こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子、また独断によるツッコミなどをお届けしています。

 

ライブのパフォーマンスには、多かれ少なかれハプニングがつきもので、それこそがライブの良さでもある…なのでプロの舞台俳優は、大抵のハプニングには対応できる様に、それなりの準備や心積もりをしているもの…なのだが、それでも時々その予想を上回る様なハプニングに見舞われる事がある…そしてそういう時は得てして、誰も助けられず、自力で乗り切るしかないのだ…

 

この「Letter Project」は、それぞれの「手紙を読む」という形式のリーディング公演なので、その手紙の為に一応譜面台が用意されている… 

 

 

その初日に、パフォーマンスを始めてしばらく経ってから、その譜面台が明らかに低過ぎる事に気がついた?!…最初すぐに気が付かなかったのは、「そんなはずはない!」という思い込みがあったからだった…というのも、始まる直前に、私はちゃんとその高さを確認し、わざわざ高くし直したのだ!…それがこんなに低いという事は、私が調節した後に、誰かがまた変えやがったのか?!…しかし、私が1番最初だとわかっているはずなのに、なぜ変える?!…一瞬怒りで頭に血が上るのを感じたが、それどころではない…これは何とか譜面台の高さを直すべきか?!…しかし、私が演じているのは恐れ多くも女皇である…それが、譜面台の足を踏みつけて押さえ、譜面台を引っ張り上げる?!…どう考えてもそれを優雅にやるのは不可能だった

そこで高さを上げるのは諦め、譜面台の角度を少し上に向ける事によって見易くし、これで一件落着…と思いきや、その譜面台がズリズリ下がってくるではないか?!しかも上に向けた台の部分が、気を抜くとガコンと戻ってしまう?!…その前日のテクリハ過去記事参照)の時にはそんな事なかったのに?!…譜面台が下がるにつれて、自分の顔もどんどん下を向いてしまうので、それを避けるためになるべく台を上に向け、それがガコンと下がる度に、また手で支える

何でよりによって本番にこんな目に遭うんや?!…という怒りをそのまま演技に使い、その勢いで一気に乗り切った

 

後で判明した事だが、実はそのリーディングでは1回だけ2人が手紙を読む場面があり、その時に2つの譜面台を使うのだが、どうやらその補助の譜面台がメインと入れ替わっていたらしい…しかもそのセッティングをしたのが、例の素人プロデューサーまたこいつかい?!…翌日からは、始まる前に何度も譜面台を確認する事にしたのは、言うまでもない…

しかし後で気づく…自分で書いた作品やのに、何で覚えてへんのや?!リーディングだから「読まなければならない」と何故思い込んでいたのだ、私は?!

 

そして2日目…譜面台はしつこいほどチェックし、さらに内容の大半も覚えていったおかげか、私のパフォーマンスは比較的平穏に終わったが、他の人達の演技を見ている時、ふと違和感を感じた…そこで顔を上げると、女優さんの1人が、MCのプロデューサーを凝視しているあれ、この人の手紙って、読まれたっけ?!…何と、MCがその女優さんの順番を飛ばして、その次の人をアナウンスしてしまったのだ?!

 

実はこの順番はカテゴリー事に並べられ、それらが自然に次にリンクする様になっている…そういう優れた構成が出来るところはさすがなのだが、本番で肝心の順番飛ばすなよ!…というか、そもそもその間違った張本人が、その間違いに全く気付いていない様なのだ?!…これは他人事ながらヒヤヒヤした…もしこのままMCが気が付かなければ、彼女の手紙は飛ばされたまま?!

そうこうする内に、その次の人のパフォーマンスが終わる…その時、いきなり飛ばされた女優さんは、そのパフォーマンスに対して、キャラクターとしてコメントしながら立ち上がり、譜面台に向かう?!…つまり、MCのイントロを待たずに自力で順番を引き戻したのだ!さすが!…それでMCも間違いに気づき、慌てて彼女のイントロを述べる…かくして、少し前後したものの、全てのパフォーマンスは予定通り行われた

 

そして最終日、今度は私がそのMCの大ボケの犠牲になる…アメリカ人の観客には「推古天皇」が誰かを知っている人などいないので、私のイントロには「7世紀の日本初の女性天皇」という説明を言ってもらっているのだが、何を血迷ったか、MCはそのイントロで「17世紀の日本初の女性天皇」とぬかしやがった?!7世紀と17世紀では、1000年の差があるやないか?!…そもそも17世紀って、徳川幕府の時代やろう?!

 

後から思えば、パフォーマンスに入る前に、「これは17世紀ではなく、7世紀の日本です」とはっきり訂正すればよかったのだが、その為には、一旦キャラクターから抜けなければならない…実は私はその譜面台に近づくところから演技を始めていたので、それにはちょっと躊躇した…それでそのまま始めてしまったのだが、その間も「何とかこれが7世紀という事をはっきり言える場所はないか?!」と、その機会を探し続ける…そしてようやく「そういえば7年前の事を覚えてる?」と推古天皇が、600年の第一回遣隋使派遣が大失敗に終わった時の思い出話をしている箇所で、「あの頃…7世紀の日本には、まだ何もなかった…」と、「7世紀の日本」という言葉を強引に挿入する…しかし、その当時には「Japan(日本)」という名前も、ましてや「○世紀」という概念もなかったのだが…しかし、そこが唯一の年代訂正のチャンスだった…

 

その時改めて、作品の中では、一度も時代を表す記述がない事に気がついた…つまり、イントロで説明してもらわなければ、その時代がいつなのか分からないので、そのイントロで間違えられるともうアウトではないか?!…しかし、これが7世紀の話であることは、実はものすごく重要なのに、なぜそんな他力本願な手段を選んでしまったのだ?!…と、その作者の自分をハリセンでしばきたい思いだった…勿論その際には、間違えたMCを先にしばき倒してからだが…つくづく、今後こういう大事な情報は、絶対に作品の中で実際にキャラクターに言わせるようにしよう…と心に誓った…

 

これ以外にも小さなハプニングは一杯あったが、いずれもそれらを乗り越え、無事千穐楽を迎えることができた…そして終わってみると、あれだけヒヤヒヤさせられたにも関わらず、「やっぱりライブの舞台はええなぁ~!」と性懲りも無く思ってしまう

 

そして、ドヤ顔の楽屋セルフィ

 

(背後に写り込んでいるのは、他の舞台の小道具やケーブル等)

 

ちなみに、この「Letter Project」で読まれた手紙は、私の「推古天皇の手紙」以外は全て本物だったそうだが、多くの人達が私の手紙が創作だと気が付かなかったという?!そもそも英語喋っとるやんか?!…とツッコミたかったが、その現代英語の表現は「翻訳のせい」と思ったのだという…つまり、私の最初の目論見が大当たりした(過去記事参照)わけで、それだけリアルに見てもらえた事は、やはり嬉しかった

 

 

★過去記事★