Next舞台制作塾事務局ブログ「かめブロ」 -4ページ目

Next舞台制作塾事務局ブログ「かめブロ」

舞台制作者の知識・スキル共有を目的とした『Next舞台制作塾』のお知らせや、セミナーレポートをお届けします。東京都・亀戸から発信中。


制作塾オープンサロン第7回
学生座談会+α 卒業後も舞台制作に関わるために


今回は、今年4月に行った「学生座談会」の第二弾として、学生・若手のみなさんと一緒に「舞台に関わり続けること」を考えたいと思います。

「舞台制作に関わる」とは、どういうことでしょうか?
卒業後も劇団を続けていくこと、フリーランスとして様々な舞台公演で仕事をすること、舞台制作に関わる会社や劇場に就職すること、中には中間支援組織や行政の立場から文化環境の整備に関わることをイメージする人もいるかもしれません。

こういう時にしばしば、「何をしたいか?」が問われます。
「舞台芸術が好き」な気持ちは大事ですが、舞台制作に関わる多くの人は、「舞台を通じてこれがしたい!」等の具体的な考えで自ら仕事を作り出しています。

もう一方で考えておきたいことは、「どう働きたいか?」です。
どうしたら生計が成り立つか、休みはどれくらい必要か。10年後、20年後にどんな働き方をしていて、どういった暮らしをしているのか、想像したことはありますか?

また、安定した暮らしを重視する、人や社会への貢献に喜びを感じる、ものづくりが生きがい等、価値観は人それぞれです。価値観に合った仕事内容や働き方を考えることも、継続のヒントになるでしょう。

舞台制作のロールモデルは、未だありません。継続のためには、自分の居場所を自ら開拓していく必要があります。

今回のサロンでは、将来舞台に関わりたい方や、舞台の現場で働きはじめて間もないみなさんと、「舞台制作に関わること」についてどう思うか、どうしていきたいか、ということを話し合いたいと思います。
同時に、ワークショップを通じた自己分析や、舞台と関わり続ける20年間をシミュレーションして、人生の節目でどんなことが必要になりそうか?も考えていきたいと思います。就職活動を視野に入れている学生の参加も歓迎です!

こんな方の参加をお待ちしています!
・将来、舞台芸術に関わることを希望している学生(特に大学1~2年生)
・舞台芸術の業界で働きたいと考えている方、
・就活準備中の方(大学3~4年生、大学院生等)
・卒業を機に一度舞台から離れる(離れた)が、いずれ戻りたいと思っている方
 (大学3~4年生、大学院生~既卒)
・卒業後三年以内の方で、舞台芸術の業界で働いている方

◆日時 2015/1/30(金)18:30-21:30

◆場所 ‎Nextミーティングルーム(東京都江東区亀戸7-43-5 小林ビル 2F)

◆料金 1,500円(税込/お茶・お菓子つき)

◆詳細・お申込みはこちら
http://www.next-nevula.co.jp/techo/?p=3256

主催:有限会社ネビュラエクストラサポート(Next) 
協力:舞台芸術制作者オープンネットワーク(ON-PAM)

こんにちは。事務局の斉木です。
更新が遅くなってしまいましたが、全四回のゼミの最終回をレポートしたいと思います。この日のテーマは、「収入を増やすために」です。チケットの販売方法や、公演期間中の資金繰りについて扱いました。

ゼミではこれまで、「目標を見極めて予算を策定すること」を学び、「関係者を満足させられるお金の使い方」を考え、これらを自分たちの活動に反映させたシミュレーションを行ってきました。この中で、受講生たちは「この部分は節約しよう」、「ここは大事だからお金をかけよう」といった、具体的な支出の戦術を立ててきました。

第一回「公演予算の作り方と予算管理」
第二回「様々な公演予算のシミュレーション」
第三回「カンパニーの成熟を誘い出すために」

この日は、収入に焦点を当てます。自主公演やそれに近い形態の公演の場合、上演団体にとって最も身近な収入はチケット収入です。このチケット収入を増やすにはどうしたらいいか、また、チケット収入が入るまでに発生する支払いをどう乗り切るか、という戦術を井神さんに伝授して頂きました

指定席・プレイガイドを導入する
小劇場の団体の公演は、客席は自由席である場合が多いと思います。わたし自身、よくダンス公演の手伝いに行きますが、ほとんどの場合は自由席です。しかし井神さんは「50席以上の席数の場合は指定席にすべき」だといいます。同時に、プレイガイドに委託する利点も教えていただきました。

[指定席の利点]
・早く買うほどいい席で観られる
→「いい席で観たい」人は、「早く買う」ので、チケットの売れ方が自由席に比べて早い。

・席が指定されている
→当日の場内案内係の人数が少なくて済む。

[プレイガイドの利点]
・オペレーションの簡略化
→準備・管理・入金や発送の対応にかかる手間や時間を削減し、他の業務に集中できる。
→入金・チケット発券が事前に終わっている状態になるので、当日運営のミスを防げる。

