こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子、また独断によるツッコミなどをお届けしています。

 

先日、チャイウナタウンでの映画のBG仕事に朝早く辿り着いたお話をした(過去記事参照)が、それはチャイナタウンのシーンにしては小規模で、最初のコールタイムのBGの数は20人…

ワードローブのチェックが終わると、その20人を2回に分けてバンに乗せて撮影所に運ぶ…そしてサテライト・ホールディングに着く前に、朝ごはんをピックアップする…そこではフレッシュジュースも作れたので、まずビーツジュースを作って一気飲みし、さらに定番朝ごはんに、フルーツとヨーグルト、コーヒーをゲット…そしてサテライトホールディングに歩いて行った…と思ったら、私がBGだと思ってついて行ったのは実はクルーで、いきなりトラックの方へ?!サテライトちゃうんかい?!…そこで焦ってもう一度元にもどると、運よく別のPAに会え、道を教えてもらって何とかサテライト・ホールディングに辿り着く…ところが、何とそこは仏教の寺なので、中では飲食禁止…特に肉食は禁止だという?!じゃあ、この朝ごはんを一体どこで食べろというのだ?!…というか、飲食禁止のサテライトって、意味ないやろ?!…PAは「外でサクッと食べ終わってから中に入ればいい。」などというボケた事を言い、「Makes sense? (解った?)」と言う?!…外はただの道で、しかも気温は氷点下近い寒さである…これには思わず「Actually NO. (実際問題、できんわ。)」と答えると、その兄ちゃんはちょっと怯んだが、それ以上何も言わず、その場を離れて行くおそらく自分でも無茶苦茶言ってるなぁ…と解っていたのだろう…そこへ、他のBG達も到着したが彼らは、そのPAの言葉は全く無視してどんどん中に入って行くし、中ではすでに皆食事している?!…私は仏教徒ではないが、奥に祀られた仏像に「すんません、私等これから長時間労働を強いられるんで、ここで食べとかないと身体持たへんのです…サクッと食べますので、どうかお見逃し下さい!」と、その仏像から一番遠いところに座り、ダッシュで朝ごはんをかき込んだ

また、こう言う時に限って、スクランブルエッグの他に、ソーセージと細切れのステーキのタンパク質強化メニューにしてしまったのだが…

 

 

それを食べ終わった頃、皆セットに呼ばれる…幸い私は屋内に配置された…細い鰻の寝床の様な建物内にあるフードコートのカウンターで、ヌードルを食べている…という設定らしいが、そのヌードルは何と消えもの?!…つまり、「シーンの間実際に食べて」というのだ!…こういう、文字通り「美味しい」仕事も時々ある(過去記事参照)のが嬉しいが、今回はさらにそれを実際に買うので、好きなヌードルを選んでいいと言う?!…ところが、その店のメニューは中国語で、英語の説明はあるものの、イマイチよくわからない…そこでその店のお姉さんに「一番人気なのはどれですか?」と聞くと、「牛筋面」というのを勧められた…これは「牛筋の様な形をした」太めの麺と胡瓜の千切りが入った冷麺で、ピリッとスパイスが効き、さらにクミンの味と微かに甘酸っぱい味がアクセントになっていて、中々美味しかった…そのお姉さんによると、中国北部で人気の麺なのだそうだ…撮影中だったので、写真は撮れなかったが、今の時代、アジアで食べ物の写真を撮らずにただ食べている奴なんているか?!

それを撮影の間、実際に食べていろというのだが、これが中々のボリュームだし、おまけに撮影の時には、同じ事を何回も繰り返さなければならない…それでガチに食べると胃がもたないし、しかもそのすぐ前に朝ごはんを食べたばかりで、はっきりいってお腹は全く減っていないのだ…そこで、その麺を大きくかき混ぜる…という派手な動作を繰り返し、実際に食べるのは胡瓜や小さな麺の切れ端…それを口は大きく開けてバクバク食べているフリをする…それでも多分4分の1くらいは食べたと思うのだが、麺は一向に減らず、心なしか膨張している様な気もする?!…そんなに汁気のない麺だったし、冷麺なので冷めても食べられたのだラッキーだったが、段々そのスパイスに飽きてきて、食べるのが苦痛になってきた…それでもさも美味しそうに食べている演技をし続けねばならない…

 

さらに、そこで「アジアの喧騒」のイメージが欲しかったらしく、「アドリブで北京語や広東語が喋れる人はどんどん喋って」と言うのだが、もとより私には中国語は喋れない…実はその時私は同じく日本人のBGとペアになっていたのだが、「じゃあ、私等は日本語喋ったろうか?」と言い合ったりする…のだが、カメラがすぐ側を通っていく時は、やはり躊躇してしまう…まぁ、アメリカ人には中国語も日本語も同じ様に聞こえるのだろうが、万が一観客に分かる人がいて、「何でここで日本語喋ってるやつがいる?!」なんて突っ込まれたら申し訳ないではないか?!…などと、ついつい気を遣ってしまう私達はやはり日本人である…

そもそも、私達は「お腹を空かせて、カウンターで麺をかき込んでいる」のではなかったか?!…そういう時は、余計なお喋りなんかせず、黙ってサクサク食べるもんやろうが?!…とつっこんでいる内に、ようやくそのシーンは終わった…

 

その時、目の前にはほとんど減っていない麺…それをそのまま捨ててしまうのは、あまりにも申し訳なかったので、私はそのままお持ち帰りにした…一応それはちゃんとプロダクションによって購入されたものだし、お店の人にいても、喜んで食べてもらう方が嬉しいだろう…ちなみに持って帰った冷麺は、後で夫と二人で美味しく完食した

 

その次のセッティングが終わる前に、クラフティに行く人達がいたので、私もついて行き、そこでお茶や甘いおやつももらってくる…お腹は全く空いていなかったが、スパイシーな冷麺を食べ続けていたので、甘いものが欲しかったのだ…それをゲットしてサテライト・ホールディングに戻ると、今度はメインのホールディングに戻っていいという?!…という事は、私達もうWrap(終了)?!

 

それからまたバンでメインのホールディングに戻り、しばらくすると、予想通り私達早朝コールタイム組はめでたくWrap!撮影を始めてからまだ3時間くらいしか経っておらず、もちろんランチは出なかったが、もう例の消え物の冷麺でお腹は一杯だったので、この早い終わりは実に嬉しい!…そして帰りは、送迎車を使わず、そのまま地下鉄でまっすぐ帰宅…どのみち8時間までは同じギャラなので、短ければ短いほど良い…そういう意味ではこの日はラッキーだった…

 

 

★過去記事★