ミステリー裏返し39 「片桐佐里の絶叫岬」33 | 千の扉

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コンサルタント西河豊のSTORYを中心としたグログ

先にライナーノーツ

 

次は、片桐の殺傷場面、前半で片桐側から描いているので、読み返したくなるのが狙い。

 

回想しながらも、はるかは関空に近づいていく。

(回想も絶景館脱出に近づいてくるという構成)

 

片桐は間に合うのか?ということろ

 

 

***

 

「片桐佐里の絶叫岬」

 

STE13 関西エアポート 

 

CUT4 殺傷

 

はるかは天王寺駅に着いた。

回想を急がねば関西空港についてしまうな。

 

俺が開かずの間に戻った日の午前中に早くも刑事が来た。

やけにヒタヒタと迫ってくる片桐とか言う、女刑事が、俺の部屋に、入ってきたのだ。

後ろについている上司らしき男はまず、問題外だった。

女は会話の中で、最も痛いところを突いて来た。

DVD「ショーシャンクの空に」を注視、庭の鳥小屋を注視

「庭で運動している割には日焼けしていないわね」

そして、部屋を出る前に、「また会いまっしょう」

あの何か全てを見抜いているような眼差し、俺のしたことを見抜かれているような気がした。

凶器のシャベルはトンネルの途中で、埋めてあるので大丈夫だと思う。

しかし、鳥小屋の床を外されたら抜け穴がばれる。

犯行を予想させるようなDVDをそのままにしておいたのも俺のミスだった。

こちら側も、あの庭園側のような形で偽装するか?いや、こちら側には偽装するためのハメ板がない。

ダメだ、あの女刑事の捜査を止めなければ・・・

俺は次第に焦りだしていた。

どうすればいい、向こう側に行くトンネルはある。

このまま、逃亡するか?

あるいは、まず、様子を伺いに行くか?

出来ればあの女を見つけて殺してしまえば最高の口封じにはなる。

俺はさっそく翌日行動に移した。

今回は以前ネットで仕入れていたナイフをズボンの後ろポケットに忍ばせた。

鳥小屋の床を外して穴に潜り込む。

偽装した出口で脱出に苦労した。

板にかぶせた土と砂が重くてなかなか持ち上がらない。

体制が悪い。

斜めに掘った穴の角度を利用して、壁面に寝て、両腕で持ち上げようとしているので足場がなく力が入らないのだ。

そうだ、昨日、穴に掘り込んだジャッキがあるじゃないか。

俺はまず、板と土の間にジャッキがはまり込むようにシャベルで浅い方の縁の土を削った。

ジャッキは見事にそこに嵌り、手で回すと徐々に板は持ち上がっていった。(136P図4)

板は中央付近でひびが入っていた。誰か上を歩いたのか?ことを急がねば

40cmほど持ち上げて顔だけ出して絶景館を見る。

大丈夫だ、もう午後6時に近く、真っ暗でカーテンも掛かっている。

俺は穴をそろりと抜け出し、ジャッキを寝かせ、板を降ろした。

まず、祠内に逃げ込んだ。

そして、祠の窓から旅館側の様子を伺ったが、ここで絶望的な気分となった。

旅館の一面のガラス戸には内側から鍵が掛かっている。深夜まで待ってガラス戸を割って進入しても、あの女刑事がいるのかも全く分からない。リスクだけが大きい行為のように思えた。

ここはとりあえず自室に戻って考えようと思った時に、考えられないことが起こった。

ガラス戸が開き、あの片桐という女刑事が庭に出てきたのだ。

俺は心臓が飛び出そうになった。

庭の各箇所を丹念に調べだした。

特にあの穴を偽装した辺りではしゃがみこんで考えていた。

完全にトリックは見抜かれていると感じた。

とりあえずは祠の方には来ないでくれ!と祈った。

女刑事は自分なりの捜査が終わったのか、池の横、ちょうど絶景館の中央で、建物に正対して、また何事か考え出した。

一見無防備に見えた。

今しかない、この祠は斜め後ろになる。

考えるより足が先に動いた。

女刑事に気づかれないように、足音を殺し、後ろポケットからナイフを取り出し、両手で腰の辺りでナイフを構え、走った。そして、背中から

 

どすっ!

女刑事は、一瞬、後ろではなく、左前に半歩踏み出し、「ニシ・・・(聞き取れず)」と言った。

女の血が背中脇腹から、どくどくあふれ出した。

死んでいるのかっ!

めった刺しに!いや、とどめを刺すより、早く逃げないと、この場面を目撃されたら終わりだという意識が先に立った。

今思うと、あの男を殺った時は、俺のしたこと、いや人生までも完全否定され、殺されて当然と思いながらシャベルを何回も打ち下ろしたが、この女の場合は、俺が後ろから不意打ちを食らわした形だった。あんまり残酷なことはやめておこうと言う心理が働いたのかもしれない。

そう俺は殺人鬼じゃない・・・

話を戻そう、この場を逃げるのだ、外へではない、穴へ潜って自室に戻るのだ。

理由は前回と同じ。俺が失踪してしまえば自動的に犯人と自白したようなものだ。

急げ、急げ!

まだ、館内の人は動いている時間帯だ。

誰かが庭に出てくるかもしれない。

そして、この自体が発覚後、俺の部屋に警察が来たとき俺が部屋にいないと怪しまれる。

ナイフをポケットにしまい、穴を偽装していた板を両手で持ち上げる。そして、頭で、持ち上げた板を支え板の下で寝かせておいたジャッキを縁に立てて、体を穴に入れられるだけの空間を空ける。

足から身を何とかトンネルの穴に忍び込ませた。

逆匍匐前進で斜め下にずり下がっていく。

血のついたジャンパー脱ぎ捨ててナイフとともにトンネルの途中で穴を掘って埋める。

そして、穴の入り口に戻り、鳥小屋の床を元に戻し、なんとか部屋に辿りついた。

大急ぎで、シャワーを浴びた。

どこに女の返り血がついているかもしれない。

その日は9時過ぎに例の女刑事の上司に当たる刑事?が来たが、2、3簡単な質問をしただけだった。

やはりあの女刑事以外は問題外だ。

フジタマとか言うふざけた名前の男が帰った後、ネットでニュースを調べた。

舞鶴で殺人事件があったなどいうニュースは流れていなかった。

殺し損ねたか?いや、そんなに早くニュースには乗らないのだろう。

そうだ、数時間前のことだ。

振り向く前に刺して前に倒したので、顔は絶対見られていない。

翌日もニュースを気にしたが、俺の第2の犯行は載らなかった。

大丈夫だと言い聞かせた。

致命傷は与えられなかったのかもしれない、しかし、起きることも、何か指示を与えることは出来ないだろう?
殺せていないなら、それはそれで良かった。

無為に殺人を重ねることもない。

俺は、3日目にして早くも次の行動に出た。

それは、今回の究極の目標である逃亡だった・・・

 

CUT5 絶景館逃亡 へ

 

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