▲6次元:細胞小器官(ミトコンドリア)~▲4次元:組織(上皮組織・結合組織など)までを見ていく④ | 続・ティール組織 研究会のブログ

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ティール組織が話題になっているが、具現化するにはどうしたらよいか?
その研究を続けるにあたり、さらに次の形態である、続・ティール組織なるものまで視野に入れ、具体的な施策・行動内容を研究・支援する会。

先から、生命体の階層性について見ているが、亜原子粒子の世界から、細胞や器官、そして人間へと階層が続いていく様子がわかった。ここに次元なるものを見出し、この各次元をしっかりと生命体として捉えていくと、また違うものが見えてくるかもしれない。そこで、当方は、下記のように次元を設定した次第だ。

▲10次元(マイナス10次元):素粒子(電子・光子など)

▲9次元(マイナス9次元):ハドロン(陽子・中性子など)

▲8次元(マイナス8次元):原子

▲7次元(マイナス7次元):分子

▲6次元(マイナス6次元):細胞小器官(ミトコンドリアなど)

▲5次元(マイナス5次元):細胞

▲4次元(マイナス4次元):組織(上皮組織・結合組織など)

▲3次元(マイナス3次元):器官

▲2次元(マイナス2次元):器官系

▲1次元(マイナス1次元):人間の肉体(魂が入る前の肉体)

1次元(プラス1次元):人間・個人(魂が入った状態の人間)

2次元(プラス2次元):部署・チーム

3次元(プラス3次元):会社

4次元(プラス4次元):団体・協会・地域・カルテル・市町村・業界

5次元(プラス5次元):産業・都道府県

6次元(プラス6次元):日本国・各国

7次元(プラス7次元):世界経済・世界政治・宗教

8次元(プラス8次元):人類・動物・植物・鉱物

9次元(プラス9次元):地球・ガイア

10次元(プラス10次元):太陽系・太陽を取りまく宇宙

 

これらの各次元を生命体として捉え、どうすれば各次元が生命体として躍動でき、さらには次元間で相互に影響しあうのか、その仕組みを解明していければと思う次第だ。一通り、▲第10次元~▲第1次元まで見てきたので、今度は、それらを第3次元:会社に当てはめて考えていきたい。会社がティール組織になっていくためにはどうすれば良いのか、各論を展開していった。以下に今一度、各次元について記載したい。その際、3つの次元の関わりについてみていく。今回も、下記の3つの次元だ。以下、こちらより抜粋

▲6次元(マイナス6次元):細胞小器官(ミトコンドリアなど)

▲5次元(マイナス5次元):細胞

▲4次元(マイナス4次元):組織(上皮組織・結合組織など)

 

今回は、幹細胞へのシグナルについて見ていく。

多能性幹細胞は,自己複製能を持ち,あらゆる臓器に分化しうる細胞であり,多能性幹細胞より分化させた組織幹細胞を用いた幹細胞治療が再生医療の有力な 切り札として期待されている。しかし,代表的な多能性幹細胞である胚性幹細胞(ES 細胞)は,その使用に際し倫理面や移植免疫の問題点が指摘されている。一 方,体細胞より人工的に作製することができる人工多能性幹細胞(iPS 細胞)は,そうした問題点をクリアできるため,幹細胞治療の有力なソースとなりうることが期待されている。しかし,iPS 細胞の作製効率や iPS 細胞から組織幹細胞への分化効率は十分とはいえないのが現状であり,これらの効率を高めていくのが 今後の iPS 細胞を用いる際の一つの課題である。

 

これまでの研究により,多能性幹細胞の多分化能の維持,増殖,あるいは特定の細胞への分化誘導に,いくつかの細胞膜受容体を介したシグナルが関与していることが明らかになっているが,そのほとんどが ES 細胞に関する研究である。iPS 細胞は,その形態的特徴が ES 細胞と非常に似ており,自己複製能や多分化能でも, 多くの共通点を持っていることが知られている。しかし,iPS 細胞における細胞膜受容体の発現やそれを介したシグナル伝達機構に関して,詳細な検討が少なく,ES 細胞との共通性がみられるのかどうか明らかになっていない。今回,ES 細胞に加えて iPS 細胞の 増殖や分化に影響を与える細胞膜受容体シグナルに関して概説する。

2. 多能性幹細胞の増殖活性に影響を与える細 胞膜受容体シグナル 

マウス ES 細胞における多分化能維持および増殖には,leukemia inhibitory factor(LIF)による LIF 受容体を介した Jak/Stat3 の活性化が重要であることが報告されている(図 1A)。

