幾度恐怖に目を覚ましたか。
動悸は己でも耳から聞こえる様な音を響かせていた。
夢と現実の境界線が引けなくて度々夢だと思っては腕を切り刻んだ。
それが現実だった時は夏でも長袖を着た。
以前の芳樹はいなくなったまた別の芳樹に生まれ変わった。 体は丸くいかにも体臭が漂ってきそうだったのに対し、病的に痩せこけた。目は虚ろ幻聴は耳の奥頭から聞こえると耳をかきむしった跡。
更には腕も虫がいるからと引っ掻き傷。
そんな姿を誰にも見せられないと仕事を休む日も度々あった。
狂いそうな頭の中の喧騒。
狂いそうな体中のはいつくばる様なむずかゆさ。
芳樹は我慢が出来なかった。
もう正義感なんて何処にもなかった。
逝きたかった楽になりたかった。
もう辛いのに飽き飽きしていた。
目を瞑ることも苦痛になった。
誰も助けてはくれない。
皆頭の中で自分を罵倒する。
だから考えてることも他人に聞こえてるんだ。
盗聴されてる。
医者に見てもらったとき頭に埋め込まれたんだ。
芳樹はこの考えもばれてしまうのではないかと自分を殺そうとした。
死ねないでいた。
殺せなかった。
勇気も何にもない。
見殺しにしていたあの人達も勇気をだして死んでいったのに。
と思いながら泣いた。
死者からの声を脳内再生しながら。
つづく