もうすっかり春ですが…。
自粛していた怪談シリーズ…。
冬の怪談最終話がまだ途中で、早く書いて欲しいというリクエストも
沢山あり、書くことにします。
この話は冬の怪談の最終話に持ってこようと思っていた話しで、私
自身もこの話には感慨深いところもあります。
春なのに冬の怪談…。
前回までのあらすじですが…。
友人の家に遊びに行くと、友人の母が変な宗教にハマっていて、そ
れが近所の女性に誘われて始めた宗教だったようです。
友人の父のうつ病、妹の非行、友人の喘息が治ったのは全て、その
宗教のおかげだと友人の母親は本気で言ってました。
その後、友人は母親にその宗教を本気で辞めさせたいと思い、色々
と相談を受けました。
「俺は呪いをかけられている気がする。」
と本気で悩んでいました。友人の体調はどんどん悪くなっていったの
です…。
私は友人Fに相談しました。Fはその友人に、
「自分の中でどこかその宗教を信じている部分があるはず。まずそれ
を何とかしろ。」
としきりに言ってました。
友人とFを引き合わせた日に、友人から電話をもらいました。
家を出て一人で住むと言ってました。
その後、連絡も無かったので、うまくやっているのだろうと思っていまし
たが、他の友人から話を聞くと、その友人は自宅で首を吊って自殺した
というのです。
私はその日途方に暮れたのを覚えています。
Fにも連絡しました。
そこで、
「そうだと思った…。あまり長くない気はしてた。」
そう言いました。そして、「その子の家に連れてってくれないかな。このま
まだと自殺者だらけになってしまうから…。」
そういうのです。
私はその友人の自宅に連絡し、線香をあげさせて欲しいと伝え、次の日
曜日に行く事にしました…。
ここからが、今回の話になります。
その日、私とFは午前中にFの最寄り駅で待ち合わせしました。
二人で昼飯を食いながら、自殺した友人の事に関して知っている事を全
てFに話したのです…。
「ふ~ん…。じゃあそのオカンはまだその宗教にハマって浅いんやな~。」
3年弱って期間が浅いのかどうかは私にはわかりませんが…。
「とりあえず3年程ではあるみたいやな…。」
「宗教ってな、だいたいみんな3年~5年でやめてしまうんよ。そうでなかっ
たら私財全部投げ出して、一生ズッポシって感じやな…。」
私はただただフンフンとうなずき聞いているだけでした。
飯を食って、その友人の家まで、約電車で一時間程でした。
駅を下りて、曖昧な記憶で友人の家まで歩きました。
お供えするプリンか何か買って行った気がします。
ようやく友人の家を見つけて、チャイムを鳴らしました。
以前とは感じの違う母親が出てきました。
「あー○○の友達の…。」
友人の母はゆっくりと頭を下げて挨拶をしてくれました。
誘われるがままに、家に入り、リビングの横にあった和室の仏壇の前に
通されました。
いつの写真かわかりませんが、私の知っている友人とは少し違った感じ
でした。
線香をあげて手を合わせていると、友人の母がリビングにお茶を準備し
てくれました。
私とFはリビングへ移動し、ソファに座りました。
そこで私は初めて気がつきました。
以前来た時に沢山あった、宗教的な装飾品がまったくないのです。
天井に貼ってあったモノも…。
「お母さん。あの宗教は辞めはったんですか…。」
私は友人の母に聞きました。
しばらく友人の母は答えませんでしたが、
「はい…。アレが原因で○○が死んだのなら…○○様もなにもないです
から…。」
友人が身を持って母親に変な宗教を辞めさせた事になる。
何のための宗教なのか…。本末転倒だ…。
「お母さん。お母さんには見えるんとちゃいますか…。○○君。」
突然Fはそう言いだしました。
友人の母の顔とFの顔を私は交互に見ました。
「え…。」
友人の母は少し慌てていました。
するとそこに友人の父が帰宅しました。
ホームセンターか何かに買いものに行っていたようで、リビングから見
える庭にレンガを大量に下ろしてました。
友人の母は、庭へ行き友人の父を呼んでいました。
すぐに友人の父もリビングへ来ました。
「ありがとう。来ていただいて…。」
その日何度この言葉を言われたかわからない程、友人の父にはそう
言われました。
友人の父は汗を拭きながら、冷たいお茶を飲んで、ゆっくりと話し出し
ました。
友人が自殺した日。
友人と父は一緒にゴルフの練習場に行ったそうです。
いつもならすぐに「帰ろう」と言い出す友人が、いつまでも父の隣のブ
ースで練習を辞めなかった。
