2月10日火曜日 13:00 シアターコクーン

チェーホフをケラリーノ・サンドロヴィッチが演出。

「三人姉妹」って、こんなに出演者多かった?という位、一人一人が粒だって見える舞台だった。

長女オーリガ・余貴美子、次女マーシャ・宮沢りえ、三女イリーナ・蒼井優が粒立つのは当然ながら、弟のアンドレ役・赤堀雅秋が、三人の姉たちの期待を一身に受けながら、何者にもなり得なかった自分へのいらだち、弱さを感じさせて存在感が強かった。
人目のないところで本を床に叩きつける姿、終盤、黙って乳母車を押す丸まった背中に目が引きつけられた。

モスクワへ行けばなんとかなる、こんなはずではないと、今に満足しない姉妹と対照的に自分に折り合いをつけて生活している二人もきちんと描かれていた。
その一人、年老いた乳母アンフィーサ(福井裕子)が、オーリガの配慮で学校の寮に一室を与えられた晩年の我が身を「私はなんて幸せ者なんだ」と感謝の言葉をつぶやく暖かい場面。
もう一人、年老いて耳の遠い守衛フェラポント(塚本幸男)が乳母車の赤ちゃんにおもちゃを振って見せる笑顔。
ことさら引き立つように演出されているわけではないけれど、延々としゃべり続ける人々の中で、ぽつんと心に飛び込んでくる場面だった。

マーシャが不倫相手のヴェルシーニン(堤真一)と逢引する場面では、マーシャがクッションを頭に乗せて部屋に入ってきたり、衝立の陰から顔だけ出したりする不自然な動き方と、「トラム・タム・タム」という二人の間だけの呼びかけが共鳴しておもしろかった。

最後の白樺の林の場面、きれいだった。上手に家の玄関口が見え、十数本の白樺の幹だけが高く聳えている道具立て。美術は二村周作。

オーリガが「なんのためにわたしたちが生きているのか、わかるような気がする」と締めのせりふを述べる所は、静かに感動的。それはわからないと思うけれど、そうやって生きていくものよね、と。