・リスク代行
→原則払い戻しができない仕組みになっている。
→天災や降板などで払い戻しが発生した際に対応してくれる。

・先行販売システム
(一般発売前の期間に、複数希望日時を申し込める。抽選でいずれかの日時のチケットを買える)
→一般発売日に予約できない人にも、事前に希望日時に申し込んでもらえる。
→一番人気の回が売り切れてしまっても、他の回のチケットをご案内することができる。

・プレイガイドのWEBサイトや情報誌などの媒体への掲載
→スポーツなどの他ジャンル好きの人が公演情報を知るきっかけになりうる。
→演劇のチケットをよく買う人などに情報発信してもらえる(かも)。

指定席・プレイガイドの導入は、チケットの販売や管理だけでなく、宣伝や、運営にも影響を及ぼすということです。プレイガイドに委託せず、制作者が行う場合は表面上のコストはかかりませんが、それはチケットに関する仕事を全て制作者が頑張って吸収するからです。その分、制作者の限られた労力と時間は他のことに使えなくなります。どちらの方法を取るにせよ、そのことを理解して仕事をするかどうかの違いは大きいと思います。

ところで、この話の途中で、受講生から興味深い質問がありました。「小規模な公演のチケットを委託販売することには、プレイガイド側にとってはあまりメリットがないのではないか」というのです。確かに、プレイガイドにとっては、導入にかかる初期費用を得られるとしても、席数自体が少ない公演では手数料はたかが知れています。
これに対する井神さんの答えは、「今まで演劇を見なかった客層を劇場に呼び込んでくれる新進気鋭の団体を応援し、結果的に団体や俳優・演出家が業界をリードする存在に成長して、何十年と長い付き合いをしていけるようになることはプレイガイドにとってもメリットになる」というものでした。長期的な信頼関係を築きながら取引を続けるという考え方は、考えてみれば基本的な営業のあり方ですね。

では、どのプレイガイドを使うと一番いいのか、などと考えてしまいますが、井神さんは、「一社独占販売にせず、いくつかのプレイガイドに委託することで間口を広げられる」といいます。コンビニ発券が主流ですので、上演地域ではどのコンビニが便利かを考えることも、ヒントになるかもしれません。


本番までに必要な支払い額を把握して、資金繰りを乗り越える

支出を減らす、収入を増やすということをしても、解決が難しいのが公演期間中の資金繰りです。表のように、チケット収入が入金される前の段階で、数々の支払いが発生します。チケットの手売りなどで直接現金が入ってくる場合もありますが、プレイガイドの売上は公演が終了してしばらく経たないと、現金が手元に入ってきません。助成金に至っては、助成対象経費のすべての支払いを完了させ、振込明細と領収証を報告書に添付しないと、現金を受け取ることができないものが多いのです。

この問題を解決するためには、定期的に劇団員から劇団費を徴収する、公演参加者から参加費を徴収する、団体の誰かが立て替えをする、銀行などから借り入れをする等、現金を用意する必要があります。予算書の収入・支出の数字を合わせているだけでは見落としてしまう可能性もありますが、あらかじめ、どのくらいの支払いが本番までに発生するのかを押えておけば、ある程度は準備ができるかもしれません。

こういった資金繰りをサポートする制度として、京都市には、「京都市助成金等内定者資金融資制度」という融資の制度があります。京都市に拠点のあるアーティストが京都市の内外で事業を行う場合と、京都市外に拠点のあるアーティストが京都市内で事業を行う場合に、最大300万円の融資を受けることができます。数は多くありませんが、助成制度によっては概算払い(事業が始まる前に、申請額が支払われること)が可能なものもあるそうです。
また、仕事を依頼した相手に請求書を発行してもらい、収入が入ったあとに振り込みをするという支払い方もあります。ただし、これは支払いまでの間、相手に代金を立て替えてもらっているような状態ですので、信頼関係の築けている相手でないと難しいことです。ここでも、関係者とは日頃から良好な関係を築き、長く付き合っていけるようにすることが大切になってきます。


全ての回を通して、実践的な内容を扱ってきましたが、最終回は特に、切実な内容だったと思います。
「チケットをどのように販売するか」というと、その公演単体の問題のようにも思えますが、増やすべき収入源という見方をすれば、団体の運営や存続、ひいては団体に関わる人々の生活に直結した問題であることに気づきます。予算にまつわる一つ一つの戦術が積み重なって、大きな戦略になっていくことがよく分かりました。
また、個人的にも、「良好な関係を続けていくことが、将来ビジネスパートナーを得ることに繋がる」というような、頭では分かっていても実感しにくいこと事柄にも、リアリティを感じながら考えることができました。

