9月鑑賞映画まとめ | 三つ子の魂百まで…トラウマニア

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『海底47m』  【2017年/イギリス】

 

恋人にフラれた憂さ晴らしで、太鼓腹のサメちゃんがウヨウヨする巣窟に潜ろうなんて俺なら絶対しない!そんな神経図太い姉妹が竜宮城でひとときの幻想を体験する海洋パニックサスペンス!

見るからに一秒で木端微塵になりそうな年期の入った檻。ツアーガイドも本当に舌先三寸で、客を撒き餌に使う鬼畜メキシカン。サメの怖さより海底に置き去りにされる絶望的孤立感が観るものの精神をメリメリと蝕んでいく。

刻一刻と減り続ける酸素。錯乱し急浮上しようものなら潜水病で脳に気泡が入り死ぬ!しかも辺り一面まっ暗闇。"ゼロ・グラビティ"に似ていると言われているけど、肌に海水が触れて気圧に押し潰され、鮫やら何やら得体の知れない生物と鉢合わせする海の底は地獄そのもの!

急降下のおんぼろエレベーターに乗ったが最後。閉所恐怖症だと尚更パニックを起こす見ているだけで絶望のドン底へ突き落される全くひどい話。姉妹は大奮闘するんだけど、ウッカリな出血と水中銃の危なっかしさに極限状況における人間心理の脆さを見た…。

とりあえずシレッと船長やってるマシュー・モディーンをゴボウで頭100万回叩いて海に沈めてやりたいよ!酸素ボンベの回し飲みスリリングだったなあ~。火が怖いのかー。あの場面でビクッ!となってしまった(汗)サメだけに頼らず海の恐怖をまざまざと描き切った本作。非常に良くできてます。

【2017年9月2日(土)】
シネマート新宿で鑑賞____________________________________________

『サバイバル・オブ・ザ・デッド』

 【2009年/アメリカ】

 

ロメロ監督が描いてきたゾンビ映画の中で、歩く死体は例え身内であろうとも退治せよ。さもなくば生き残る道は残されていない派と、生ける屍とどうにか共存出来ないか?保守的に考える科学者の意見双方を孤島で生活する頑固爺さんの対立に委ねた善くも悪くも結局は人間自信が答えを見つけるまんまサバイバルな世界観。

今度のロメロは西部劇タッチだってよ!と公開前から話題になり、初日には熱狂的なファンがウエスタンルックで観に来ていたけど、なんとも言葉にならないホンワカしたゾンビ達に信者の多くがゾンビのようにトボトボ俯き加減で劇場を後にする姿が忘れられない思い出に…。

特にテンションの高いフェリーでの漫画ちっくなアクションが面白い!「知恵を付けてる!」などと驚いてる場合か!と突っ込みたくなるゾンビが運転する車。前進後進をものすごい早さでやってのける。乗馬をしたり、動物の肉を食べたり、外見は腐っているけどやってることは生者と同じ。スペックの高いゾンビを人間風味に調理して、奇しくもロメロの遺作となってしまった"サバイバル・オブ~"は案外奥の深いストーリーだったのかもしれない。

争いを止めない限り我々に勝ち目はない…なのに生前の記憶でチャカを向け合い、お互い命尽きるまで憎しみ合う…。やはりシニカルな笑いを忘れないジョージ・A・ロメロのゾンビ映画は一筋縄ではいかない魅力がある。

【2017年9月2日(土)】
新文芸坐『世界にゾンビをありがとう!追悼ジョージ・A・ロメロ 』オールナイト上映で鑑賞。


※初見は2010年6月12日、池袋シネマサンシャインで(公開初日)

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『バイオ・インフェルノ』【1985年/アメリカ】

 

農業革命を謳った遺伝子研究所で、ある細菌が漏れだす。研究員が次々と感染し、一旦は昏睡状態に陥るものの、ゾンビの如くむくりと起き上がり殺人衝動に駆られる様子は『処刑軍団ザップ』と『アウトブレイク』をミックスしたようなパンデミックホラーの隠れた名品。

意志が強い警備員ジョニー役のキャスリーン・クインランがとても逞しく、男性陣の演技を食ってしまうほどの魅力を放っている。元研究員でワクチンを開発したフェアチャイルド博士役には『グリーンマイル』の刑務官や『ミスト』で最後まで生き残るおじいさん役が馴染み深いジェフリー・デマンが髭面でワイルドなキャラを好演。瀕死の状態でジョニーを死守するシュミット博士には『ポリス・アカデミー』の意地悪なハリス教官が有名なG・W・ベイリー。『エイリアン』でパーカーを演じたヤフェット・コットーは少佐役で貫禄たっぷりに演じる。

狂っているのに言葉が明瞭で冷静な判断も出来る感染者というのも非常に斬新。感染者の判別法にブラックライトを当てて斑点が出ていないか確認するのもヴィジュアル映えする。あれやこれやバイオインフェルノが他作に影響を与えたアイデアは多いと思う。防護服が裂けるシーンなんてアウトブレイクが絶対参考にしているよね。

クレイグ・サファンが奏でる「ダーン!」と鳴るシンセ音も耳に残る。閉鎖された研究所内で暴れる感染者と、その家族が暴動を起こし中へ入り込もうとする内も外も脳天が沸騰した連中の空回り感がなんとも虚しく楽しい!

