こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子、また独断によるツッコミなどをお届けしています。

 

前回のお話:

 

 

 

その日の撮影で私がやる事は、ただまっすぐ歩いて行き、交差点に着いたら向こう側に渡れ…というものだった…しかしなるべくなら交差点は渡りたくない…チャイナタウンでは、信号が青でなくとも人は平気で道を横切っていくし、車の運転も荒いからだ…しかし幸い、その交差点に着く前か、着いても赤信号を待っている間に大体「カット!」となった

 

その道を歩いて行く時に、向こうから走ってくる二人組とすれ違う…というか、勢いに押されて道を譲る…その二人組は主人公と、もう1人のオッチャンである…すると今度は警察官が走って2人の後を追って行くので、またもや飛び退いて道を譲る…というシーンだった…一体なぜその二人が警察から走って逃げているのかは、我々にはさっぱりわからない…が、誰かが突然ダッシュで走って行くのを見たら、やはり飛び退いてそこから逃げるのがニューヨーカー…しかも特にその後を警察が追っている時はなおさらで、そこからできるだけ遠くに逃げる警察が万が一発砲した時に、それに巻き込まれないようにする為である

 

それにしても、このプロダクションの仕事をするのは、実はこれが3度目だが、3回共主人公とすれ違う?!…って、ストーカーかい?!

そのもう一人のオッチャンの顔に、どこか見覚えがあるような気がしたが、ここだけの話白人の男性は私には皆同じに見える

ある時、元の位置にある位置に戻る時に、そのオッチャンと目が合い、彼はにっこりと笑う結構いい奴である…が、その笑顔を見た時に彼が誰だか気がついた?!…何と、若い頃は美貌で有名だった美形イケメン大スターではないか?!…それが、今や立派な中年のオッチャンに?!…まぁ、今でもそれなりにイケメンではあるけれど、額はかなり広くなり、かつてはスレンダーだった体型もどっしり貫禄のあるオヤジ体型に…その時はスーツのパンツに白ワイシャツ…というコンサバな格好だったので、余計普通のサラリーマンのオッチャンに見える…もっとも彼はルックスだけではなく実は演技力もある優れた俳優さんなのだが、かつてはそのルックスだけをフィーチャーした様な映画も作られたほどの美貌だったのに…あぁ、諸行無常

実際、笑顔を見るまで私も彼が誰だかわからなかったのだが、逆を言えば、その笑顔の中に、かつての魅力はまだ健在だった…

 

その同じシーンを、カメラのアングルや方向を変えて何度か撮る…朝方はまだ人通りも少なく、比較的スムーズに行ったが、段々時間が経ち、10時を超えると途端に人通りが多くなり、チャイナタウンのカオス全開…とにかくチャイナタウンの本物の住人達は、おそらく撮影慣れしているのだろう…そんなもの気にしていたら、こっちはどこへも行けんわ!…ってな感じで「ここは通らないで」と言われても、それを無視、あるいは英語がわからないふりをしてそのままガンガン乱入してくる…その対策で、何人か中国語の話せるPAも雇われているのだが、私はそれは言葉の問題ではないと思う…確かに、自分達の街なのに、絶えず「ここを通るな」と言われたりすれば、「ふざけんな!」という気にもなるだろう

ただ、その本物の通行人が乱入して来たが為に「カット!」という事が増えると、やはりこちらもイラっとしてくる

 

ある時、またADに「次のショットはここから歩き出して」と言われた場所に立っていると、PAが私に話しかけてきた…そこは高架線の下で、騒音もすごかったのだが、そのせいなのか私には彼が何を言っているのかさっぱりわからない…そこで「Excuse me?」と聞き直すと、今度は「ここに走り込んでくる人達がいるので、ここには立たないように」と言うのがはっきり聞き取れた?!…最初、また場所が変わったのか?と思って、「さっきADにここからスタートしろと言われたのですが?」と言うと、「BGとして、ここから歩けと言われたんだね。」と言って、そのまま彼はどこかへ行ってしまった…その時ようやく、私にも何が起こったか把握できた彼は私を、チャイナタウンの無関係なオバチャンが、単にそこで見物していると思っていたのだ?!…最初何を言われたのか私にはさっぱりわからなかったのも当然である…それはおそらく広東語だったのだ…まぁ、確かにこっちはチャイナタウンのオバチャンの役として、そう言う格好をしているのだが、少しでも現場の様子を見ていれば、私がずっと何回もそこをBGとして歩いていたのは見ているはずである…そもそも、わからないならまず、「あなたはBGですか?」と一言聞けや!…このように、スタッフにも、チャイナタウンに限っては、アジア人BGを本物の通行人と間違って失礼な態度をとる…という事が頻繁に起こるのが、本当にムカつく…

お前等、ハーレムで黒人のBG達に同じような事するか?!…いや、絶対それはないはずだ…

 

やがて、またカメラの位置を変えるのか、しばらくブレイクがあったので、またトイレに行き、戻ってみると他のBG達が誰もいない?!…これはひょっとしたら私がトイレに行っている間に、皆んなホールディングに行ってしまったのか?…と思って、ホールディングに行くと、皆んなそこにいるではないか?!…そこで私もそのままそこに居座ってしまった…ひょっとしたらまた現場に呼ばれるかもしれないが、その時はその時…少なくとも朝からかれこれ6時間ぐらいずっと立ちっぱなしだったのだ…

 

すると、その後のシーンには、我々よりも後の遅いコールタイムの人達が呼ばれ、我々はその間ランチとなる!

 

 

もうランチを食べれば、後はいつ帰ってもいいや…と思っていたら、本当にランチの後少ししたらWrapとなった…結局その日は1時間だけオーバータイム…まぁ、ギリギリ、朝のLift代はそれでカバーできたのでよしとしよう…撮影そのものは、案の定ストレスものだったが、ホールディングで友人達とずっとおしゃべりしていられたのは楽しかった…

BGの人達の中には、仕事そのものより、その社交の方を楽しみにしているも多い…と言うのも、何だか今ではとても理解できるような気がした…(仕事しろよ!)

 

 

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