こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子などをお届けしています。

 

昨年から、撮影現場で働くBGアクター達にも、オンラインでのハラスメント講座を受ける事が義務付けられるようになった。そのハラスメントの中でも、特にセクハラに重点が置かれているのは、おそらくMeeToo運動のおかげである。

それは毎年受けねばならないのだが、コロナのせいで当分現場には戻らないだろう…と、実は期限が切れてもそのままにしていた…しかしユニオンの安全ガイドラインが設定され、多くのプロダクションが撮影に戻りつつあるので、近い将来のためにも、アップデートした講座を受ける事にした。

ちなみに、このオンラインのセクハラ講座は、約1時間くらいかかるので、後からその1時間分のギャラが支払われる事になっている。

 

仕事場でのセクハラを防ぐためには、まず何がセクハラなのかを学ぶところから始まる…その範囲は、いわゆる「触るなどの痴漢行為をされる」「性的関係を迫られる」…といったクラシックなセクハラから、「卑猥な冗談を言う」というようなVerbal(有言な)セクハラ(ちなみにこれにはエッチなメールやテキストを送る…なんてのも含まれている)、さらに、「ポルノ写真等を見えるところに提示する(PCのスクリーンセイバーも含む)」というNon-Verbal(無言の)セクハラまで、かなり広範囲…中には、これまで冗談の範囲として受け入れられていたものも、今ではガチの「セクハラ」扱い「セクハラ」の定義も年々進化しているわけで、私はこれはいい傾向だと思う。「これでは冗談も言えない…」と文句を言う人もいるが、そう言う冗談は元から言わなくていい冗談である…そもそも逆にそう言う冗談しか言えない事自体が問題だと知るべきだ…

要するに、それを見聞きした人が不快に思う事は全てアウト…だと思った方がいいわけだが、だからと言って何も全てにビクビクする必要はない…実は、それらの行為がセクハラと認定される一線がちゃんとあり、それを超えると「セクハラ認定」となるのだ。

 

まぁ、他から言われる前に察してやめる事ができる、もしくはそんな事は最初からしない…と言うのが一番だが、中にはそういう気遣いが一切できない人や、悪気はないがそれによって誰かが不快に感じるとは思いもしなくて、知らずにうっかりやってしまう…というケースも、場合によってはあるだろう…それを知らなくても、やったら即リポートされるか?!…というと、実はそういうわけではない。けれどそれによって嫌な思いをした人が、それを表明し、「やめてくれ」と言っているのにもかかわらず、なおかつやり続ける…というのがアウトで、この時点から「悪気のない冗談」は、「セクハラ」として認定されるわけである。「相手が嫌がっている事をやり続けてはいけません」というのは、幼稚園児にだって言う事だから、その理屈は何も難しいことではないはずである。

 

という事は、「被害者」の方も、一度は「嫌だ」という意思表示をする事が重要である…ただこれは必ずしも言葉による意思表示でなくとも、「その場を立ち去る」などのはっきりした態度で表す…というのでもいい。逆に「本当は嫌だったけど、一緒に笑っていた…」というのではセクハラと認定されないことがある。

 

さらに、そのセクハラの現場を目撃した人、つまりその場にいた人達にも責任が発生する…セクハラされた人が嫌がっているのを目撃し、その場にいながらそれを見て見ぬふりをしたり、一緒に笑っている…という人は、一緒にセクハラに加担しているのも同じ事…という扱いなのだ。

これはセクハラだけなく、他の差別や嫌がらせを目撃した時にも当てはまる…

その対応の仕方については、前にも少しお話しした安全に人助けをする方法過去記事参照)を参考にして頂きたいが、これは往来のヘイトクライム対策だけではなく、職場でのハラスメント対策にも使える手である。

もし、自分がそのハラスメント野郎(男性だけとは限らないが)より立場が強ければ、直接「やめなよ」とたしなめるのもアリだが、それは気まずい…という場合、全く関係ない話題を振って話題を変える…というのがもっとも有効とされている。そして、もしそれでもなおかつその人がハラスメントをやめないなら、その時点から「ハラスメント認定」となり、即上司かHRに通報するべきである。繰り返すが、これはその当事者である必要はない

 

さらに、その通報や「No」という意思表示によって、減給、部署を変えられるなどの左遷、プロジェクトから外される…などの「仕返し」をされた場合は、この時点でやはり即通報である。(この時は当人に面と向かって抗議しなくてもいいらしい…)こうした「Retaliation(仕返し)」は、場合によってはセクハラそのものよりもたちが悪い…と見なされるのは、まぁ当然の事だろう…

 

そして、その報告を受けた上司にも、必ずすぐに対応しなければならない…という義務が生じるが、もしその上司が当てに出来ない時は、そのさらに上に通報する様に…というガイドラインがあるのがアメリカらしい…さらに、その会社内で解決できない時には、市や州、連邦の機関に訴え出る事もできるハラスメントはもはや犯罪扱いだからだ…

 

考えてみたら、これらの細かいガイドラインは、「人が嫌がる事はやめましょう」という、幼稚園児にも教える様な事である…それができない大人は「幼稚園児以下」である事をまず恥じるべきである…生きづらい世の中になってきた…などと嘆くのも見当違いである…その幼稚園児以下の行動が、長年「よし」とされて来た…という事自体が、そもそも問題なのであって、そのせいでどれだけ多くの人がそれまで嫌な思いを我慢してきたのか…という事を考えれば、文句など言えた義理ではない。

 

さきほどもいった様に、差別やハラスメントの定義は年々進化している…今年追加されていたのは、Transgender(性転換者)へのハラスメント…これには、例えば「身体は女性だが精神は男性」で、自分を男性と見なしたい人を「彼女」と呼び続ける…というのも、今はハラスメント扱いである。さらに、その性転換の過渡期にいる人に、それをからかったり、その事で差別する…というのも、ハラスメント認定である…まぁ、これも考えてみたら当然の事ではあるが、これはそれまでそういう配慮はされていなかったので、それで嫌な思いをしていた人達がいたわけで、その人達が「嫌だ」と言える様になった…というのは、良い事だと思う。トランスジェンダーはまだ少数ではあるが、数が少ない…という事は、気を使わなくても良いという言い訳にはならない。

 

もしその判断がわからない…という人がいたら、(自分自身がではなく)もし自分の子供がその被害者であった時、どう感じるか…と考えてみればすぐわかる事である…「自分が」というと「そんな事ぐらい気にしない」という振りをしたがる人も、自分の子供の場合は、そうは思わないだろう…(もし、それでもわからない…という人は、自分の理解力が幼稚園児以下である事の方を心配した方がいいかもしれない…)

 

私自身、セクハラに関しては、さすがにもうそのターゲットになる事はないかもしれないが、その場の目撃者になる事は十分あり得る…さらに、無自覚にハラスメントしてしまう迷惑オバサンになってしまう危険性も無いとは言えない…実は今年は、気がついたらそういう観点から、結構真剣にこのセクハラ講座を受けていた

 

 

★過去記事★