しかし,それ以外にも,チロシンキナーゼ型受容体,G タンパク質共役型受容体, Wnt 受容体等の細胞膜受容体を介した細胞内シグナル伝達系の関与も指摘されている。Han らは,マウス ES 細胞において,G タンパク質共役型受容体であるアドレナリン受容体やアンジオテンシンⅠ型受容体 を刺激すると,PKC の活性化などを介して MEK/ERK および PI3K/Akt の活性化を高め,DNA 合成や細胞増殖を促進させることを明らかにしている。一方,石塚らはマウス iPS 細胞において,α1 -アドレナリン受容体の選択的アゴニストであるフェニレフリンの刺激を行い,LIF 存在下のマウス iPS 細胞の増殖に対して有意な促進作用が認められた。この時,フェニレフリンの刺激は,Jak/Stat3 には影響せず MEK/ERK および PI3K/Akt の活性化を促進することが明らかに なり(図 1A),マウス ES 細胞に類似した細胞増殖促進に関わるシグナル伝達経路の存在が示唆された。

 

また,石塚らは,LIF 存在下のマウス iPS 細胞において,イオンチャネル内蔵型受容体であるニコチン型アセチルコリン受容体を刺激したところ,細胞内カルシウム濃度の上昇およびカルモジュリンキナーゼⅡ(CaMKII)の活性化がみられ,増殖促進作用が得られた。また, この刺激は,Jak/Stat3,MEK/ERK,PI3K/Akt のリン 酸化には影響を与えず,LIF 受容体やα1 -アドレナリ ン受容体などのGタンパク質共役型受容体とは異なる経路で細胞増殖を促進している可能性も示唆された。Layden らは,マウス ES 細胞でのコレラ毒素による Gs 共役型受容体シグナルの活性化を行い,ES 細胞由来胚様体の拡大促進作用と多能性因子の発現維持作用がみられることを報告し,胚様体の維持への Gs 共役型受容体シグナルの関与を示唆している。

 

ヒト ES 細胞における多能性維持や自己複製には, fibroblast growth factor 2(FGF2)による FGF 受容体シグナルの活性化の重要性が指摘されている。Kim らは,FGF2 の刺激がヒト ES 細胞での PI3K/Akt の活性化をもたらし,自己複製能を維持していることを報告している(図 1B)。石塚らは,FGF2 非存在下のヒト iPS 細胞において,α1 -アドレナリン受容体やアンジオテンシン type 1 受容体を刺激すると,ERK および Akt のリン酸化を高め,細胞増殖を促進させることを明らかにした。また,α1 -アドレナリン受容体 やアンジオテンシンtype 1 受容体の刺激による増殖促進作用は,GqのsiRNA導入によるノックダウン,PKC 阻害薬,MEK 阻害薬あるいは PI3K 阻害薬の前処置により抑制された。これより,ヒト iPS 細胞の増殖促進作用に Gq を介した PKC,MEK/ERK および PI3K/Akt の活性化が関与することが示唆された(図 1B)。

 

一方,FGF2 存在下のヒト iPS 細胞では,α1 -アドレナリン受容体やアンジオテンシンtype 1 受容体の 刺激による有意な増殖促進作用はみられなかったことから,FGF2 による細胞増殖促進シグナルの経路と重複している可能性も考えられる。一方,Nakamura らは,百日咳毒素によるGi共役型受容体シグナルの阻害実験により,Gi 共役型受容体シグナルがヒト ES 細胞や iPS 細胞の細胞増殖や多能性維持には影響を与えないが,コロニーの形成を調節していることを明らかにしている。

3. 多能性幹細胞の心血管前駆細胞への分化に影響を与える細胞膜受容体シグナル 

マウスやヒトの ES 細胞の心血管系細胞への分化に 対して,TGFβ スーパーファミリーの 1つである bone morphogenetic protein(BMP)やアクチビンの受容体シグナルが促進的に働くことが報告されている。また,Kattman らは,マ ウ ス iPS 細胞 を BMP- 4 およびアクチビン A で刺激すると Flk-1(2 型 VEGF 受容体)陽性の中胚葉系前駆細胞への分化が誘導されることを報告している。また,分化誘導された Flk-1 陽性細胞のうち PDGF 受容体陽性の細胞は心筋細胞に,PDGF 受容体陰性の細胞は血管細胞に特異的に分化することが明らかになり,Flk-1 陽性細胞は心血管系の前駆細胞であることが確認されている。

 

さらに,Kattman らは,ヒトの iPS 細胞に対しても BMP-4 およびアクチビンAの刺激でKDR(2 型VEGF 受容体)陽性 PDGF 受容体陽性の心筋前駆細胞が分化誘導されることを明らかにした。一方,Bai らは, ヒト ES 細胞を BMP- 4 で刺激すると Smad のリン酸化がみられること,Smad 阻害薬のドルソモルフィンの 前添加により BMP- 4 + FGF2 + VEGF の刺激による 血管前駆細胞への分化誘導が抑制されることから, BMP- 4 による心血管系前駆細胞への分化促進には BMP/Smad シグナルが重要であると報告している (図 2)。 

