#032 秋の日の怪談 「秋の雨の中で…」 | 后前弐時のブランチ

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少し特異な体験を中心に書いています。
背中がゾクッとするのが苦手な方は片目で
読む様にして下さい(笑)

まだまだ暑いと感じる日はありますが、暑さ寒さも彼岸までといいますので


そろそろ過ごしやすくなるだろうと思います。


先日終了した「夏の怪談」ですが、いかがでしたか。



夏に怪談話をするって言うのは日本古来からの涼の取り方の工夫なんです


よね。暑い夏を乗り切るために、気の分野から涼を取るという方法を考え出し


た昔の人の知恵ですね。


だからよく怪談話は夏のモノと誤解されるんですが、霊に季節なんて本当は


関係なくて、春でも秋でも冬でも科学の力が届かないところではいつも、そん


な現象は起きてるんですよね…。



私は体験談を中心に書いてます。人から聞いた話も多々ありますが、そんな


話を書くには文才が無く、稲川淳二さんの様な恐怖感を伝える力がありませ


ん。



とりあえずは季節ごとに体験した話を書いてみようと思ってます。


え…来年の夏はどうするのかって。


来年の夏は来年の夏に考えましょう(笑)



さて、秋の日の怪談の1つ目はちょうど学際などをやっていた時期ですから、


今よりは少し涼しくなった頃の話です。




私はその日ある大学の学際へ行ってました。朝からある大学へ行き、食って


飲んで、コンサートやお笑いのステージを楽しんで、西の空が黄色く染まるま


で楽しみ、近くの駅の近くの居酒屋で友人たちと飲んで、少しほろ酔いで帰路


につきました。



居酒屋を出た時、雨が降り始めていて、電車の中で友人たちと学際が終わっ


た後の雨で良かったな~と話してました。



自宅の最寄りの駅から二つ手前の大きな駅まで自転車で来ていたので、その


駅である友人と二人で下りました。他の友人は逆方向だったり、もっと手前で下


りたり…。



一緒に下りた友人は原付で自宅まで帰るので、駅を出たところで別れました。


私は駐輪場へ行き、自転車を出していつものように走りだしました。



小雨が心地よかったのですが、買ったばかりの革のコートが濡れるのも嫌だっ


たので、何度も雨宿りをしながら帰りました。



普段通らない道を通り、雨宿りしやすい道に何となく入ってしまったのですが、


昼間たまに通る道なので、何も考えずに走りました。



メガネが水滴で見えなくなるほどの雨になってきたので、私はある家の軒下に


入り自転車を止めました。



そこにしゃがんでタバコに火を点けました。



その時です。



一人の女性がパジャマ姿で赤い傘をさして、私の方へ近づいてきます。


少し影のある女性のように見えました。


当時私は20歳くらい。少し大人に見えたので、30過ぎくらいだったのでしょうか。



その女性。良く見ると裸足…。傘をさしているにもかかわらず、髪は濡れてまし


た。


少し私は不思議なモノを見た気になりました。



その裸足の女性はヒタヒタと私の方へ歩いてきます。近づいてくると本当に表情


の無い顔です。


そして。



私の前で立ち止まりました。ゆっくりと私の方を見て、



「この家の人。」



と言いました。



「いや、雨宿りをさせてもらってます。」


私はそう言うとタバコを消しました。



「良かった。早く帰った方がいいよ。」


そう言うとまたその女性は歩き出しました。



妙に気味が悪い…。その女性の声…というより音に近い声だった気がします。


雨音の中聞き取りにくかったのですが、確かにその女性はそう言いました。



女性はまた歩き始めました。女性が来た方向は見通しが良いのですが、通り


過ぎた方向は柱の陰になり、見通しが悪いのです。



ふとその女性が通り過ぎた方向を見ると、その女性の姿はありませんでした。



不思議な感覚になりましたが、あまり考えずにその場を立ち去る事にしました。



手に持ったタバコの吸い殻を近くにある川に投げ込もうと思い、川を覗きこみま


した。


すると…。



川にさっきの女性が持っていた赤い傘らしきものが落ちてました。



少し気味が悪くなり、急いで帰る事にしました。



さっきの女性は生きてる人なのか…。そうでないのか…。


ペダルをこぐスピードは自然に速くなってました。




自宅に着いた頃には雨も上がり、星空が見えてました。


秋の雨はジワジワと体温を奪います。私はすぐに風呂に入り、その日はそのま


ま寝た気がします。




翌日です。


学校へ行くのに朝から2つ先の駅まで自転車で走ります。


その頃は昨日の出来事をすっかり忘れてました。



学校が終わり、また駅から帰ろうと自転車に乗った時にふと思い出し、昨日の女


性と会った場所を通りました。



その場所。


私はその場所にたどり着いた時に驚きました。



私が雨宿りをした家。


その家には白いシートがかけられて、半分以上が崩れ落ちてました。



私は自転車を止めて、しばらく見ていました。


すると近所の人なのでしょう、おじさんが通りがかり私に言います。



「火事やで…。昨日の夜中。じいさんとばあさん亡くなったらしいわ…。」



私はその話で怖くなりました。


「昨日ですか。僕昨日ここで雨宿りしたんですよ…。」



「あー雨ひどかったもんな。焼けたんは朝方やわ。朝から消防車来てたわ。」


おじさんは身振り手振りで私に話します。続けて、


「この家は20年くらい前にも焼けてるんよ。住んでる人は違ったけどな。そん


時は娘さんが焼け死んでな…。もう引っ越しはったけど…。」



私は昨日会った女性がその焼け死んだ娘さんの様な気がしました。




私は川を覗きこみました。


昨日の夜、開いたまま落ちていた赤い傘はもうありませんでした。



秋の夜に見た赤い傘をさす女性…。


火事で焼け崩れた家…。



誰かその女性、見た人いませんか…。






TODAY'S BGM 「秋唄」 大江千里