ビジネスに感動を -3ページ目

高橋茂 『電網参謀』

本書『電網参謀』は、インターネットを使って政治を変えたい元音響エンジニアの体験記である。

副題が「『デジタル軍師』が語る自伝的ネット戦略論」ということで、読む前は戦略論の方法論が中心に書かれているのかと思っていたが、自伝が中心である。

概して読書は著者の体験を追体験するものだが、本書ほど追体験に適した本も珍しい。高橋茂氏の思考と行動、そして他の人々の反応が手に取るように分かるのである。後半においては、ネットのマネタイズについての考察等も含まれるが、2000年の長野県知事選挙の支援とその後の政治家支援、特に滋賀県の嘉田知事を支援する会との交流等についても記されている。

最も注目に値する箇所を選ぶとすると、ネット解禁の現実性という文章である。 p.110

世耕弘成参議院議員がネット解禁のために報告書をまとめて提出しようとしたが、国会にて党内の壁に阻まれ、提出できなかった。世論の圧倒的な支持があったにもかかわらずである。高橋茂氏は世耕氏に状況を確認した後に、「自民党・公明党が政権を持っている限りはネット解禁葉実現できない」と確信されたのである。

この状況は今ネット内のニュースを騒がしている内閣記者クラブ開放の反故された状況に似ている。それは、世論は圧倒的に解放を求めているにもかかわらず、国民からは伺い知れない魔物が政府内を跋扈して、世論が政治に反映されないという状況である。ただ現在の状況は、選挙前~選挙終了後において誰もが「記者クラブ解禁になるのは当たり前」とまで感じたような雰囲気があったにもかかわらず、それが反故されたのであり、前述の状況よりも問題が大きい。

日本人の特質として「許す文化」がある。これは美徳である。しかし結果として、悪者のしたい放題という状況をもたらす可能性が高いというデメリットがある。我々は"与党"のちゃぶ台返しを許してはならない。忘れてはならないのである。

これが、今回の内閣記者クラブ解禁延長事件にて我々が学ばなければならない苦い教訓なのである。

高橋茂 『電網参謀』

『オバマのすごさ』

本書『オバマのすごさ』は、オバマ候補が知名度約0.2の時点からスタートした大統領選挙において、なぜ知名度95のヒラリー候補に勝てたのかということについて記されたものである。(知名度は推定)

結論としては、知性とスタイル、そして共感。オバマ大統領は、これらの要素を至高のレベルで体現されているということである。

混迷を極めるアメリカの舵をとるには、知性がいる。経験のみしかない候補者のマケイン氏やペイリン氏には到底できることではない。もちろん、J.W.B.にも。

しかし、ヒラリー氏には知性と経験があり、有力な人物からの幅広い支持があり、大統領に適任とも考えられる。しかし、ヒラリー氏には決定的に欠けているものがあった。それが、共感である。

共感をDNAのレベルで体現できる政治家は多くない。そして例え共感を体現していても、体現していることを他者に伝えることは容易ではない。

そこで、ITを駆使するのみならず、ITを好む人々と一緒になって選挙という祭りに取り組むことで、通常では届かないような人々にまで、共感をお届けしたのである。

日本においても当然そのような政治家はおられる。彼らを探すことは国民の義務なのである。
岸本裕紀子 『オバマのすごさ』

Harvard Business Review日本版 2009年9月 ”信頼学”

チームワークは素晴らしい。しかし、それは、チームワークが十分に機能した時の話である。そして、現実では多くの場合チームワークは上手く機能しない。

本書の記事”Why Teams Don't Work” "心理学の調査が教えるチームワークの嘘"は、チームワークが失敗するケースについて詳細にまとめられている。

例えば、J. Richard Hackman (リチャード・ハックマン)教授の共著"成功する経営リーダーチーム 6つの条件"によると、各国の120のトップ・チームにおいて、誰がチームのメンバーかが明確になっているチームは1割未満だったということが挙げられている。そして最適なメンバーがチームに入っているかどうかもあいまいなのである。つまり、チームワークが成功する以前に、チームが作れていないケースが多いのである。

また、チームワークに関する一般的な誤解が記されており、一読に値する。

・ 足並みのそろったチームは、そうではないチームよりも優れており、
  生産性でも勝る
・ 大きなチームのほうが、小さなチームよりも優れている。
  なぜなら、利用できる資源が多いからだ
・ チーム・メンバーたちはある時点で、お互いに気心も知れ、気安く
  なるため、互いの欠点を受け入れ始め、その結果、チームの業績が
  低下する