糊とかそう言った類の物は慎重に扱わないと大惨事になるよね。ヒューマンエラーこわいこわい…。

2017年9月4日(月)
<テレビ朝日系・シネマエクスプレス>
1998年4月15日(水)放送の録画ビデオで鑑賞。

●サム・ウォーターストン(キャル) 小川真司
●キャスリーン・クインラン(ジョニー) 

高島雅羅
●ジェフリー・デマン(フェアチャイルド) 阪脩

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『愛と栄光への日々』【1987年/アメリカ】

 

ジョーン・ジェットのスクリーンデビュー作で、マイケル・J・フォックスのウルフカットがめちゃくちゃカッコいい。姉弟で組んだバンド「バー・バスターズ」。マイケルは工場で働きながらプロを目指してバンド活動を続けてるんだけど、我が道を行く頑固な姉と衝突が絶えず、寂しい思いをさせまいと甥っ子ベンジーを優しく励ます弟役に心打たれます。

勿論、ジョーン・ジェットがハスキーヴォイスで歌う本作のために書き下ろされた3曲、"Light of day"、"This means war"、"It's All Coming Down Tonight"は出色の出来栄え。売れないバンドマンが食いっぱぐれてダラダラ過ごす様子とか、子供をダシに万引きしたり夢を追い続けるのはいいけど現実はそう甘くない。

青春時代じゃなきゃ無茶ぶり出来ない煮えたぎる熱い思いだけじゃなく、家族の絆をメインにストーリーが展開していくのは他の音楽系ムービーと一線を画す。若者の心の葛藤を描かせたら右に出る者はない「タクシードライバー」のポール・シュレーダー監督の洞察力が深みを与えるヒューマンドラマに仕上がっています。

父親役に「エクソシスト」のカラス神父ことジェイソン・ミラーや、「遊星からの物体X」でウインドウズを演じたトーマス・G・ウェイツがジョーにゆすりをかける嫌味ったらしい工場の同僚役で出ていたり、確認出来なかったけどマイケル・ルーカーの駆け出し時代出演作でもあるらしい。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でマイケル・J・フォックスは地声に自信がないから"ジョニー・B・グッド"を口パクにしてもらったけれど、甥っ子と一緒に「TVを付けて最初に聞いた言葉で歌を作ろう」と即興で演奏する"You Got No Place to Go"はマイケル本人が熱唱している貴重なシーン。病魔に侵された母が娘を受け入れ、また娘も母を受け入れるシーンが泣けます。グレる人にはそれ相応の理由がある。ある程度の年齢になったら憎しみを開放させる柔軟性を身に付けなくては一生後悔する事になる。音楽を通して栄光を勝ち取り自由へ羽ばたくバー・バスターズに幸多かれ!

2017年9月5日(火)
午後のロードショー〈1997年6月24日(火)放送〉の録画ビデオで鑑賞。(吹替)
※初見は1991年3月にレンタルビデオで。

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『新 感染/ファイナル・エクスプレス』

 【2016年/韓国】

 【ネタバレしています!未見の方は鑑賞後にお読みください!!】


ダッシュ系ゾンビの頂点に君臨するスピードの限界に挑戦した血と涙のパンデミック・アクション大作!韓国が誇る超特急KTX。その特急列車内にゾンビが大発生し、ルームランナーの如く獲物を求め、我先にと暴走するのだから移動手段である公共交通機関の概念と言うものがまるで崩壊してしまっているのが素晴らしい!

個性豊かな乗客が魅せるドラマチックパート。子役の名演、走馬灯のように幸せな思い出を思い起こす優しさ溢れるコン・ユ演じる父親の表情。地獄絵図の中にナチュラルな感動を流れゆく車窓のように映し出すなんて、もうこれを泣かずにどうしろと言うのでしょう(涙)

マ・ドンソク魅惑の極太腕がゾンビを吹き飛ばす列車内プロレス!「俺が作った」この台詞の破壊力よ!!飛び道具が一切出てこないのに知恵と力業で危機回避する韓国人のチームワーク。マックス・ブルックス原作の"ワールドウォーZ"に描かれたサヴァイヴ法を参考にしながら独自の解釈を盛り込んでホラーとパニックを融合させた近年希に見る大傑作でした。

『新幹線大爆破』からの影響が多々見受けられるのも嬉しかったです。例えば、運転席に乗り込む構図が同じだったり、列車番号が101号(新幹線は109号)。チョナン駅通過で車掌に詰め寄るくだりも名古屋通過と酷似しているし、ゾンビを閉じ込めている車両を切り離し、先頭車に待避できないか?というアイデアも"新幹線大爆破"と同じだった。

