Life in the Lone Star State -143ページ目

法律事務所の支店

昨日に続いて日米のローファームの比較をしてみたいと思います。

日米のローファームの形態の大きな違いとしては、支店の有無が挙げられます。アメリカの大手のローファームは全米各地に加えて世界の主要都市に支店を有しています。そうすることで、州内の取引だけでなく、州や国をまたぐ案件についても依頼者にサービスを提供することが可能になり、それが事務所の規模の拡大につながっている一要因ということができると思います。

他方、日本では、弁護士法第20条第3項において、「弁護士は、いかなる名義をもつてしても、二箇以上の法律事務所を設けることができない。」と定められており、この規定を理由に法律事務所は支店を設けることはできません。(ただし、これは日本国内の話であり、北京など海外に支店を設けている事務所はあります。)その複数事務所の設置を認めない趣旨は、複数事務所を認めると非弁行為の温床となるからと言われています。すなわち、支店には実際には弁護士が常駐せず、弁護士資格を持たない人間が実質的な法律業務を行って報酬を得るということが起こりうるから許容できないということです。

仮に100人以上の弁護士を抱えている大手の法律事務所に支店の開設を許容したとしても、支店に弁護士を1人も配置しないという事態が起きることはあまり想定しがたく、したがってやや時代遅れの制度趣旨という気がしないでもありません。ただ、地方では未だに1人で法律事務所を経営している弁護士は多数おり、かかる現状に照らせばこの規定は引き続き必要な規定ということなのでしょう。

他方で、現在の弁護士法上は、事務所を法人化し、弁護士法人を設立することで複数の支店を置くことを可能にするという形でこの問題に解決する道を与えています。今までの法律事務所という形態は法人ではなく、いわば個人商店であり、複数の弁護士が共同で経営している場合でも、事務所自体は法人格を持たず、民法上の組合としての形態を取っていました。

弁護士法人化のメリット、デメリットについては多々あるかと思いますが、現状弁護士法人を設立している国内の法律事務所は、その大部分が一般民事系の事務所、特に債務整理・個人破産をメインに扱っている事務所ではないかと思います。このタイプの案件は実際に依頼者の住所地に事務所を置かないと適切かつ迅速な対応ができない性質が強いことから、この分野を扱う法律事務所の法人化が特に進んでいるのだと思われます。

他方で、大手の企業法務を中心に扱う事務所の場合、そのほとんどが東京に事務所を置いていますが、未だどの事務所も法人化し事務所を地方に開こうという動きを見せていません。法人化の手続き自体はそれほど大変ではないことを考えると、敢えてそのメリットを感じていないということだと思います。今の時代、企業法務の仕事であれば、東京にいても電話とメールで日常のアドバイス、書類のやりとりは済んでしまい、敢えて物理的に地方に支店を置かなくとも、仕事のスピードで劣ることはないし、置いたとしてもコストパフォーマンスの点からはペイしないと判断しているということでしょう。

アメリカの大手の事務所が各都市に支店を開いているのに対して、日本の大手の事務所が支店を置かない理由の1つには、アメリカの場合、連邦制を採用していることが考えられます。アメリカでは、各州で法律業務を行うためには、その州の弁護士資格を持つ弁護士がその州で法律事務所を開く必要があるためです。

仮にアメリカが日本と同じように、全州統一の弁護士資格だとしたら、これほどまでアメリカの各大手ローファームが各都市に支店を開くという事態も生じていなかったのではないかと想像します。

アメリカは連邦制という構造を取っており各州ごとに法律が異なるため、結果的に法律家の仕事を随分増やしていると思います。仮に全ての法律を全州共通にしたら、弁護士資格も1つでよいし、似て非なる法律を幾つもチェックしなくてよくなるし、弁護士の仕事は随分楽になると思うんですけどね。その代わり、弁護士の仕事はグンと減ることでしょうね。


では今日はこの辺で。