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 玄番允が、隊列を組んでそのときを待つ兵卒たちに声を張り上げた。
「日の本中を騒がせる決死のこのいくさにて、天は我らに味方したぞ! 名高い武田騎馬とて、八幡大菩薩のご加護を得た我らに敵はない! 思う存分、槍を振るえ!」
 うおっ、と、鬨の声が上がった。
「殿」
 利兵衛が、武者震いなのか、ただの臆病風なのか、槍を手にする腕を震わせながら、牛太郎を見上げてくる。
「ついに。ついに」
 どうやら感激しているらしい。牛太郎は思わず頬を緩めた。対武田作戦を任じられてから今まで、利兵衛は牛太郎の道程のほとんどに付き添ってきた。一人の女中をめぐった醜い因縁も、この瞬間だけは夜明けの風がさらっていった。
「そうだな。ついに来たな。でも、まあ、あわてるな。おれらが相手にするのは武田本隊だ」
 出来れば、山県を迎え撃ちたかったが。勝敗を付けたかったが。
 流れる雲が、地平線の向こうの朝日を受けて、袖裾を紫色に溶かしている。深い青に突き抜けた東の空が朱色に燃え立つ。黒緑のうちに息をひそめている設楽ヶ原が、ほのかに明るんでいく様子を眺めながら、牛太郎は宿敵を思った。
 甲府志摩の湯で、素っ裸のままに罵り合ったころから、何年を経たであろうか。面を合わせたときから常に敵同士であったが、あのとき、こうして、向かい合うとはお互いに想像にしなかったであろう。http://www.watchsroast.com
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 武田、織田、互いの野望をそれぞれ背負って、雌雄を決するとは。
 牛太郎は牛太郎のやり方ですべてを揃え、この決戦を迎えた。あとは、山県。倒せるものなら倒してみろ。赤備えの強さ、見せてみろ。次はお前が、甲州武者の意地を見せる番だ。

 開戦のときを知らせるかのように、金色の朝日が姿を現した。

 静寂を打ち破ったのは、伊那街道に陣取る大久保新十郎隊の銃声であった。典型的な三河武者の新十郎及び治右衛門の兄弟は、この東三河の地で行われる決戦を徳川三河勢の戦いと位置づけており、防衛に徹するとはいえ仮に織田勢に先陣を許してしまったら、織田の飼い犬として、後々までの笑われ者になるであろうとし、三河武者の誇りがそれを許さなかった。
 ゆえに、柵の中で堅守に徹するという作戦を無視し、大久保勢は柵の前に足軽及び銃兵を張り出させ、連吾川の向こうで頃合いを見計らっていた武田軍に挑発の銃弾を撃ちかけた。
 武田軍は受けて立った。押し太鼓が打ち鳴らされ、猛然と駆け出した。
 戦端を切り開いたのは、武田軍の左翼、山県三郎兵衛赤備えである。
その生涯に光を放て(1)

 幾筋もの暁光を受けて、朱の鎧兜は噴き上がった血潮のように連動を始め、設楽ヶ原の青い風を駆け抜けた。跳ね上がる泥と鳴らされる太鼓の音が馬蹄の響きに入り混じり、兵卒たちの咆哮が空気を震わせる。
 山県赤備え、三千。
 迎え撃つ大久保勢。新十郎の激により、柵の格子に銃口を並べ立て、鉄砲隊三百が一斉に銃身に頬をにじり寄せた。
 しかし、真一文字に押し寄せてくると見えた赤備えは、連吾川を越えてこず、唐突に斜に馬首を向けた。
 赤備えは川の下流をひた走り、馬防柵の迂回を狙ったのだった。
 新十郎は一瞬にしてこれを悟ったが、すでに銃口は火を噴いた。間断なく轟いた三百発の銃声は、進路を交わした赤備えのほとんどを仕留められず、硝煙だけをたなびかせる。
「治右衛門っ!」
 新十郎は太い眉を突き上げ、目玉をむき出しながら大喝した。と、同時に柵の外に張り出していた治右衛門が、槍先を前方へ振り倒した。
「者ども、行けえっ! 赤備えの突破を許すなあっ!」
 治右衛門の大音とともに押し太鼓が鳴らされ、ヒグマのような雄叫びを揃え上げた三河勢