こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子などをお届けしています。

 

*ちなみに、今回は少し番外編…最近アメリカで起こった事柄で、実はかなり激怒しているので、表現が過激もしくはかなり下品になっている(それはいつもか?)…という事を最初にお断りしておきます。

 

アメリカというのは本当に格差の国である…これは経済格差だけではない

例えば、このコロナ禍においても、ワクチンが導入されるといち早く州民の70%以上接種を達成した、カリフォルニアやマサチューセッツのような州があるかと思えば、未だに30%未満の人しか接種しておらず、去年同様のパンデミックを起こしながらも、依然としてコロナ禍は民主党のデマだと思っているような人が大勢いる南部の州もある…

さらに、セクハラに対しては厳密な対策と対処を州レベルで設定し、過去に起こしたセクハラで知事が辞職に追い込まれるニューヨークのような州があるかと思えば、いきなり中絶を違法にしてしまうテキサスのような州もある…100年前の話ではない。この21世紀のバリバリの現代の話である…しかも、あろう事か、このトンデモ法律最高裁は合憲判決を出したのだから、開いた口が塞がらない…

 

その為に、この9月からテキサス州においては、6週間を過ぎた胎児の中絶は全て違法…なぜ6週間かというと、その頃に胎児の心臓が形成されるからだそうで、その心臓が動いている「命」を殺すのは殺人罪同様…というわけで、この法律は別名「Heart beat law(心臓音法)」とも呼ばれる…

 

 

これは、一見まともな議論の様にも見えるが、よく見ると、この法律は非常に危険な問題を孕んでいる…というのも、これは「中絶を禁止する法律」ではあるが、実質的には「安全で合法的な中絶」を禁止する法律で、その結果女性から選択肢を奪うものだからだ。

 

断っておくが、私は決して中絶を推進するわけではない…私自身は幸か不幸か、妊娠も中絶も経験した事がないので、実体験からは何も言う事はできないが、しかし実体験などなくてもその状況を想像するのは、女性ならさほど難しいことではない…なので、まぁ、個人的には、中絶はやらないですめばその方がいいだろうな…とは思うが、そんなのは当たり前の事で、中絶する本人だってそう思っているだろう…はっきり言って「1回やるとクセになってまた中絶したくなる」とか、「じゃぁ、またちょっと堕してくるわ~」と本気で思って、中絶を繰り返す人などおらんやろ?!…そういう人物像がメディアに流れると、私は「これはオヤジ作のフィクションだな…」と反射的に思う。

 

医療のプロによって「安全」に行われる中絶でさえも、やはり生物学的には無理な事を身体に強いるのだから、母体には負担が掛かるし、ある程度のリスクは存在する…場合によっては、二度と妊娠できなくなる人もいると言う…そして、何よりも心に深刻な傷を残す事は、想像に難くない…好きでやる人などいないだろう…しかし、それにも関わらず一定数中絶を行う人がいる…という事は、そうせざるを得ない事情があるからで、その事情を無視して、中絶だけを禁止しても、中絶そのものは絶対に減らない合法的な中絶の禁止は、危険な違法中絶を増やすだけの事である。

 

中絶を禁止すれば中絶が減る…と思うのは、現実を全く理解していない、典型的なオヤジ的発想である…つまり、遊びまくって男とヤリまくっている若い女が、ヘアサロンでも行く感覚で中絶する…という、いつの時代のフィクションやねん?!という中絶に対する古臭いイメージがそこにはある…ちなみに、ここで「オヤジ的」というのは、中年以降の男性のみではなく、「現実に即さない古臭い固定観念」という意味で、そういう「オヤジ的発想」しかできない女性も大勢いる事は言うまでもない。しかし、その大多数が男性であるのは、その人達は絶対に中絶する当事者にはならないからである。

 

そして、この古臭いイメージは、現実に即したものではなく、男性によって作られた反中絶キャンペーンのプロパガンダだと考えて、まず間違いはない…というのも、そこでは「悪いのは女性だけ」で、その原因を作った男性は全くスルーされているからだ。

