GMから

"What can you bring to the company?"

と聞かれた時、すぐに答えられたわけではなかった。

 

現地雇用への切り替えを考える中で、

初めて自分自身の市場価値と向き合うことになった。

 

自分には何ができるのか。

なぜ会社は自分を雇い続けるべきなのか。

 

そんなことを改めて考えた。

 

 

最初は、英語力なのかと思った。

確かに仕事で困ることはない。

会議も交渉も問題なくこなせる。

 

ただ、それだけなら現地にはもっと優秀な人がいる。

英語ができること自体は価値にならない。

 

専門知識も同じだった。

もちろん経験はある。

しかし、それだけなら代わりがいないわけではない。

 

では何だったのか。

 

振り返ると、自分が評価されたのは

日本とオーストラリアの両方の感覚を理解していたこと

だったと思う。

 

現地法人とはいえ、親会社は日本企業だ。

意思決定の考え方。

リスクへの向き合い方。

品質への考え方。

長期的な関係性の重視。

 

日々の仕事の中で、日本的な価値観は少なからず存在する。

 

一方で、現地法人は当然ながらオーストラリアの会社として動いている。

スピード感も違う。

コミュニケーションも違う。

仕事の進め方も違う。

 

 

その間には、意外と大きなギャップがある。

そして、そのギャップを埋めることが自分の役割だった。

 

日本側が何を気にしているのか。

現地側が何を考えているのか。

両方が理解できる。

それをお互いに翻訳する。

言葉だけではなく、考え方や価値観も含めて。

 

 

もう一つ大きかったのは、現地への溶け込み方だったと思う。

 

私は親会社からの出向者として来た。

だから最初は当然、

「日本から来た駐在員」

だった。

しかし時間が経つにつれて、その感覚は薄れていった。

少なくとも自分自身はそう感じていた。

 

よく言われることだが、

駐在員は時として

「親会社の目」

として見られる。

 

極端に言えば、

「親会社から送り込まれたスパイ」

のような存在だ。

 

もちろん冗談交じりではあるが、そういう距離感が生まれることは珍しくない。

 

ただ、自分の場合は比較的早い段階で受け入れてもらえた。

少なくとも周囲からは、

「日本から来た人」

ではなく、

「チームの一員」

として扱われていたと思う。

 

後になって振り返ると、

駐在期間の中でここまで現地組織に入り込めるケースは珍しかったのかもしれない。

 

市場価値というと、資格や語学力を想像しがちだ。

もちろんそれも大切だと思う。

 

ただ、自分の場合は違った。

評価されたのはスキルそのものではなく、

 

二つの組織をつなげることができる立場だった。

 

そして何より、

 

現地組織の一員として信頼を得られていたことだった。

 

現地雇用への道が開けた理由があるとすれば、おそらくそこだったと思う。