Life in the Lone Star State -78ページ目

シンジケートローン契約 (Vol.13)

第13回は強制期限前弁済事由について各項目ごとに概要を見ていきます。

1.  Revolving Clean Down

これはRevolving Credit Facility型のシンジケートローンで規定されるタイプの強制期限前弁済事由です。具体的には、1年の借入可能期間があるとした場合に、特定の1ヶ月程度の期間は借入残高をゼロにしなければならないというものです。通常は、1年間の借入可能期間がある場合に3ヶ月の期間で融資を受けたとすると、3ヶ月おきに借換え(roll over)をすることで、実質的には融資を受けた1年後に資金を返済すればよいわけですが、このClean Downの規定が入っている場合には、1年の特定の期日にいったん全額返済して残高をゼロにしなければなりません。つまりその時期に返済できるだけの現預金があることを貸付人が確認するためにこのような規定を置いているわけです。通常は、その期日というのは、例えばクリスマスシーズン直後など、その借入人のもとに最も現預金が貯まっている時期にすることが多いようで、仮にその時期に貸付債務を返済できないようならば、財務状態が危ういのではないかという推定が働くわけです。つまり、こういったモニタリング目的での強制期限前弁済事由ということになります。

ただし、これは契約締結段階で返済時期が決まっている話ですので、厳密には強制期限前弁済というよりは約定弁済に近いと言えるかもしれません。


2.  Borrowing Base

Borrowing Baseというのは、借入人が担保を提供している場合に使われる強制期限前弁済事由の一つです。それとは別に提供している担保物の価値が契約締結後に下落した場合に備えて、ある一定の時点において、担保物の価額に一定の係数を乗じた金額を越えて借入がなされている場合には、仮に貸付極度額の範囲内だとしても、その超過金額について強制的に弁済を求めるというものです。

ここで問題になるのは担保物の評価の方法です。例えば担保物が上場株式のようにマーケットでの価格が客観的に決まるものはそれに従うことで問題ないですが、未上場株式や、売掛債権、商品在庫など担保物のほとんどは客観的な市場価値があるわけではありません。そこで、担保物の時価については、GAAP(Generally Accepted Accounting Principals)に基づくことにして、それにどの程度の係数を掛けるかで実質的な担保価値を評価しているようです。例えば同じ在庫であっても、素材や原料のようなものであれば、転用・転売が比較的容易であることから高く評価されますが、逆に完成品については転用・転売が難しいことから幾ら時価が高いとしても評価は低くなります。ただ、著作権や特許など知的財産権を担保に取っている場合には、これを金銭的に評価するというのは実務的には困難だと思います。

なお、担保提供がなされている場合以外でも、例えば、借入人がファンドに対してキャピタルコール(借入人が要求した場合には、ファンドが借入人に対して追加出資する義務を負うことをいいます。)の権利を有している場合には、その金額の一定割合をBorrowing Baseとして定めるというやり方もあるようです。


3.  Assets Sales

借入人が有する重要な資産を売却した場合に、売却価額の全額(又は一定の割合)相当額の貸付債務を期限前に強制的に弁済させるという規定です。

資産売却の禁止は通常借入人のnegative covenantとして規定されていますので、この規定がなかったとしても、貸付人は、借入人から資産売却の申し出を受けた際に売却代金相当額のの強制期限前弁済を行うことを条件に許可すればよいので、必ずしもこの規定が必要というわけではありませんが、実務上は両方規定されることが多いようです。

その理由は、資産売却禁止条項のwaiveの条件と強制期限前弁済条項のwaiveの条件が違うケースが多いというシンジケートローン契約特有の性質にあります。資産売却禁止条項については、通常多数貸付人(例えば貸付債権額ベースで2/3の貸付人)の合意があれば、waiveできる(資産売却が許容される)という規定になっていることが多いのに対して、強制期限前弁済規定については、通常、全貸付人の同意がなければ、waiveは認められていません。そうすると、仮に資産売却禁止条項だけしか規定していない場合、3分の2の貸付人が資産売却を無条件に許可した場合、残りの3分の1の貸付人は、意に反して借入人の重要な資産が売却された上に期限前弁済も受けられないという状況になってしまうわけです。そのリスクを避けるために、通常両方の規定が設けられているということです。

したがって、資産売却禁止条項のwaiveにも全貸付人の同意が必要という規定になっているのであれば、別途強制期限前弁済規定は必ずしも必要ないということにはなりますが、ただ、その都度合意形成するのも大変なので、契約締結時点でその旨合意しておくほうがやはり望ましいように思います。

なお、ある資産を売却して得た収入を別の資産に投資することを認める場合には、一定の期間を設定して、その期間内に新たな投資がなされなかった場合にはやはり強制期限前弁済を求めるという規定にすることが多いようです。


4. Casualty Events

Casualty Eventsとは、LSTAでは以下のように定義されています。

“Casualty Events” means, with respect to any property of any Person, any loss of or damage to or any condemnation or other taking of, such property for which such Person or any of its subsidiaries receives insurance proceeds, or proceeds of a condemnation award or other compensation.

あるAssetが天災や収用等によって借入人がそのAssetを失い、その代わりに例えば保険金や補償金が得られた場合に、その金員をもって強制的に貸付債権の弁済にあてる事を要求するものです。3.の資産売却がvoluntaryなものであるのに対して、involuntaryな資産の売却といったところでしょうか。

この条項を規定する場合、貸付人は借入人に対して、重要な資産については損害保険(casualty insurance) に加入することを義務付けておく必要があります。

残りは次回に。