参加者からは、

実際の現場で活躍されている方たちのリアルな声や現実の厳しさ、スケールを知ることができ、とても刺激になりました。(学生)

具体的な予算書を見ながらの解説や、井神さんの現場感たっぷりの説明がわかり易くとても役に立ちました。(パフォーマー)

内容が濃く、そして予算の話なのに幅広い内容で、とても得るものが大きかった。(制作者)

といった声が寄せられました。いろいろな地域の方々にお集まりいただいたことも、とてもいい刺激になったと思います。

井神ゼミは終了しましたが、Next舞台制作塾では来年、新しいゼミがスタートする予定です。
こちらでもプラクティカルな内容を企画していますので、どうぞご期待ください。

◆ 予 告 ◆
2015年2月より、Next舞台制作塾の新講座が開講決定!!

世界と関わりながら仕事をするための基礎を学ぶゼミ(仮)|2015年2~5月(全10回)

国際的に活躍する制作者をゲストに招き、世界のさまざまな文脈を知るとともに、海外公演で役立つ制作知識・英語表現などを学びます。詳細は後日、公開予定です。

9月に実施した制作塾オープンサロン「舞台制作インターンのよりよいあり方」の参加者である田渕瀬那さん(東京学芸大学 在籍)に、ご自身の視点から話し合いの内容と感想をまとめていただきましたので、ご紹介したいと思います。

★事務局レポートはこちら。

オープンサロン「舞台制作インターンのよりよいあり方」。近年では当たり前のように定着してきている「インターンシップ」という制度だが、舞台芸術の世界ではどのような状況になっているのか。インターンシップを受けたい・あるいは今まさに受けている立場の人と、それを受け入れる立場の人……。関わるジャンルも属する団体も、これまでのバックボーンもそれぞれに違う、実に様々な視点を持った参加者がそこに集まった。

講座開設のきっかけは、受け入れ側・インターン生側双方の視点から見えてくる複雑なインターン制度にまつわる現状。「各人にしっかりケアをしたいが、事業を抱えながらでは十分なサポートができない/修了しても雇用が保証できるわけでない(現状余裕がなく皆無)/授業の一環等、志望者のモチベーションが曖昧なケースもある」。またあるいは、舞台制作インターンを志望するも「情報がまとまっておらず思うように情報収集ができない/募集時期がバラバラで、条件差を比較しようにもできない/インターンを通しやりたかったことと任せてもらえることのギャップがある」などなど。これまで聞こえてきた声に反応する形で、では舞台制作インターンのよりよいあり方はどんなものとできるだろうかと探る場が今回となった。

事前に質問のあった「現場での人材育成についてどのような考えをもっているか」ということを含め、「各団体のインターンシップの目標」「インターンシップやボランティアの募集方法や採用基準」「参加条件と待遇などのバランス」「舞台制作志望者と、“舞台に興味がある”程度の参加者への接し方」「任せる仕事の内容とフォローアップ」の5項目を軸に、ざっくばらんに各人で現状をシェアし、インターンシップについて考えを及ばせる機会となった。15名程度だったので互いに話しやすく、時に質問もまじえつつなごやかに活発に進行していった。

立場としては志望者側の人間として参加していた自身にとって、個人的に印象に残った話は、相当なプレッシャーで皆が口をそろえた「社会人としての基礎力を学ばせる余裕がないので新卒ですぐに舞台芸術の世界にとびこむリスクは非常に高い」ということと、一方で、日々“歩兵”を欲する現場としては若いうちに飛び込んできてくれるほうが育てられる、ケータリングや票券等いつしか皆“その道のプロ”となって欠かせない人材となっているといった話。また、現場に職業者として出る前に経験しておくべき未経験のことや苦手なことを、インターンとして携わることで経験させておく意図的な“あえてのミスマッチ”があるということ、インターンの期間がその人にとって「この仕事に本当に就くか、就けるのか」をじっくり考える時間となることなどだった。これらは既に現職の方々・インターンシップを受け入れる側としての視点をもった方々だからこそ出てきた話だったので、なるほどと思う部分が多々あった。

参加していてなによりよかったと思うのは、その場に集まったのが制作者だけでなくまた志望者だけでもなく、芸術支援に携わる立場の方から劇場・カンパニー・アートフェスの現職の制作の方、舞台制作を志す方と、複数の立場の人だった点である。これにより広い視野で多角的にインターンシップの現状・課題を捉えることができ、約2時間半という短い時間ながら舞台制作インターンのよりよいあり方を探り、各人で舞台制作のインターンについて改めて思いを馳せる実に充実した濃密した時間を過ごすことができた。