一方,Yan らは,Gs 共役型受容体の 1 種であるβアドレナリン受容体の刺激が,マウス ES 細胞の心筋細胞への分化を促進し,これに ERK や p38MAPK の関与が示唆されることを報告している。また, cyclic AMP アナログである dibutyryl cAMP の刺激が, マウス ES 細胞から心筋細胞あるいは血管平滑筋細胞 への分化を増強することも明らかになっている。石塚らも,ヒト iPS 細胞を,BMP- 4,FGF2 および アクチビン A とともにβ-アドレナリン受容体アゴニストであるイソプロテレノールで刺激すると,KDR陽性の心血管前駆細胞への分化誘導がより促進されることを明らかにした。また,この作用は,PKA 阻害薬である H89 あるいは p38MAPK 阻害薬である SB203580 の前添加で抑制されたことより,PKA や p38MAPK の活性化が関与していることが示唆された(図 2)

4. 多能性幹細胞の神経前駆細胞への分化に影響を与える細胞膜受容体シグナル 

BMP-4 の刺激は,マウス ES 細胞の初期の神経分化を阻害し,BMP-4 の受容体結合を阻害するNoggin で刺激すると神経前駆細胞への分化が促進さ れることが報告されている。また,同じ TGFβフ ァミリーの 1 つであるアクチビン A も,マウス ES 細胞の神経分化阻害に働くことが明らかになっている。BMP-4 は Smad1/5/8 を, アクチビン A は Smad2/3 を活性化することが知られており,Smad シグナルが神経分化の調節に関わる可能性が考えられている。一方,レチノイン酸はマウス ES 細胞の強力な 神経分化促進物質であり,JNK を介した cAMP response element binding protein(CREB)の活性化による機序が示唆されている(図 3)。

従来の研究で,成体マウスの海馬歯状回や側脳室においてリン酸化 CREB の発現が確認されており,CREB の 活性化が神経前駆細胞の分化を促進し神経新生へ関与することが報告されている。また,Zhang らは, CREB のリン酸化がマウス間葉系幹細胞の神経分化促進に働いていることを報告している。CREB のリン酸化は,PKA,CaMK IV,MAPKs などのリン酸化酵素により調節されていることが知られている。石塚らは,マウス iPS 細胞の神経前駆細胞への分化に対する Gs 共役型受容体の 1 種であるβ-アドレナリン受容体刺激の影響を検討した。マウス iPS 細胞由来胚様体をレチノイン酸とともにイソプロテレノールで刺激すると,神経前駆細胞への分化が促進され,PKA 阻害薬 H89 の前添加によりその作用が抑制されることを明らかにした(図 3)。

 

また,神経伝達物質の一つであるセロトニンは,成体脳の神経新生への関与が指摘され,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) の抗うつ作用との関連が注目されている。石塚らは, マウス iPS 細胞由来胚様体に対して,レチノイン酸とともにセロトニンで刺激を行うと,神経前駆細胞への分化促進効果が得られ,5-HT4 受容体アンタゴニスト GR113808 の前添加によりその作用が抑制された(図 3)。5-HT4 受容体は,β-アドレナリン 受容体と同じく Gs 共役型受容体の 1 種であり,これらの受容体刺激を介した cAMP/PKA シグナルは,多能性幹細胞から神経前駆細胞への分化増強に寄与している可能性が示唆される。

 5. 今後の展望 

今回,多能性幹細胞の増殖および心血管前駆細胞や神経前駆細胞への分化に影響を与える細胞膜受容体シグナルについて概説した。最近では,多能性幹細胞から内胚葉系細胞である肝細胞,腸管上皮細胞,膵臓β細胞への分化誘導が行われており,それぞれの分化への細胞膜受容体シグナルの関与も報告されている。このようなことから,薬物を用いて多能性幹細胞の受容体を特異的に制御し,より効率的に多能性幹細胞を増殖・分化させることができれば,あらゆる臓器・組織 における幹細胞治療をより早期により有効に行える可能性がある。その意味でも,多能性幹細胞の薬理学的制御に関する研究が,今後の再生医療研究に与える影 響は少なくないと考えられる。

 

 

これらのシグナル伝達により、幹細胞が組織を維持・管理するために、増殖・分化するかどうかを決めている。そのシグナルは上記のようにいろんな経路があるということだ。さらに、組織だけでなく、器官や器官系からのシグナルも入ってくる。このような多種多様なシグナルを受取ることにより、幹細胞が決断しているのであろう。会社でいうと、各部長がその判断を行っているのかもしれない。各部の役割を維持するために、メンバーからのシグナルだけでなく、経営層からのシグナルも受け取りながら、部署を維持・管理するために、メンバーを増やすのか、メンバーの役割を分化させるのか、などを決めているのであろう。

 

結局は、幹細胞のような存在がなければ、組織を維持するのは難しい。どんな役割にでもなれる幹細胞は、各細胞が損傷したらそのリカバーにすぐ入るため、増殖・分化を決断する。このような判断するものがどうしても必要になるのであろう。