駐在員として働いている頃は、どこかで「いつか帰る」という前提があった。
任期は決まっていなくても、駐在である以上、いずれ帰任する。
だから仕事も、どこか区切りを意識していた。
もちろん目の前の仕事には全力だった。
でも、その先の5年、10年を自分が担うという感覚はなかった。
現地雇用になって、その前提がなくなった。
帰任という期限が消えた。
すると、不思議なことに仕事の見え方も変わった。
「来年どうするか」ではなく、
「この会社やこのプロジェクトを5年後にどうしたいか」
そんなことを考えるようになった。
事業への向き合い方も変わった。
自分が植えた種を、自分で育てられる。
途中でバトンを渡す前提ではなくなった。
もう一つ変わったのは、周囲との関係だった。
以前は、どうしても
「日本から来た駐在員」
という見られ方があった。
もちろん受け入れてもらっていた。
ただ、「いつか帰る人」という認識は、どこかにあったと思う。
現地雇用になってからは、それが変わった。
自分はもう「駐在員」ではなく、
チームの一員になった。
しかも、この会社では前例がなかった。
駐在から現地雇用へ切り替えて残った最初の人間。
だから周りも、「残ってくれた」という受け止め方をしてくれた。
それは想像していた以上にうれしかった。
現地雇用になって一番変わったのは、給与でも福利厚生でもない。
仕事への向き合い方だった。
そして、
会社から見た自分の立場でもあった。
「いつか帰る人」ではなく、
「この先も一緒に会社をつくっていく仲間」。
そう思ってもらえたことが、自分にとっては一番大きな変化だった。