こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

 NYアクターの生活、オーディション、現場での様子、また独断によるツッコミなどをお届けしています。

 

松本で半日オフになったので、一人観光する事にした。

そしてまず訪れたのが、松本城…(過去記事参照)

 

そこから、お目当てのカフェに行ったところ、何といきなりクローズ?!

そこでホテルに戻るつもりで、Google Mapを見ると、この割と近くに松本市美術館があり、そこで「草間彌生展」をやっているのを発見?!

 

 

そこでそんな近くにいるのも何かの縁…と、行ってみる事にした…

美術館の前には、彼女のポップなオブジェがお出迎え?!

 

 

 
このユニークでカラフルなセンスは、最初は「何でここにこの色?!」と思ったりするものの、しかしそれ以外の色は?!…と言えば、その色以上に効果的な色は考えられない?!…また、作品の向きによって、印象が激変?!
 

正面玄関は、天野水玉…

 

実は私は現代美術にはあまり詳しくなく、その時も正直言って、「草間彌生の大ファン」というわけでもなかった…彼女が世界的に有名な芸術家だ…という事と、あの奇抜なファッションや鬘、そしてヴィトンとのコラボの水玉模様…くらいは知っていたものの、おそらくNYで「草間展をやっている!」と言われても、わざわざ見に行ったかどうか怪しいものである…しかし、なぜかこの日、この時たまたま行くきっかけができた…この運命の偶然を、後で大いに感謝する事になる…というのも、実際に彼女の作品を目の当たりにして、いろいろな意味で、非常に感銘を受けたからだ

 

作品の数は決してそんなに多くなかったが、「草間彌生 − 魂のおきどころ」というタイトルの示す様に、彼女の代表作だけではなく、彼女の原点と言えるような作品が展示される…それによって、私も彼女の別な面を知る事ができた

 

中の展示物は、1点を除いては撮影禁止だったので、固有名詞に弱い私は作品のタイトル名等はどうしても思い出せない…また、解釈の違いや思い違いもあるかもしれない…しかし、違っていようが何だろうが、「私はそう受け取った」という事には変わりないわけで、それが許させるのがアートのいい所だろう…

 

私が一番好きだったのは「Life: 命」という、ニョロニョロのお化けの様なのがずらりと並んだ作品だが、このニョロニョロの一つ一つが実に生き生きしていて、またそれぞれひょうきんで愛らしくさえある…その幾つかとは明らかに目が合うのだが、特に怖いわけでもなく、文字通り明るい生命力に溢れた作品である…どちらかと言えば、彼女の作品には「正気と狂気スレスレ」といったイメージがあったので、こんな楽しいオブジェも作っていたのか?!…というのに少し驚いた…そして、そのまま何の警戒心もなく、入った次の部屋で度肝を抜かれる…それはその部屋そのものが作品で、鏡張りの暗い部屋の中央にシャンデリアが1つ…しかしその部屋一面に貼られた鏡のせいで、それがいくつにも分裂し、またその背後の闇がこれまた底なしに続いているよう…これは彼女自身の心の闇でもあるのだろうが、同じような闇を抱える者には、そこに引き込まれたら出られなくなる様な気がして滅茶苦茶怖い…実際、ビビリの私には、この作品はかなり怖く、ほうほうの体でその部屋から逃げ出した…その為タイトルさえ見ていない…

 

実は、こうした鏡の効果を利用した作品はもう1つあり、別の部屋の「天国への梯子」も、暗闇にネオンの梯子…というような作品だが、その上下に鏡が貼られているので、梯子は上にどこまでも伸び、また下にもどこまでも伸びて行く…まさに上は天国まで、下は地獄の底まで続いていそうな梯子…ただ不思議な事に、こちらはさほど怖いとは感じなかったのだが、あれは何だったのだろう…

 

そこを出て我々を迎えてくれるのは、今度は彼女の詩(?)…実はそのタイトルも覚えていないのだが、「自分はもっともっと上にいきたいのだが、どんなに足掻いてもそこには中々辿り着けない…どうすればそこに行けるのかもわからないし、その域にたどり着くには、自分の命は短すぎる様な気もする…」といった、芸術家なら誰しも抱く葛藤と絶望が書かれた彼女の本音…それを読んで、思わずその場で号泣ビジュアルの作品にではなく、彼女の言葉の方により心を動かされる…というのも申し訳ない話だが、まさにその時自分も似た様な思いを抱いていたのかもしれない…これで草間彌生という天才的芸術家が、より身近な存在となった…そう思ってみると、それまで「はぁ?!何のこっちゃ?」と思っていた彼女の作品も、実際に面と向かって見ると、さまざまなメッセージを訴えかけてくる

 

もう一つ、やはり「部屋」そのものが作品…というものがあり、これもインパクトが強かった…小さな小部屋に一人ずつ入り、その部屋に入るといきなり背後でドアを閉められる?!…その部屋は「小さな部屋」だと思ったもだが、やはり四方に鏡が張られ、そのせいで無限の空間の様な広がりと心許なさがある…その真っ暗な空間に、やがて無数の電球が点る…その電球の色は赤、オレンジ、黄、緑、青…とカラフルな原色オンパレードだが、どの色がどれだけ点るかは、刻々と変化する…それが青や緑系が主だと心が落ち着くが、そこに黄色がや赤が混じり始め、やがては赤がメインになる?!…そうなると、さっきまで暖かな暖色だと思っていた赤が、何とも不安を掻き立てる物騒な色に見えてくる?!…色によって、人間の心理とは、こんなにも変わるものなのだ…というその体験こそがアート…だから人によって、きっと受け取り方はそれこそ千差万別なのだろう…間も無くドアが開き、外の世界へ開放される…その時間は20秒くらいだというが、かなり濃い20秒だった…

 

そして最後の部屋には、かの有名な巨大カボチャこれだけは写真撮影OKだった…

 

 

 

 

たまたまオフの日で、たまたま近くに居たから、行くことができたこの「草間彌生展」…これもまた、私にとっては奇跡的な巡り合わせだったのかもしれない…

 

 

★過去記事★