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ら、
「用事を思い出しました。わらわはこれにて失礼させてもらいます」
 と、鼻先を突き上げながら退出していった。
 牛太郎はまるで上総介に叱られたあとのような恐怖感で、どうしよう、と、ただただ畳の目を凝視していた。遠慮なくぴしゃりと叩きつけてくるようなところが上総介と似ている。あと、この置き捨てられた感じも。
「わ、わたくしは愉快でしたわ、左衛門尉様」
 犬のそれはどう見ても苦笑で、精一杯の笑みだった。
「いや、いいんスよ……。あっしは所詮下品な男なんで……。友達もサルとかゴリラだし……」
「そんなことありませんっ。左衛門尉様が勇ましくて心優しい御仁であることは、姉様もわたくしも存じていることです」
 必死にかばってくれる犬に、牛太郎はぽかんと顔を上げた。
「あっしが、勇ましい、ですと?」
 すると、犬はぽっと咲いたような微笑で頬を緩めた。
「はい。特に摂津池田で黒連雀と共に一騎掛けを果たしながら、池田勢に所領安堵と引き換えに降伏を申し渡したという話は胸躍りました」
 牛太郎を眺めてくる犬のつぶらな瞳は明るい風を望むような眼差しの光りでいて、その熱っぽい視線を長く澄んだ自らの睫毛でゆるりと包み込んでいる。
「亡き夫、八郎信方様が男児のように話してくださいました」
 犬の話によると、佐治八郎は五年前の池田城攻めの折、織田本隊と共に従軍しており、そのとき、疾風怒濤のごとく敵味方構わずに兵卒を薙ぎ倒していき、城郭を駆け登っていった黒い怪物と牛太郎を目にしていた。
「あのような名馬は古今東西いない。そして、あれを乗りこなしていた簗田殿は愚将どころではない勇将だとおっしゃっていました」
「ははあ」
 と、にやけた。すぐに調子に乗る。
「佐治八郎殿は見る目のある御方だったんスね。一度もお会いできなかったのが残念です。きっと、仲良くなれたはずなのに」
「いえ、八郎信方様は清州でも岐阜でも京でも左衛門尉様をお見受けしたそうですよ」
「あ、そ、そうなんスか」
「ただ、いつもせわしくされていたので、お声をかけられなかったみたいで」
 犬は亡き夫を思い出したのか、表情を陰らせながらうつむいてしまう。牛太郎は声を張り上げた。
「ま、まあ、そうですねっ。いつもせわしくしていたっていうか、させられていたっていうか。いつも、あっしの周りには藤吉郎殿とか息子の太郎とかマタザとかウザノスケ、あ、いや、佐々内蔵助殿とかがやんややんや騒いでいたんで、あいつらさえいなければあっしも気の合う御方と仲良くしたっていうのに」
 すると、牛太郎が織田の名将猛将たちをぞんざいに扱ったのがおかしかったらしく、犬は袖を上げてくすくすと笑った。
「左衛門尉様は左少将様や又左衛門様とお仲がよろしいと聞いております」
 牛太郎は首を傾げる。
「マタザ殿はそうかもしんないですけど、左少将様って誰スか」
 犬はきょとんとしている。
「羽柴様ではないのですか? 金ヶ崎の退き口のあと、羽柴様は左衛門尉様と共に左近衛少将の官位を拝領されたはずでは」
「あ、ああ。確か、多分、そんなことも。あっしってあんまり知らないんですよ、そういうこと」
 牛太郎が無知を隠すように苦笑していると、犬は目を大きく丸めたあとに、また、くすくすと笑った。
「左衛門尉様って、まるで、少年のようです」
「あ、いや……」
 戸惑っていると、犬はきらきらと弾ける瞳で牛太郎をしばらく見つめ、また、袖で唇を隠した。
 胸の奥に染み渡っていくようなどこか淡い気配に、牛太郎は頭を掻きながら少しだけ笑った。
次なる戦いへ

 伊勢長島で織田軍は大敗した。
 帰国してきた太郎の兜ははいだてが折れており、甲冑のところどころには矢傷 相关的主题文章: