ngfsvsのブログ -10ページ目

ngfsvsのブログ

ブログの説明を入力します。

牛太郎は呆れた。昔の乱暴な又左衛門は嫌いだったが、今の親馬鹿な又左衛門はかぶいていたころのほうがましだったのではないかと思えるほど、武者ぶりが削げ落ちてしまっている。
「そんなことよりも又左さん。今年はいよいよ武田との戦いですよ」
 心配になって、少々たしなめる具合で言ってみたら、うんうん唸っていただけの又左衛門は突如として眼光を鋭くさせて、牛太郎に持ち上げてきた。
「わかっておるわ。お前こそ首尾よく整えられるんだろうな」
 ははあ、と、思わず唸りそうになった。どうやら、槍の又左は、親馬鹿の又左衛門を隠れ蓑にして、刃を研いでいるらしい。
 牛太郎は笑う。
「当然ですよ」
 フン、と、又左衛門は鼻で笑いながら、湯呑みを手にする。
「お前、清洲のころから比べれば、ずいぶんと逞しくなったな」
「出羽守ですから」
「ほざきやがって。今にお前を出し抜いてやるわ」
 又左衛門はもう一度鼻で笑うと、目尻に皺を寄せたまま煎茶をすすった。
傀儡師
http://www.2509g5.com
バッグ メンズ
革 バッグ


「お主は牛太郎などというふざけた面を被った傀儡師じゃ」
 佐久間右衛門尉はそう言いながら、平伏する牛太郎の前に書状を放り投げてきた。
「己の立身出世のためだけに、玄蕃允や勝蔵のみならず、わしや権六までをも人形のように扱って、さも可笑しげにおやかた様に披露する長良川の河原乞食よ」
 佐久間は手にしていた扇子を、苛立たしげにぱちつかせながら、無言で頭を下げているだけの牛太郎に嫌気のさした眼差しを据える。
「孫娘に逝かれてしまったのも、お主の日頃の行いからではないのかあ?」
 悪口をついて、ちょっと気が紛れたらしい。佐久間は扇を広げ、垂れ下がるあごひげを風に揺らした。
「右近大夫も不憫なものじゃ。奴のような若武者はそうはおらんというのに、父がお主ではな」
「お言葉、しかと胸にとどめておきます」
 書状を懐におさめた牛太郎は、佐久間の前からさっさと退席した。
 武田に内通者に見立てられている現状が我慢ならないと佐久間は言っているが、実際のところは、ただ単に牛太郎に持ち駒として扱われていることが気に食わないだけなのだろう。
 器の小さい男だ。そのくせ、先日の拝官褒賞の折りには、叙任した家臣団の中でももっとも位の高い官位が与えられるという話だったのに、それを蹴った。というのも、上総介が、家臣団より低い「従六位上総介」にも関わらず、上総介の呼称が気に入っているからという理由で官位を上げず、佐久間と柴田権六郎の二人も、上総介の奇天烈になぞらって、叙官を辞退したのであった。
 あぐらを組んでいるだけの田舎武者野郎が言いたいこと言いやがって。牛太郎が鼻息を荒くしながら門をくぐり出ようとすると、
「旦那様」
 と、於松がいつのまにか背後にいた。於松は監視のために佐久間屋敷に奉公させており、それも上総介の了承を得てのことだった。不気味な老人に居着かれているのも、佐久間にしては憤慨やるせないのだろう。
 傀儡師と牛太郎を揶揄したくなるのも、もっともなことではある。出自も謎で、珍奇衆という得体不明な役職で上総介に取り入り、今では家中の人々を操ってやりたい放題。見ようによっては、簗田出羽守は君側の奸臣である。
 とはいえ、
「ここに来たときは、いっつもおもしろくなさそうに帰っていきますねえ」
 と、於松が顔色を指摘したように、牛太郎には織田家を掌握する気などさらさらない。
 牛太郎は佐久間の悪口に気分が悪くなりすぎて、見慣れた於松の醜い面も鬱陶しく、奥歯を軋ませながら