果樹を栽培する際に気にする事の1つに1本で果実がなるのか?ならないのか?という事があります。


カタログなどには、1本で実らない場合にはこのような記載があります。

全ての果樹が1本で実らないわけではありません。


1本で実るグループには、ハイブッシュ系ブルーベリー、イチジク、ラズベリー、ブドウ、柑橘類、一部を除く柿、ナツメ、ビワ、アンズなどがあります。


一方、1本で果実がならないグループにはいくつかのパターンがあります。

異品種が必要なグループ、ラビットアイ系ブルーベリー、桃、リンゴ、梨、栗、スモモ、ポポー、アーモンド、ヘーゼルナッツ、アケビ、フェイジョア、ハスカップなどです。


オスとメスが必要なグループはキウイ、ヤマモモ、シーベリー、銀杏、イチジク(種子が必要な場合)などがあります。

銀杏やヤマモモは果実が着かないオス木が街路樹によく使われています。


その他、アボカドなど少し複雑な受粉をする物もありますが説明すると長くなりますので、今日は書きません。


このような同じ品種同士では受粉が上手く行かず、果実を着けない性質(自家不和合性)を持っている理由ですが、植物の生存戦略に関係があります。

植物が果実を着けるのは、種子を作り、子孫を繁栄させるためです。


また、子孫を残せたとしても、近い将来絶滅してしまっては意味がないので、多種多様な子孫を残したいのです。

例えば、寒さに強い、悪天候が続いても丈夫、◯◯病に強い、味が良いなどです。全てを兼ね備えた子はなかなかできないですが、別々の子がそれぞれ違う強みを持っていれば、環境が変わったり、病気が蔓延したりしても、絶滅を防ぐ事ができます。

味が良いは生存戦略には一見関係無さそうですが、鳥や動物に食べてもらい、種子を運んでもらうため、遠く離れた場所に子孫を残すためには味や香りの良さも重要なポイントになります。


このように多様な子孫を残すために、果樹に限らず植物は自分の花粉や遺伝子的に近い花粉は受け付けません。という仕組みを持っている物が多いです。


オスとメスが必要なパターンでは、確実に別の遺伝子を持つ個体と交配する事ができるので、更に多様な子孫を残す事ができます。

植物は通常、1個体で花粉を出して、果実も着けるとオスメス両方の役割を果たす事ができますが、雌雄異株と言われるこのグループは物理的に、オスの個体とメスの個体に分かれています。


キウイのオスの木に着く花です。

雄蕊ばかりで、雌蕊がありません。

オスは花粉を出す事に特化していて、果実を着けて種を育てる事はできません。


一方、メスの木に着く花です。

一見、雄蕊もあり花粉が出せそうな見た目をしていますが、その機能は完全に退化しているようです。

オスの木の花粉が雌蕊に付く事で、果実が肥大し、種子ができます。


イチジクも雌雄異株なのですが、これはまた変わった方法で果実が熟しています。

(果実が熟すだけで、種子は発芽しません。発芽する種子を作る時にはオス、メス両方が必要になります)

イチジクの事は過去に記事にしているので、興味のある方は読んでみてください。

長々と書きましたが、1本で実らないのは栽培する側からしたら良い要素ではありません。

しかし、その特性があるからこそ、現代まで絶滅せずに子孫を繋いで、口にする事ができている果実もあるのかも知れません。

それを考えると、1本で実らない事は案外悪い事ではないのかも知れません。