こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

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アメリカのデトロイトでは先日、自動車業界のビッグ3General Motors (GM)、Ford、 Chryslerの工場で、史上初の一斉ストライキが行われる事となった。

 

 

 

折りしも自分の業界のストも続行中で、ピケットラインにも参加した過去記事参照)私には、とても他人事とは思えない…ストをやりたい人など誰もいない…ここでも何度もお話ししている様に、敢えてその道を選ぶというのには、それなりの理由がある過去記事参照)からだ…

 

ちなみに、映画やTVのストライキのシーンでは、ある日突然労働者達がブチ切れて「ストじゃ!」といきなり工場からぞろぞろ出て行ってしまう…というようなイメージがあったりするが、実は組合のストライキというのは、そんな思いつきのようにある日突然…というものではない

 

それが起こるのは契約書の更新の時で、その交渉が一定期間…場合によっては数週間くらい行われる…その交渉も無制限だとらちが開かないので、「◯月◯日の◯時(大体午前0時だが)までに交渉成立しないときにはストライキを行う」と事前に必ず予告されており、あくまでその期限までに交渉が成立しない時が「交渉決裂」となり、その時に予定されたストライキが決行される…というものなのである…

つまり、「場合によってはストやるぞ!」というのは雇用者側も承知の上で、そのストを防ぐチャンスは前もって雇用者側にもちゃんと与えられているのだ…いやむしろ、「交渉決裂」というのは「スト?やれるもんならやってみぃ!」という雇用者側の意思表示の結果でもある…だから、いざストが始まった時に、まるで災害にでも遭ったかのように、被害者面するのはお門違いである…という事を、知っておく必要がある。

 

また、これはまさしくSAG-AFTRAが相手にしているAMPTPも同じなのだが、雇用者側の巨大企業のCEO達は、いつも労働者側の要求を「Unrealistic(非現実的)」だと言う…が、実際彼らの言う「現実的」なオファーというのは、実は10年ぐらい前の物価を想定したものだったりする?!一体どっちが非現実的やねん?!…別にCEOと同じ額の給料を要求しているわけではない…10年どころか、コロナ禍以来のこの2~3年のえげつないインフレに対応して欲しい…というのが「非現実的」というなら、あんたらの「現実」はどうなっとんねん?!…と言いたくなる…

そしてさらに「要求通りに支払う金はない」と言いつつ、実は自分だけはがっぽり儲けている…というのも、今ではバレバレ…おそらく20年前ならCEOが一体いくら儲けているかは、一般の人にはあまりわからなかったのだが、ネット社会の今はそうはいかない…「金がない」と彼らが言った直後に「じゃあ、この利益は?この増額されたあんたのボーナスは?!」という彼らの収入の具体的な数字が、あっという間にネットで拡散していたりするのだ…

 

前にも言ったが、自由経済による資本主義社会では、会社のトップが稼ぐ事自体は決して悪いことではない…問題は、特にコロナ禍以来、経済的困窮を強いられている人達が激増したのに、CEO達の給料、つまり巨大企業の利益自体は増大している事である…しかしそれなら「金がないからできない」などと見えすぎた嘘をつかず、搾取するのもいい加減にして、その利益の分を少しは還元せんかい!…と言うのが、労働者側の言い分なのである…

 

ちなみに、最初の要求額というのは、いずれ値切られる事を前提としているので、その分割り増しで出される…というのは、これはネゴの基本である。

これだけ賃上げ頼んます。」「いや、そんな事したら店潰れまんがな…この辺でどうでっしゃろ?」「いや、それでは生活できまへんがな…やっぱり最低でもここまではもらわんと…」「そんなら、このくらいにして、こっちのベネフィットもつけて、どうや?」「しゃぁないな…次の時には、もうちょっと値上げしてや!」…という風に、お互いができるだけ歩み寄って合意に至る努力をする…というのが、そもそも交渉というものではないか?!

それを最初から「非現実的で、論外!」と撥ねつける…というのはいくら何でも、あまりにもアホすぎるので、おそらく一旦は拒否して相手の出方を見る…というのがセオリーなのかもしれないのだが、実際にストが行われればどれだけの損害が出るかは、おそらく事前にわかっている事だろう…(それこそAIに聞け!その危険を冒してもストを起こさせてしまう…という事にメリットがあるとは、私にはどうしても思えない

 

しかも、これら自動車産業は、ただでさえ競争の激しい業界である…はっきり言って、あんたらのところが車作らんでも、日本や韓国、さらに最近はインドから、もっと性能や燃費が良くて安い輸入車が目を光らせてマーケット拡大のチャンスを窺っているし、テスラやベンツのような電気自動車がこの機会に一気に広まるかもしれない…はっきり言って、あんたら政府のテコ入れがなかったら、とっくにその競争から脱落してたんやで…っていう、自分の立場わかってる?!…と突っ込みたくなるのは私だけではあるまい…

 

実はAMPTPに対するSAG-AFTRAのストでも同じ事が起こっている…その1つのワーナーブラザーズが四半期に2~3億ドルの損失を計上…はっきり言って、もしSAGの契約書を導入して出たであろう損失3年分の方が、このたった3ヶ月の損失よりはるかに安かっただろうに…という事を、なぜ誰も計算しなかったのだ?!…いや、もし誰も考えなかったとすればあまりにアホすぎるので、多分敢えてそのコースを取ったのだろう…と思いたいが、そんな洞察もできない人が実際にトップで数十億ドルレベルの決定をしている…というのが、一番怖いところだ…

 

ストを引き起こすのは、実は労働者だけではない…実はCEO達もそのストを引き起こした原因である事を忘れてはならない…

 

 

★過去記事★