こんにちは。ニューヨークでやってます、まみきむです。
NYアクターの生活、オーディション、現場での様子、また独断によるツッコミなどをお届けしています。
物凄く怖い映画を見た…
もっとも、これはいわゆるホラー映画ではない…のだが、ある意味、ホラー映画以上にリアルな怖さがあった…というのも、これは看護師のシリアルキラーの話で、さらにそれは現実にあった話を元にしているのだ…
看護師による病院での連続殺人事件…といえば、海堂尊の「チーム・バチスタの栄光」を連想するが、ひょっとしたら元ネタは同じ出来事かもしれない…実はなぜか私は記憶にないが、夫はその頃世間を震撼させた事件の事をよく覚えていると言う…しかも、お隣のニュージャージー州での事件だった…
内に脆さを抱えた勇敢なヒロインをやらせたらピカイチのJessica Chastainと、数々の難役も自然体で演じるEddie Redmayne…この２人の共演なら多分外さないだろう…という私の予想裏切られなかった…二人の見事なアンサンブルは勿論だが、まるでドキュメンタリーのようなリアリティが、これまた怖さを助長する…これはおそらくオスカー候補に行くのではないか？
そのScreeningの後のQ&Aには、Eddie Redmayne登場(左)…映画の中では完璧なアメリカ英語を話すが、生エディはブリティッシュ訛りバリバリの好青年…この落差も萌えポイントである…
（ここから先はネタバレ警告）
看護師のエイミーは心臓に欠陥を抱え、手術が必要なのだが、彼女はまだ今の病院に勤め始めて日が浅く、あと４ヶ月は医療保険が使えない…医療機関に働きながら、医療保険がないので医療が受けられない…という皮肉もさることながら、保険なしに治療を受けた時の医療費の高さも半端ではないのがアメリカ…映画の中でも、ちょっと心電図とって専門医と話しただけで、保険なしだと10万円くらいしれっと請求されるのだが、これは決して誇張でもなんでもない…
しかも彼女はシングルマザー…その医療費と２人の子供達を育てる為に、自分の健康の危険を承知の上で、過酷なICUの夜勤で働く…そんな時、強力な助っ人が現れる…新しくその病院に雇われたチャーリーという看護師…彼は経験豊かで、患者へも親切、しかも性格も良く、おまけにイケメン…まぁ、イケメンはどうでもいいが、おそらく患者受けもいいだろう…また彼はエイミーの状況に同情し、良き看護師＆良き友人として様々な状況でサポートしようとしてくれ、また彼女の子供達も彼にはよく懐いている…それまで孤軍奮闘だったエイミーの前に現れた王子様…と思われたが、その頃から、彼女のICUの患者達が次々に謎の死を遂げる…それらは一見ただの「症状悪化」に見え、その扱いで処理されるが、それらの患者達に深く接していたエイミーは、その不自然さに気がつく…そして、やがてそれが、チャーリーによって人為的に引き起こされたものではないか？！…という結論に達するのだが…
この彼への殺人疑惑が確固たるものになった後が、これまた怖い…チャーリーは本当に優しく、エイミーや子供達にあくまで「良き友達」として接するのだが、その優しさが自然であればあるほど、滅茶苦茶怖いのだ…シリアルキラーというのは、一見非常に「いい人」だったり、「ごく普通の人」に見える…というのは、よく言われる事だが、まさに彼もそのパターン？！…それとも、これは何かの間違いで、真犯人は他にいるのではないか？！…そんな疑惑も抱きたくなる程、彼は魅力的な人物だが、一度だけ「あ、こいつはもう根本的に壊れてるな…」という事が、はっきりわかるシーンがある…その一瞬の変わり様が、これまた見事である…
さらに怖いのは、彼の働いていた病院は、いずれも自分の患者の不審死の原因が彼である事に薄々気付いているし、看護師仲間の間では確固たるものとして噂になっている…にも関わらず、それを警察にレポートした病院は一つも無く、看護師達にも外部に喋る事を禁じ、別の名目で彼をクビにする…看護師が患者を殺している事が明らかになれば、そんな病院には誰も来たがらないからだ…
しかし、医療従事者への需要はいつもハイデマンドなので、彼はすぐに別の病院に雇われ、そこでまた患者を殺し続ける…最終的に逮捕された時も、自分がそれまで一体何人殺しているか、彼自身にも、もはやわからなくなっている…推定では、複数の病院で合計約400人くらい殺している可能性がある…といい、これはシリアルキラーの最高記録なのだそうな…
本当の問題を隠蔽し、バックレを決め込むのは、何も日本だけではないのだ…
この映画を見た後では、「アメリカの病院には絶対入院しとうないわ！」…と思ったりもするが、それと共に、絶えず人手不足…というアメリカ医療現場の抱える闇も浮き彫りになり、そんな中で一生懸命働く看護師さん達への尊敬もひとしお高まる…
Netflixで公開されたばかりの映画だが、お勧めである。
そして見た後には、健康には十分気をつけよう…と改めて思う事だろう…