本社に会議で戻っていた

会議が終わるとスタッフが

「折り入ってご相談があるのですが…」

とても緊張した眼差しでそう言ってきた

 

以前から最近、彼が何かで悩んでいる

他のスタッフから聞いていたので少し気になっていた

 

少しデスク作業をした後、会議室で話した

「プロポーズのいろはを教えてください」

会議室のドアを閉めた途端、彼が口にした



何か仕事のことで悩んでいると思っていた私はその質問に対してどんな顔で応えたらよいのか戸惑ってしまった

 

プロポーズのお相手を尋ねると恥ずかしそうに彼が続けた

「年末、ドームに一緒に行った○○さんなんです」

 

年末、バスをチャーターして東京ドームライブに同行した、私の姪の先輩、加藤くん推し女子だった

 

「君たち、いつから付き合っていたんだ?」

まったく予想できない相手だったから聞いてみた

 

「いえ、まだ付き合っていません!」

彼の回答に耳を疑った

 

スタッフからはドーム以降、時々、この彼女がオフィスに遊びに来ていることは聞いていた

 

彼の話を聞くと…

彼曰く、オフィスに来るたびに話が弾んで何度も食事や飲みにも行っていたという

その内、二回は二人だけだったこともあるらしい

 

「そもそもプロポーズの前に”付き合う”ための告白だろう…順番としては」

いきなりプロポーズでは、相手も戸惑うはずだ

 

そうすると彼が一枚の記事のプリントを見せてくれた

「山本耕史と堀北真希の交際0日婚」を書いた記事だった

 

交際を頑なに断っていた堀北さんが

「結婚だったらもしかしたらあるのかもしれない」

という流れになり結婚になったという内容の記事だ

 

以前、飲んでいるときに彼女がこの話題が出た時に

「私もこんなのはありかもしれない」

と言っていたというのだ

 

それが頭からはなれなくて”交際”ではなく”結婚”にしたというのだ

 

”交際”の相談なら面白おかしく告白用のプランを考えるが流石にプロポーズとなると曖昧なアドバイスもできない

 

しかし、互いがNEWSファンという強力な共通点がある

今秋で30歳になる彼は多分、同世代よりは経済力もあるだろう

 

身を固めるのはプラスな要因ばかりだ

仕事柄、事前に情報を収集して戦略を練るのが良い

 

幸い、姪の会社の先輩だ

その”情報”は容易に入手できるはずだ

 

早速、姪にLINEで相談してみるとすぐに返信が返ってきた

「そのとおり○○さんは堀北真希タイプの人」

 

姪から見て尊敬できる仕事人間

職場での信頼は厚いらしい

結婚はしたいが無駄な恋愛には興味がないという

 

スタッフにもらった記事を改めて読んでみた

「こんなタイプの女性も存在するんだなぁ」

しみじみそう感じてしまった

 

これは下手な小細工を考えるよりストレートに当たる方が良い

例え当たって砕けたとしても跡は引かないだろう

 

ひきこもり生活から入社した頃は

「恋や結婚など諦めてる」

当時のご両親がそう口にするほどだった

 

これは何としても姪にも協力してもらわなければ

 

つづく