海外に残るか、帰国するか。
このテーマは、駐在員なら一度は考えるものだと思う。
任期が終われば帰る。それが制度だからだ。
ただ、頭のどこかでずっと引っかかっていた。
自分は果たして帰りたいのか。
本当に帰る必要があるのか。
海外での仕事は面白かった。
新しいことばかりで、スピードも速い。
家族の時間も十分に確保できる。
日本で働くのとは全く違う。
とはいえ、制度の流れに乗れば帰国になる。
それが普通だし、多くの人はそのまま帰る。
だから、しばらくは考え続けていた。
残れるのか、帰るのか。
ただ、不思議なことに
結論が出る瞬間はとてもあっさりしていた。
ある時、ふと思った。
「残ると決めてしまえばいいのでは?」
帰国が前提になっているから迷う。
でも、その前提を外せば話は単純だった。
残る。
それだけのことだ。
もちろん、簡単ではない。
そもそも、前例がない。
前任も、前々任も残りたい中、帰らざるをえなかった。
ただ、方向が決まると、
それまで感じていた迷いはほとんど消えた。
帰るか、残るかで悩んでいた時は、
常に二つの選択肢を頭の中で行き来していた。
でも、残ると決めた瞬間、
考えるべきことは一つになる。
どうやって実現するか。
そこから先は、
決断ではなく作業だった。
家族との相談。
条件の確認。
現地社長との相談。
本社との交渉。
制度の整理。
実際には時間もかかったし、
簡単なプロセスではなかった。
ただ、少なくとも一つだけははっきりしていた。
もう帰るという選択はない。
迷いが消えると、
物事は思ったよりシンプルになる。
海外に残るという選択も、
大きな覚悟というより、
ただ一つの前提を変えただけだった。