片桐シリーズⅣ さらば片桐佐里
S―1 発端 2013.7.13
CUT1 遊覧船2
沢村は続けた。
「我々の行動目的はテロ・暴力行為を未然に防ぐことです。
今我々の公安の間で最も恐れている技術が、何か分かりますか?片桐さん」
「プラスチック爆弾と言われる小型爆弾ですか?それとも命を捨てる狂信的な勢力ですか?」
「両方とも違います。前者は今や理科系の大学生でもちょっとした知識で作れるので止めようがありません。後者は情報戦で何とか網にかけられます。人というのは必ず情報と言う痕跡を残します。今、好感言われているより日本の情報収集技術は進んでいます。妙な話ですが、この例のほうが分かりやすいので、暴力団の例を挙げますと、時々、超大物がヒットマンに殺られるでしょう?そして、地下に潜ってしまったヒットマンもいずれ探り出されます。情報の網をかぶせることによりこれが可能となるのです。すいません、本題に戻します。お二人とも北シンギ共和国がミサイルの打ち上げに成功したと言うことをご存知だろうと思います。選択と集中という言葉があります。
この10年間、正に北シンギ共和国はこれを行いました。何に集中したかって?それは、発射したものを誘導するランチャー技術です、他国の技術者をヘッドハンテイングあるいは拉致誘拐してまでもです。
世界各国は今これを一番恐れています。
小型のランチャー機を国内に持ち込まれることを大変恐れています。
だから昨年、北シンギ共和国はお祭り騒ぎとなったのです。大型兵器が国を超えるときは、情報の網にかかります。しかし、小型の爆弾ならば、現地調達が可能です。爆破力はそんなに大きくなくていいんです。
相手国が、最も大切にしている、いや、最も触れられたくないポイントを爆破出来れば、心理的にプレッシャーを与えることが出来ます。そして、我々は数ヶ月前に小型ランチャー機が、北シンギから舞鶴に密航船で持ち込まれたとの情報を得た。先ほどプラスチック製爆弾は現地調達出来ると言いましたが、それもセットで持ち込まれていると思っておいた方がよい。これが島国の弱さです。全ての海岸まではガードできない。そして、国民はこの島国である状況を強みだと思ってます。実はそれは逆です。防衛にとって一番の弱みは国民の安心感です。その分脇が甘くなり、何か起こった時のパニック度も強くなる」
「沢村さん」と片桐は防衛論まで話し出した沢村の言葉を切り、
「それを東京周辺に運ぶのを阻止する!」
「残念ながら違います。それはさっき言った情報の網にかけられます」
「しかし・・・この舞鶴にはそれほど重要な施設がないがなあ~」と藤玉警部
「ランチャー機は100マイルほど誘導できると言われています」
「100マイルと言えば、1マイル≒1.6kmの100倍、は!まさか!O原発!」
と片桐佐里が言った。
CAST さらば片桐佐里 登場人物
沢村 公安の諜報員
水島千鶴 公安の諜報員
藩損義 北シンギ共和国工作員
龍元日(中路道夫) 北シンギ共和国工作員
李静蕾(日向時子) 北シンギ共和国工作員
甲羅久美 ラーメン屋「大極殿」店員
水森 礼子 公安の諜報員
香川県企業家同友会
林会長
西村国際部長
小松島青年団
村瀬浩二 牧畜と牛乳業経営
村瀬久美子 浩二の妹
K大ミステリー研究会
有野辺会長
御蔵君
佐々木さん
花澤 葉子 大山崎町の新米行政書士
藤玉 事男 舞鶴署 警部
水谷 蘭 舞鶴署 刑事
小岬 玲花 舞鶴署 交通課
片桐 佐里 舞鶴署 刑事
ケンブリッジ・セトム パトリック・コーズウエル女史の秘書
西河 豊 経営コンサルタント兼作家