こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子、また独断によるツッコミなどをお届けしています。

 

前回のお話:

 

 

チャイナタウンでの屋外撮影というのは、殊の外チャレンジングで、忍耐力が試される…これは我々BGのみならず、クルーのPA達も同じである…

何せ、PAに「撮影中はこの道を通らないで」と言われても、チャイナタウンの爺さん婆さん達は、そんなもの、はなから無視して、平気でガンガン乱入をかけてくるからだ…もっとも、その様子を観察していると、どうも非は双方にある様だ…というのも、PA達は白人の通行人には「すいませんが、撮影中だけここは通らないで下さい。ありがとうございます。」と丁寧に頼んでいるのに、アジア人のオバチャンには「通るな!」と偉そうに言うだけそんな風に失礼な態度で言われたら、私だって「何や、こいつ?!」とそのまま無視して行くかもしれないせめて「Please」とか「Thank you」とかもう少し丁寧に言えんのかい?!…そもそも、この通りは天下の公道なのだ…そこをプロダクションはあくまで使わせて頂いているのだから、その住民に対しては「ご迷惑かけて、すいませんねぇ~」と、もっと遠慮せんかい?!

またチャイナタウンではしょっちゅう撮影が行われているので、その住人達はその度に通行が制限されるし、店によっては営業妨害…結構「はっきり言って迷惑!」と思っているのかもしれない

 

さらに、チャイナタウンのシーンにはアジア人のBGが大勢雇われるのだが、時にはPA達にも、本物のチャイナタウンの住人とアジア人BGとの見分けがつかない事もある?!…アジア人は皆同じに見えるから?!…スタンバイしていると、アホなPAに「ここは通るな!」とセットから追い出されそうになる度に、我々BGの忍耐力も大いに試される

 

実は、その見分け方は結構簡単である…我々BGは絶対に目立ってはいけないので、黒っぽい色や、アースカラーと呼ばれる、緑や茶色などのくすんだ色の服を着るように言われるし、派手な柄ロゴのあるものは御法度である…しかし、本物のチャイナタウンの住人達は、そんな地味ぃなしけた色など着ない皆赤とかピンク、紫といった、ど派手な色や、大きな柄ロゴがデカデカと書かれた服をガンガン着ているのだ!…つまり、アースカラーなんて地味な色を着ている奴は、BGのフェイク住人だけである…

 

とはいえ、その日は道端でひたすら出番待ち…ずっと待っている私に、ADもかわいそうに思ったのか「まみきむの出番はもうすぐだからね。」と慰めてくれるのだが、それなら出番の前までホールディングに帰してくれ~!…と思いつつ、ひたすら待つ…しかも私の場合いつ呼ばれるかわからないので、トイレにも行けない!…ある時、意を決してトイレに行き、ついでに隣のクラフティでお茶をもらって戻ると、向こうから皆がぞろぞろ移動してくる?!…どうやら撮影が終わって、次のシーンの場所に移動するようである危ねぇ~!もし5分遅れてたら、置いてきぼりになって、怒られる所だった

 

慌ててついて行ったが、結局別な場所に移動して、別な道端で待たされただけ?!

その時、「これはひょっとして、私使われへんのちゃうか?」という嫌な予感がした…また私の嫌な予感は、かなりの確率で当たるのだ…今回もその例に漏れず、そのシーンが終わったらいきなりランチブレイクに突入…ホールディングに戻って、次の衣装に着替えるように言われる後でまた屋外シーンに戻るから、また着替えなければならないが、この後屋内のシーンに移るから…というが…屋内のシーン?!聞いてへんで!!!

 

ランチは外のフードトラックから、いくつかの選択肢から選ぶ形式…例によってクルーが終わるませ我々は列を作って待つ…が、ようやく順番が来た時、PAがケイタリングの人に「関係者かどうか確認するように」と言う?!…何のこっちゃ?と思ったら、なんと全く無関係なチャイナタウンの本物の住人達が、ちゃっかりそのランチの列に並んでいたと言う?!…そして関係者でもないのに、何食わぬ顔をしてランチをもらおうとした…と言うのだから、本当にたまげた…さすが、厚かましさのレベルが違う

もっとも、これはうっかり勘違い…と言うのではなく、どうも確信犯っぽい…おそらくそれがプロダクションのフードトラックである事を知っていて、そこにアジア人のBGがわんさか並んでいる時には、平気で紛れ込める…と知っての事だろう…それだけしょっ中撮影が行われるし、ひょっとしたらBG経験者なのかもしれない

 

ともかくようやく座れ、ランチを食べて、少し人心地がついた…ちなみに私が選んだのはBBQスペアリブに、デザートはマンゴームース…

 

 

ランチの後は屋内シーンだと言うのだが、私のもう一つの衣装は「通行人」?!屋内に通行人というのはないやろう?!…と言うことは、私はこのシーンには使われないのかもしれないそれならそれでええわ…と、とりあえず「通行人」衣装に着替えて、そのまま待つ…

 

その屋内シーンは大勢の警察官が登場するようだが、そのNY警察の制服は、ワードローブから貸し出される事もあるが、プロのBGの中には、衣裳用自前のNYPDユニフォームを持っている人も大勢いる…その自前のユニフォームを持っている事が雇用条件になったりもするからだが、そんなんどこで買うねん?!…そもそも警察のふりをすることは違法である…なので、外を移動する時は、その制服姿の人達は必ずその上に何か着て、すっぽり制服を隠さねばならない…

しかし、ベテランのBG曰く、20年くらい前は、プロダクションの紹介があれば、本物のユニフォームが割合簡単に変えたのだという…今はもっと厳しくなっているはずだと言うが…

しかし、そのユニフォームも、シャツとパンツ、ジャケットの他に、NYPDのワッペン(これは確か4箇所くらい)、帽子、靴、さらに警官のバッジ、そして細々したものを指すベルトとガンベルト…と全部揃えるのに1000ドル近くかかかると言う…さらに、制服は冬服と夏服がある…

そしてそれを運んでいる時に警察の抜き打ち検査が入ると逮捕される事もあるので、制服を持ってくるときは必ずタクシーかウーバーを使うと言う?!…そのプロ根性には本当に恐れ入ったが、制服を持っているとブッキングの確率も大幅に上がるので、元はすぐに取れる…と言う話だったが…ただしこれはあくまでBGの場合である…プリンシパルでは、自前のユニフォームを出せと言われる事などまずない

もちろん、私にそんな根性はない…まぁ、制服には憧れる思いはないわけではないが、実はこのユニフォームは結構着心地が悪く、さらに小道具の銃などはかなり重いと言う…それに、小道具銃を持っている間は、迂闊に外に出られないから、外のクラフティに気軽に行けない…と警官BGはぼやいていた…色々な苦労があるものだ…

 

それにしても、屋内シーンが入っているとは知らなかった…と言うことは、これは明るい内に終わるとは限らない?!…じゃあ、ワークショップ過去記事参照)、間に合うんか?!

しかし、後でまた屋外のシーンに戻ると言う?!…それなら、案外屋内シーンは早く終わるかもしれない…まだ希望はある…

 

どの道その屋内シーンは私は関係ないな…と気楽に構え、ホールディングでのんびりしていたら、いきなりワードローブの人に、「あんた、何してんの?全員行かなきゃダメじゃない!」と怒られるえ?!でも私は「通行人」なんやけど…?

 

この後、また一層忍耐力を試されるような目に遭うとは、その時の私は知る由もなかった…

 

その3へ続く)

 

 

★過去記事★