いかがだろうか。上記の3点に”ふむふむ”と頷いてしまった人は、要注意であるw。

続く

『仕事をするのにオフィスはいらない』

大正解な提言をするのが、本書『仕事するのにオフィスはいらない』である。

誰に対して、大正解なのか。それは、工場内での製造等の業務、受付業務、飲食店等の店舗での業務等を除く全ての人々である。

いかにサービス業が増えようとも(店舗型のビジネスが増えようとも)、本書の対象外となる人々は多くない。なぜならサラリーマンと言われている人々が本書の対象者だからである。


なぜあなたは会社に毎日出向くのか。それは、そこに会社があるからだ。

もし依頼された仕事はあるが、会社という建物がなければ?

あなたは当然、自宅かカフェ等のどこかの場所で仕事をするだけである。

ただ、それだけのことである。しかし、現実的にはそのような方法で仕事をする人は極一部である。なぜか?それは、昨日まで常に多くの人が会社という建物の中で働いてきたからだ。慣性に勝る主張なし!と考える人が多ければ、進化は起こりえない。

ノマドワーキングは人類にとっての進化である。もちろん、本書や本書に記された参照文献が提示するタイプが最も好ましいかどうかは現時点では分からないが、少なくとも多数のサラリーマンが嫌々通勤することはムダ以外の何ものでもない。

本書では明日からノマドワーキングが実践できるほど、具体的な働き方が記されている。Googleのサービスやその他の優れたクラウドサービスを大活用して、自分の時間と集中力を効率化させてバリバリと仕事をし、パーマネントコネクティビティ(友人や同僚、家族と永続的な紐帯)を作るのである。

作家やMRであれば、上記を実践している人も多いだろう。そして上記だけではまかなえない問題点への対応もされていることだろう。特に製薬会社では、一流のコンサルティング会社からアドバイスを受けて、日々最適なワークスタイルを検討されていることだろう。

つまり、既にノマドワーキングという世界はやってきているのである。ただ、その動きはまだまだ小さく、多くの人々の目には留まっていない。その段階で、あなたはその流れに乗るか、乗らないか。英断が求められているのである。

続く

佐々木俊尚 『仕事するのにオフィスはいらない』

『福岡ドーム「集客力」の作り方』

全国の行政主導のハコモノが失敗の連続であるのに対して、リクルート出身のビジネスマンが実践されたハコモノは大成功した。本書『福岡ドーム「集客力」の作り方』はその詳細な事例である。

ダイエーの業者イジメは過酷を極めていたため、私自身はダイエーに対して興味がなかったが、本書を読んでダイエーの経営者は凄いと感じた。

本書の流れは、

1. ダイエーの中内正氏が地域の活性化の構想を樫野孝人氏に語る
2. 樫野孝人氏がそれを具体化するための施策を検討・実践する
3. 2の成果をまとめる

というものである。

本書に記載されている中内氏のモットーは、

1. 本物志向
2. マーケットの開拓
3. アンチ東京
4. ブラックユーモア
5. ハードよりもソフトを重視
6. ビジネスとしての予測可能性の確保

である。福岡という東京とは比較にならないほど小さなマーケットで、いかにして収益を確保しつつ、福岡ドームというハコモノを軸にして地域を活性化していくか。そのためには当然「本物」を福岡県民のみならず近隣のアジア人にぶつけ、多くの人々をドームに呼び込まなければならない。

最も面白い例が、スポーツバー "The Big life"である。試合を眺められるバーであるが、「野球を見るのではなく、風景にして楽しむ」というコンセプトであり、非常に斬新である。(缶ビールを飲みながら野球を見る中年以上のおじさんには、当然のことなのかもしれないが)

次に面白いのが、ブラックユーモアを軸にしたサービスと野球関連グッズである。

ホークビレッジというリラックしたムードのレストランでは、ネクタイ着用が禁止されており、ネクタイ着用の客はネクタイが切られるという無料のサービスを提供している。そして、初年度のことだろうが、年間で350本をカットしたという実績を誇るのである。

また、はぎりしピーナッツというグッズを食べることで、ホークスが負けた際に悔しがりながら楽しくピーナッツが食べられるようになるのである。

野球ファンなら上記内容を昔からご存知のことだろうが、その点はご容赦願いたい。


滋賀県は当然として、他府県も上記のようなアイディアに富んだ地域の活性化をすることで、健全な道州制への移行が可能となると考えているが、いかがだろうか。
樫野孝人 『福岡ドーム「集客力」の作り方』