先日あった中学生女子ユーフォニウム奏者とのレッスンのお話です。
トロンボーン奏者でアレクサンダーテクニーク教師(実習中)のかたさんです。
今回はアンブシュアーモーションのことが話題の中心ですので、そのことに関して載っているバジルクリッツァ-さんのブログをお読みください。
【高音がきたなくなるから何とかしたい】
この子のお悩みでした。
少し吹いてもらいアンブシュアーモーションを見たところ、彼女は高音に向かい下へ、低音に向かい上へ移動する中高位置タイプに見えました。
この動きは、結構はっきりとわかりました。
しかし私には、彼女の悩みである高音よりも低音に行く時のアンブシュアーの変化が気になったので、何が起きているかじっくり観察してみる事にしました。
【低音へ行く時に緩むアンブシュアーの筋肉】
チューニングのB♭から1オクターブ下のB♭までのB♭-F-B♭を上向下降両方してもらったところ、真ん中のFからB♭へ下がるところで、一瞬アンブシュアーが緩んでから下のB♭を出すための状態に再び戻す動きが見えました。
一度筋肉を緩ませてから再び使うという流れです。
金管楽器の低音域への移行におけるアパチュア(金管楽器やフルートにおける息が通る時の唇の穴。カメラや顕微鏡のピントを絞る値として使われる言葉)の働きとして、何らかの方法で上下の唇の距離が離れる必要があります。
その唇同士が離れる時に、離れるための動きではなく一旦緩んで、それからB♭を吹くために必要な程度唇が近づく動きになっていたのです。
低音を出すのに最も手っ取り早いのは、唇を緩める事です。
こうすると唇の張りが少なくなるので、振動の幅が大きくなり低音が出しやすくなります。
ところが低音と言うのは、高音よりも音のツボが広くても出てしまうので、その音を出すのに最適なアンブシュアーでなくてもとりあえずそこに近い音は出ます。
しかし決して音の質は良くなく、音程と響きのバランスも保たれていないので、音は暗いのに音程高く聴こえたりします。
彼女には、唇周りの筋肉を積極的に使うことを提案しました。
具体的には、唇をまくり上げるように顔の前に向かい動かすことをしてもらいました。
【アンブシュアータイプが変化した!】
唇周りのアンブシュアーを形成する筋肉を緩める事から、積極的に動かすプランに変える事を提案しました。
具体的には、筋肉の動きがわかるよう、ポルタンドを入れてなだらかに音が変わるようにアパチュアを広げていくことを実践してもらいました。
すると、F-B♭の音の移動が滑らかになり、引っかかるような詰まりはなくなりました。
本来であればこれでいいのですが、見ていると意外なことが!
「あれー?モーション変わってない?」
最初に書いたように、彼女は中高位置タイプの動きをしていたのですが、アンブシュアーを形成する筋肉を積極的に使ってみると超高位置タイプの動き(高音へはアンブシュアーとマウスピースが上へ、低音へは下へ動く)に変わっていました。
そう、彼女の本来のタイプは超高位置タイプだったのです。
そしてこの動きには、それまでよりも「この音を出す為にこの動きをする」と言うような方向性が見られました。
そのまま当初の悩みである高音へ移行してもらうと、私の聴いた感覚でも確実に良くなっていましたし、本人の吹いた感覚的にも楽に高音が出ていたようです。
アンブシュアーを安定させることにより、本来彼女が持つモーションタイプが現れたんですね。
【アンブシュアーの変化を意識的に行う練習】
ここまで書いたことでお分かりになったと思いますが、当たり前のことですがアンブシュアーモーションではアンブシュアーを作る筋肉の形成が大切です。
バジルさん記事にも書いてありますが、アンブシュアーモーションとは「アンブシュアーとマウスピースが移動する」ことです。
マウスピースの移動のみを行って唇ダルダルの中学生もたくさん見てきました。
これだけではマウスピースを唇に押し当てているだけで、正直に言うとそういう子の音はグシャグシャです。
アンブシュアーを形成する筋肉もそうですが、息もあまり使えていません。
このような傾向のある人は、マウスピースでバジングをしてみるのが良いでしょう。
バジングは、楽器で吹くよりも息が安定して出続けていることとアンブシュアーが安定していないと音が出せません。
バジングでポルタンドをすると、音の移行と唇の変化との連動がわかるので、私は今でも音出しに使っています。
移動と変化がわかる程度にゆっくりと行ってください。
当然ですが、呼吸に関しても丁寧に動きの観察をする必要があります。
息とのバランスより唇に微細な変化が起こるのがわかるでしょう。
首や喉辺りに入る余分な力みも感じられるかもしれません。
お試しください。