こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。
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現代以外の特定の時代設定の作品は、Period Piece(時代物)と呼ばれる…といっても、アメリカの歴史はせいぜい200年ちょっとなので、1900年代ですでに時代物扱いである…実際、1990年代がPeriod Pieceと呼ばれた時のショックは大きかった…90年代なんてついこの間、十分現代やんか!…と思っていたが、考えてみたら前世紀…すでに20年以上前の事なのだ…
それはさておき、そういう時代物の衣装を着る時には、実は下着もその時代のデザインのものが供給される。
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その日衣装合わせした作品の時代背景は1950年代…アメリカの50年代のファッションといえば、タイトなトップにフレアスカート、あるいはスリムパンツやペンシルスカート…といった女らしいシルエット…しかしそのシルエットを作るために、どれほど大変な思いをする事になるか…自分のファッションに対する認識の甘さを身をもって知る事になる…
衣装さんから渡されたのは、いわゆるオールインワン…ブラとボディスーツ、ガードルが1つになった補正下着である…もっとも、最初はそんなに大変だとは思わなかった…割とすんなり着られたし、むしろ背中がしっかりサポートされているような気がし、腰にいいかも…と思ったぐらいである。
ところがこれ、時間が経つにつれ、じわじわと締め付けられてくる…最初は自由そうに見えて、実はどんどん締め付けを強化するとは、どこぞの国の社会みたいではないか…それも、決して息ができない程の強い締め付けではない…ただし息をしても肋骨は絶対自由に動かない…
さらに、そのブラはBulletと呼ばれるコーンシェイプ…当然私の胸にはブカブカである…胸以外の余ったお肉をここに回せないものか…と色々無駄な努力をしてみたが、下腹にはたっぷりあるお肉も、上半身までは届かない…あぁ、この下腹のお肉を胸に移植できたらどんなにいいか…
その時、すかさず衣装さんから、「これを使うように。」とパッドを渡され、そのパッドをブラに入れて上げ底すると、ようやく私の貧弱な胸も、カップにピタリと収まった…さすが…しかし女心は微妙である…
フレアスカートの可愛いドレスを期待していたら、私の衣装はタイトなブラウスとスリムパンツ…私がフレアスカートのタイプではない事は、プロにはお見通しだったのだ…ちぇっ~!
ブラウスは見事に私のサイズにドンピシャである…しかも上げ底ブラで、胸がかなり強調される…しかし、肋骨からウェストやヒップ、太ももまで、下着にぎゅんっと締め付けられているので、本人は全くセクシーな気分にならない…おまけに、パンツのウェストのサイズはどうかと聞かれても、これまた下着で締め付けられているので、パンツ自体がきついのか、それとも緩いのか、自分ではさっぱりわからない…
おまけに、この時代は、アメリカでも生足というわけにはいかない…当然、ヌードカラーのパンストをパンツの下に穿くのだが、これまた地道に締め付けてくれる…どんだけ窮屈やねん!…普段、身体をほとんど締め付けない緩い服装でいられる現代のありがたみが身に染みる…もっとも、そんなふうにずっと甘やかされているものだから、衣装合わせのたった2時間ほど、その締め付け下着を着ただけで、かなり苦しかった…実際に撮影で何時間もこの姿で過ごすのか…と思うと、ふと気が遠くなる…
あのフェミニンな50年代のスリムなシルエットのファッションの陰に、こんな締め付けの苦悩が隠されていたとは…60年代に、アメリカの女性達が、ブラを焼き捨てたくなった気持ちが、すごくよくわかるような気がした…
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