろに八人前後に座った。
鼓は大倉源次郎一人。何もしない大鼓、太鼓がただ座っているのは神社と同じ。

現地より神聖さという点では劣るので、珍しいものを東京で見たなという感じかな。

「棒縛」
茂山七五三が病気休演。兄弟の次郎冠者、太郎冠者を楽しみにしていたのでちょっと残念。

「恋重荷」
梅若玄祥のシテ・山科荘司が後半、怨念を抱いて登場する時の面と女御の面が談山神社所蔵の物。女御の面は鼻の頭が欠けていた。

前半、山科荘司は腰に菊の花を挿していた。それを重荷に挿しはさんでいった。
後半、女御へ恨みごとを言う瞬間、その菊を女御に投げつけた。こういうところの機敏な演技は玄祥ならではのうまさ。
女御は飛んでくる菊を避けるようにさっとシオリ、からだを縮めた。

初めて見る仕方だったけれど、恨みの強さが良く出ていて面白い。

怨霊になってからの山科荘司白の面は、白い仮髪に覆われてきちんと見える場面は少なかったけれど、蒼白の面差しで怖い顔なのは確か。