最初の出版は20年以上前ですが、最近新装版が出たということで読んでみました。
乃南さんの本は「いつか陽のあたる場所で」を読んで以来かなと思います。それ以前には女刑事が出てくるものなども読みました。心理描写がうまくて、素敵な女性主人公が出てくるという印象です。今回読んだ本もその印象は同じでした。
フリーカメラマンの葉子は40歳でバツイチ、ひとり暮らし。子どもはなく東京のマンションに暮らしている。兄の家族や不倫関係にある男性との関わりを中心に彼女の日々が描かれる。
1番印象に残ったのは、家を処分するため、両親が亡くなった後何年も訪れていなかった家を見に行く場面。思い出が蘇る場面。
私の実家も両親も健在ですが、夫の両親がもう20年近く前になくなり、実家を解体してしまったことがあったし、自分も故郷を離れて住んでいるので、そんなつもりはなかったにしろ、結果故郷を捨てて来てしまったなという思いがあって、少し感傷的になってしまいました。
先祖代々その土地を守り続けるという価値観を押し付けられるのも窮屈だし、人間が住む場所はもっと自由にというか、フレキシブルに考えた方がいいとも思っています。だからと言って親や故郷がどうでもいいわけではないし、その折り合いをどうつけるか、なのかなと思いました。
500ページ以上の長編ですが、文章なのか?内容なのか?あまり長さを感じさせない作品でした。
とても読みやすく、且つ読み応えもあります。