カエルじゃあるまいし、女性一人だけでは子供は作れない…それは、たとえ精子だけでも男性の「協力」なしには不可能な作業なのだ…なのに、その結果に対して、女性だけが責められ、「責任」を負わねばならない…というのは、どういう事か?!…要するに「自分(男性)」は責められたくないし、その責任を取る気もないのだ。

 

中絶をする大多数は、実は遊びまくっている独身の若い女性…ではなく、実際は既婚者、そして未成年者だという…つまり、避妊の知識や手段を持たず、また正面切って「避妊して」と言えない立場の女性達が、そこには多く含まれる。

また未成年の中には、父親や兄による近親者によるレイプも多く含まれるという…さらに既婚女性に関しては、もちろん浮気の後始末…というケースもないわけではないだろうが、実はその大変は、相手は夫だがこれ以上子供を育てられないから…というケースだという…そして、夫婦間では「避妊」というのは、中々言いにくいものである

つまり、そこには、止むに止まれぬ事情が隠されている…その事情の方が解決できない限り、中絶そのものが減ることは、おそらくない…そして、その代わりに増えるのは、危険な違法中絶だけである…

 

これは今の所テキサス州だけの法律なので、お金のある人は、他の州に行って安全に中絶を受けることは可能である…しかし、お金のない人達にはそのオプションはない…そして、そういう止むに止まれぬ事情を抱えている人達の多くは、お金のない方の人達だったりするのだ…

 

しかしながら、中絶を完全に無くす方法が、実はないわけではない…それは、第二次成長期に差し掛かった(つまり相手を妊娠させる事ができる)男子全員にVasectomy(精管切除、通称パイプカット)を義務付けるである…これは実は元に戻せるらしいので、その男子が子供を持つのに十分な経済力を持ち、親となるに十分成熟した時点で、それを元に戻すのだ…こうすれば、未成年者の妊娠や、望まない妊娠を100%…は無理でも、その大半を確実に防ぐ事ができる。そして、違反者の男性には、これまた厳罰を施すのはいうまでもない…

 

とんでもない事?!冗談言ってはいけないアフリカの多く国では、若い女性達に似たような手術を行っているではないか?!…クリトリスを永久に削除したり、ヴァギナを縫ってしまう事に比べたら、パイプカットくらい(しかも戻せるし)かわいいもんである…何も近代医療では麻酔なしでやれと言っているわけではないのだ…まぁ、問題は医療費がかかる事だろうが、はっきり言って、中絶だって保険でカバーされていないのだから、女性達は自腹切って払ってきたのだ…同じ事ではないか?!あるいは、男性の事なら、保険が適用されるかもしれないバースコントロールのピルは保険適用外でも、バイアグラには保険が効くというではないか?!

しかしこれには、一旦パイプカットを戻された成人男子の行動は規制できない…というマイナス面がある…そこで、プランBである。

 

もしあくまで中絶禁止法を実行するなら、その中絶された子供の母親だけではなく、父親もその処罰対象にするべきである。当然のことだ…妊娠は一人ではできないのだから…そして、現代科学では、父親の特定はDNA検査で簡単にできる。

さらにバースコントロールへのアクセスをより簡単に(つまり安く)し、同時に学童児への性教育も徹底させる。これは女子だけに教えるのではダメで、男子生徒にもそに因果関係…つまりお前の性衝動と行為の結果がこういう事を引き起こすのだ、という事を徹底的に叩き込むそれで萎える様な奴は、父親になる資格などない。

 

そして、経済的なチャイルドサポートを増やす…もし経済的な支援だけでも十分にされているなら、女性達も安心して子供を産み育てる事ができ、既婚者が中絶しなくて済むではないか…中絶を取り締まるお金があるなら、そちらに回した方がいい。

 

繰り返すが、テキサス州の中絶禁止法は、現実を無視した悪法以外の何者でもなく、危険な違法中絶で多くの女性達の命が失われる前に、すぐに撤廃されるべきとは思う…が、もしそれが叶わないなら、せめて男女平等にするべきだ今は21世紀なのだ!

それによって、中絶そのものは減らないかもしれないが、ビビリの男達への行動規制には、少しは役立つかもしれない