こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子などをお届けしています。

 

映画の中のDiversity過去記事参照)は、何も人種や性的嗜好だけではない…今シーズンの映画に中には、年齢差別に挑戦した作品、すなわち、オッサン達やオバチャン達が主役として活躍する映画が注目を集めている…もちろん、それらのオッサンやオバチャン達は、いずれもAリストのスター達ではあるものの、中年過ぎると途端に脇役や端役にやられがちなハリウッドでのこの動きは、嬉しい限り…その中から特に目についたお薦め作品をご紹介したい。

 

Let Them All Talk

 


まずオバチャン達が大活躍する、この「Let Them All Talk」では、メリル・ストリープ、ダイアン・ウェイスト、キャンディス・バーゲンといったベテラン大女優が競演し、文字通りしゃべくり倒す…監督はスティーブン・ソダバーグで、彼の作品はしばしインプロ主体で作られるので有名だが、この作品も、役の設定と大筋のプロットだけが決められていたものの、台詞は皆、俳優のインプロから生まれたものである…そのおかげで、台詞は生き生きした自然な会話となる…と言うのがインプロの効用の1つではあるのだが、これははっきり言って俳優によって向き不向きがあるインプロの方がセリフを覚えなくていいから気が楽だ…と言う俳優もいれば、何を喋るか、また使う語彙が本当に適切なものなのかどうか…という事の方が不安になり、つい当たり障りのない事しか言えない…と言う俳優もいる…

 

ちなみに、私自身は、エクササイズやリハーサルなどでのインプロは結構好きな方ではあるものの、本番もインプロ…と言うのにはやや抵抗がある…と言うのも、やはり自分のボキャブラリーに自信がないので、脚本家の厳選した言葉を使う方が、思い切った芝居ができるからだ。

脚本家の仕事を舐めてはいけない…脚本家の書いた台詞は、やはり厳選された最も効果的な言葉なので、俳優がその場で本能的に選ぶ言葉が、必ずしもそれらより優れているとは限らないのだ…かくいう私自身も、インプロの後、しばらく経ってからの方が「ああ言えばよかった!」とより良いアイデアが浮かぶ事が多い

 

おそらくメリル・ストリープやキャンディス・バーゲンは、脚本家に台詞を与えられた方がもっといい仕事をしたのではないか…という気がしないでもない…対して、ダイアン・ウェイストは、本人もインタビューなどで、「インプロはめちゃくちゃ楽しかった」と言っているだけあって、その存在感はダントツだった…彼女はおそらくセリフを与えられてもちゃんとできる人だから、こんな風に両方得意な俳優さんもいるわけだ…

 

それらの熟女達が、対話を通して過去と向き合う…といった、いささか地味ぃなストーリーではあるものの、やはりベテランの実力者達のやりとりは、やはり見応えがあったし、舞台はこれまた本物の豪華客船上…その為、どうしても出演者は白人中心豪華客船の客のほとんどは白人高齢者なのだ…)になりがちだが、主要人物にアジア人のゲンマ・チャン(Crazy Rich Asiansでお馴染み)を起用するなど、一応Inclusive過去記事参照)にも気は遣っているようだ。

アクションやセックス、特撮に頼らず、実力女優達のやり取りだけで見せる…こう言う大人の映画がもっと増えてもいい…と言う気がする。

 

(その2へ続く)

 

★過去記事★