帰りに近くの遅くまでやっているスーパーでビールを買って、家に帰り
風呂に入って、父親と一緒に遅くまでビールを飲んでいたと言ってまし
た。
母にもビールを勧めて、ワイワイ話をしながら飲んでいたと言います。
その日、宗教の話は一切せず…。
明け方、飲み過ぎたので喉が渇き、トイレに起きた父が友人を見つけ
たそうです。
まだ、そんなに時間が経っていなかったので、救急車を呼んだのです
が間に合わなかった…。
友人の父はそう話してくれました。
「遺書があったんですよ…。」
友人の父はテーブルの上に、友人の手書きの遺書の封筒を出しまし
た。
私もFもその封筒に手を触れることはありませんでした。
「中身は大体想像がつきます…。」
私は友人の父にそう言いました。
「話は聞いてもらってたんですね…。ありがとう…。」
そう言うと傍に座る母の肩を叩いて、
「こいつが変な宗教にハマってしまって…。それがどうも怪しい宗教で
してね…。私のうつ病や子どもの非行とか病気とか治ったって思って
しまって…。家族がバラバラだったんですよね…。」
友人の父はそう言うとタバコを吸ってました。
「○○はそれを悩んでました。」
私は友人の父にそう言いました。
友人の父は何度もうなずいてました。
「遺書にもそう書いてました。耐えきれなかったんでしょうね…。」
父の横で母は泣いてました。
「お父さんにも見えますか…。○○君は…。」
突然、Fがまたそう言いだしました。
「え…。」
友人の父も驚いたようにFの顔を見てました。
「わかるんですか…。それが…。」
友人の父は小さな声でFにそうたずねていました…。
「彼はまだここにいますね…。多分、これ以上この家から自殺者
を出さない様に見てるんだと思いますよ…。」
「いや…もう宗教はこりごりなんで…。」
友人の父はそう言って笑っていました。
Fは自分の話を始めました。
自分は宗教家ではない。ただ少し不思議な事が出来る…。
そんな話だったように思います…。
「少しだけお経をあげさせてもらっていいですか…。」
そう言うとバッグから自分の数珠を出して、仏壇の前に座りました。
友人の父と母も一緒に友人の後ろに座ってました。
私はその後ろに座りました。
20分くらいFはお経をあげていたのでしょうか…。
友人の父と母は不思議な光景に思えたかもしれません。当時の今
風の自分の息子と変わらない男が普段着のままお経をあげている
のです。しかも見事に…。
20分…もっとだったかもしれません。
お経が終わった時、友人の父と母は涙を流してしゃくりあげていまし
た。
「ありがとう…。ありがとう…。」
私とFに友人の両親は何度も言ってました。
リビングに戻り、二人の話を聞くと、二人の前に友人が立ち、
「悪いモノは全部俺が持って行くから…。みんなは俺の分までしっか
り生きて…。」
そう言ったそうです。
そして、
「実は○○が死んでから、何度もこの家の中で○○を見たんです。
ある時はそこに立っていて、ある時は寝てるベッドの横に、ある時は
ダイニングに座っていて…。」
友人の父は涙を拭きながらそう言ってました。
「私たちは○○に恨まれているんだろうと勝手に思っていました。近々
自分の息子を払ってもらうために神社の神主さんにお願いしに行こう
としてたんです…。」
私とFは黙って聞いてました。
「でも○○の気持ちがわかって良かったです…。」
そう言われて、感謝されて、私たちは帰りました。
それから1年程した時にFと一度線香をあげに行こうと言う事になりま
した。
確か夏でしたね…。暑い中、Fと二人で友人の家まで歩きました。
家に着くと庭にその頃流行していた、ウェルシュコーギーがいました。
友人の父と母が迎えてくれたのを覚えています。
家に入るとまったく宗教的なモノは消えて、その日初めて妹さんにも
会いました。
友人の家族3人。私とF。5人で食事をしました。
「もう宗教の誘いは無いですか…。」
Fが友人の母に聞きました。
「それが…。」
「それが、あの奥さんの家、火事で燃えてしまって…。どこかに引っ越
されたみたいで…。」
「その火事…。なんか関係あるんかな…。」
私は小声でFに聞きました。
「ないやろ…。」
Fも笑って言ってました…。
その後、その友人の父が働く会社が合併したか何かで関東に引っ越し
されてしまいました…。
今でもその友人の父から年賀状が毎年届いています。
長い話しでしたが、お付き合いありがとうございました。
次は春の怪談シリーズ。開始します。
TODAY'S BGM 「すずめ」 増田恵子