視覚に頼って行動するゾンビの目を欺くため、濡らした新聞紙を窓ガラスにペタペタ貼り付けたのには脱帽!消火器使ったのにも脱帽!身の回りの物をフル活用する人海戦術には参りました!!『アイアムアヒーロー』のゾンビに似ているのは少なからず影響を受けているんですかね?浮き出る血管、白濁した瞳、完全体になる直前、人間らしさを取り戻す所とか上手く活かしてました。ウネウネした独特の動作はタールマン、貞子に感化されたものか?(笑)

己が助かるためには手段を選ばないエゴイズム剥き出しになるバス会社のオッサン。その卑怯な男にさえ最期のひとときに情を与えるなんてどこまでドラマチックな演出なのか…。地味顔だが果敢に職務を全うする勇気ある運転士も素晴らしかった!電車からディーゼル機関車へ乗り替えたのも、もし電力供給がストップした際の繋ぎとして綿密に練られた脚本だと思います。火だるまの機関車、操車場での大攻防戦。傾く車両の窓ガラスがミシミシと音を立ててゾンビが降ってくる絶妙なサジ加減によるスリル。密室劇なのにもっさり感を出していない走る棺桶。

流石にテーマがテーマなので鉄道会社も全面協力はしなかったようだけど、それを感じさせないリアルさが本作最大の魅力と強みなのではないでしょうか。泣けるシーンは数あれど、足の不自由な姉を慕う妹の訳ありげなシークエンスに目頭が熱くなりました。とにかくエスカレーターに身を任せたら下に何が待ち受けているか分かったもんじゃない!抜き足差し足忍び足あるのみ!変な盾とバット必携ですね!自動扉の新幹線だったらみんな即死してるわ!

【2017年9月9日(土)】
ユナイテッドシネマ アクアシティお台場の国内初3面マルチプロジェクション式"ScreenX"で鑑賞。

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 『デモンズ2』

【1986年/イタリア】

 

TVでホラー映画を観ていると劇中で甦ったデモンズが視聴者宅へお邪魔する、自宅でキュービックショックが体験できる。ランベルト・バーヴァ監督がアイデアを振り絞って送り出した人気イタリアンゾンビの続編。

ブラウン管から異質なものが飛び出てくるのはトビー・フーパーの「ポルターガイスト」やテヴィッド・クローネンバーグの「ビデオドローム」を連想させるけど、二番煎じとはいえTVを媒介して死の連鎖反応が起こるというのは、あの貞子さんに多大なる影響を与えたのは間違いないだろう。視聴者、デモンズ双方の主観が交互に映し出されるのも臨場感があって非常に盛り上がります。オートロック式のハイテク高層マンション住人が閉じ込められ、次々とデモンズの毒牙にかかり感染するんだけど、噛まれても引っ掛かれても血液を浴びても、何もされてなくても?突然変身するもんだから油断も隙もあったもんじゃない

可愛らしいワンコの歯茎がニョッキリと伸びて歯茎にキラリと光る目が(笑)子供も容赦なくデモンズ化して、前作に登場したボスキャラ?アキロン大王が再び出てくるけど、十中八九グレムリンにインスパイアされたコワ可愛い井出達でなんか笑っちゃうんですよね。リアルさを追及するセルジオ・スティバレッティの特殊メイクがココでガクッ!とださくなっちゃう。小学時代のアーシア・アルジェントが天使のような可憐さで魅了してくれるし、バーヴァ監督が特別出演してるのも見逃せません。

ボディビルダーが地下駐車場で体を張ったアクションを披露する誰得なんだか分からない格闘シーン。車を暴走させデモンズを跳ね飛ばしまくるアグレッシヴなシークエンスを閉鎖された空間で惜しげもなく大胆に追ったのは素直に感動する。あのTV映画に出て来たデモンズとマンション管理人を演じたリノ・ソレムは一人二役。ギョロ目が特徴的な顔ですよね。アルジェント作品の常連、コラリーナ・カタルディ・タッソーニは第一犠牲者サリーを怪演。つーか生きてる時から何に腹を立てているのか全く理解不能なヒステリックさが既に死亡フラグ立ってますよね…。ザ・スミスの"PANIC"が流れたり、選曲もピカイチ!サイモン・ボズウェルのテーマ曲も耳に残る。

階段を駆け上がってきて吹き抜けから転落するくだりは、たぶん『REC』がパクってる。なんか色々とパクりパクられてる本作だけど、デモンズ・シリーズは数あれど本家はこの2作目で完結してるんですけど、聞こえてますか?(邦題付けた関係者さん!)

【2017年9月10日(日)】
木曜洋画劇場〈1989年4月27日〉放送の

録画VHSで鑑賞。※初見も同番組で。

●デビッド・エドウィン・ナイト(ジョージ):

井上和彦
●ナンシー・ブリッリ(ハンナ):高島雅羅