こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子などをお届けしています。

 

これまでのお話:

 

治療と聴覚過敏?!

そのENTドクターはいい人で腕も確かだと思うだが、イマイチ患者の心の機微までは察してくれないようだ…これはまだ比較的若いせいという経験不足から来たものか、あるいは耳ばかり見ていてあまり人間そのものに関心がないのか?…ともかく、私には何の説明もなく、いきなり治療は開始…それも実際、いきなり耳の中に何かを突っ込まれ、心の準備もへったくれもないままいきなり治療が始まった…それは多分カチンカチンに固まった耳垢を粉砕する為の、ドリルなのかそれとも超音波なのか、ギィ~ッ、ギュイ~ン、キィ~ンと言った音が耳の奥から頭に直接響く…それまで沈黙の静かな世界に住んでいただけに、その頭の芯に響くような騒音や振動はちょっと耐え難い…それをアシスタントの看護師さんが即座に液体で洗浄し、ビュイ~ンと機械で吸い込んでいくのだが、この音と振動がまた大きい…そして、時折鋭い痛みが走る…この痛みは予想外で思わず体がビクッと反射反応してしまうのに、ドクターから「Don’t move!(動くな!)」と怒られる

それで、必死で音と振動は我慢するが、時々発生する痛みは、それがいつ来るか分からないだけに、ついビクッとしてしまい、その度に怒られる…言っておくが、私は日本人だからこれでも我慢強い方なのだ!アメリカ人なら叫ぶか、虐待で訴えられるぞ!…おそらく時間的にはさほど長いものではなかったのだろうが、これは永遠に続くかと思われた程辛かった

やっと右の耳が終わった…と思ったら、なんだか激しく目眩がし、貧血の時のように気持ち悪くなる…そこで、続けようとするドクターに「ちょっと目眩がする」としばし待ってもらう…少し頭を下にしていると、やがて目眩は少しマシになる…ドクターは、もう一方の方をやれば、リバースするので目眩も治るはず…と言って治療を続ける…確かにその通り、反対側の耳をやっている間に、目眩は完全に治まった…おそらく右耳の処置が三半規管を刺激したか何かで、目眩を引き起こしたのだろう…幸い、左の方には音と振動だけで、痛みは発生せず、時間も短く済んだ…

 

しかし、その治療の後、右の耳がずきずき痛むこれは大丈夫なのか?あるいは、どこか傷つけてしまったのでは?!…と不安になって聞くと、実は右の耳に炎症が起こっていたらしく、どうやらそれが最初の痛みの原因だったのだろう…という?!

炎症あったんかい?!…という事は、耳垢は、たまたま溜まっていたのが発見されただけで、最初に寝ている間に感じた痛みはやはり炎症が原因だったのか?!…つまり、一番最初の私の中耳炎疑惑が当たってたんやないか?!過去記事参照)

その炎症対策に、ドクターは抗生物質のDrop を処方してくれ、それを10日間使った後にもう一度来るよう、そしてその時に聴力検査もする…と言った。

 

この溜まっていた耳垢というのが、一体いつからのものなのか定かではないが、私は普段から結構耳の掃除に気を付けているつもりでいたのにこの有様…しかも過去20年間、綿棒でそれをぎゅうぎゅう奥に押し込み続けていたわけだが、そのほとんど半世紀分の耳垢が取り去られた今、全てがまるで拡声器かカラオケマイクを通したように大音声に響いて聞こえる…それは自分の声もそうだったし、外から聞こえる音や声もそうである…特に、それまで2週間普段より静かな世界にいただけに、その治療の直後は、ある種聴覚過敏状態になっていたかも知れない…聞こえる音や人声がものすごく大きく響くのみならず、あらゆる音が同じ強さで聞こえるのだ

 

人間の耳には、どこかで聞く必要のあるものだけをピックアップし、その必要のないものと区別する…というフィルター機能があるという…だから喧しい地下鉄の車内やバーの中でも会話ができたり、大勢が喋っている中で、自分の話し相手のいう事だけが聞き取れるとか、電車がすぐ近くを通るアパートにも、いつかは慣れて騒音が気にならなくなる…なんていうのは、そういうフィルターのおかげである…

しかし、それまでほとんど聞こえない状態が長かったので、耳は全ての音をマックス全開で聞き取る…という風にフィルターを調節していたのだろう…その聞き取りの障害(耳垢)がなくなった途端、あらゆる音が同じ強さでガンガン聞こえる

例えば、財布を出した時に、そこに入っていたレシートがガサガサいう音驚くほど大きいのにびびる…自分の服の衣擦れの音こんなにシャカシャカ音を立てながら、私は歩いてたのか?…ドアに鍵を差し込み、それを開ける時に鍵が内部のロックを外すピンッという音これって普通外から聞こえるもの?!…さらに、部屋の片隅の置き時計の秒針の音が部屋の反対側にいても響く同じ階の別のアパートの電話の音…水道の水を出す音やその水の流れる音もかなり大きいが、それが下のシンクのパイプを通っていく音までしっかり聞こえるニューヨークってこんなに喧しい場所だったのか?!…と改めて実感…これまでそれをさほど気にせず住んでいられたのは、実はその時にはすでに耳垢が溜まっていたせい?!

 

もっとも、この聴覚過敏状態は、しばらくするとさほど気にならなくなったので、耳が現状を把握し、フィルター機能を調節してくれたのだろう…また、痛みも間も無く治まった

何よりも、今更ながら人間の順応性に感謝すると共に、聴力が無事戻った事に、心の底から安堵した

 

★過去記事★