こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

今回は、3年前のちょっと変わった映画のオーディションの思い出です。

映画オーディション その1

エージェントから電話があり、いきなり「カラオケは歌えるか?」と聞くので、「私を誰だと思っとるんや?日本人やで!カラオケは日本が発祥、勿論歌えるに決まっとるやろ!(関西弁訳)」と思いっきりはったりをかます。事実、カラオケは好きな方だ。ただし私のレパートリーは、演歌、80年代のJポップ、そしてアニメソングに限定されるけれど…

それなら…と言って送られたのが、とある映画のオーディション。役名は「Karaoke Singer」…って、まんまやんか!そもそもそんな役までオーディションで選ぶのか?と突っ込みたくなるが、中にはエキストラまで自分で選ぶディレクターもいるくらいだから、それは大いにありなのだろう。

カラオケなら演歌でも歌ってやろうか…と思っていたら、何と課題曲がちゃんとあった。2曲の中から選べるようになっていたが、その内の1曲はラップだったのであっさり断念。普通に英語で話すだけでも大変なのに、ラップなんて論外だ。もう1曲は70年代のヒット曲らしいが、私は全然知らない曲だったので、YouTubeで聞いてみると、黒人女性歌手が信じられない音域まで胸声でベルトアップしているディスコ調の曲…こんな音域、私には絶対胸声では無理!一瞬目の前が暗くなったが、他に選択肢はないし、はったりをかました手前、エージェントにも今更できませんとは言えない…しかもオーディションは明日…仕方なく覚悟を決めてYouTubeを繰り返し見ながら練習し、ミックスベルトでごまかせば、何とかなりそうにまではなった。もっとも、この「ごまかす」と言う発想自体がすでに終わっているのだが…

 

翌日、アポイントメントの時間通りにキャスティング・オフィスに行き、サインインして、控えの場所で待つ。しかしそこには誰もおらず、そこで待っていたのは私だけ…しばらく待ったが誰も出てこないのでいい加減不安になった頃、ようやく奥の部屋から人が出てきて、私の名前が呼ばれた。

指示された部屋に入ると、中にいたキャスティング・ディレクターは、いきなり開口一番「アカペラと伴奏つきのどちらがいい?」と聞く。課題曲の事だが、何と言っても一夜漬け…アカペラで歌える程に曲を熟知していないので、「伴奏付きで」と言うと、彼はiPhoneを取り出し、有無を言わさずいきなりカラオケをスタートさせた…が、なんとその曲のイントロが、私の見ていたYouTubeのバージョンと全然違う…やられた!アレンジが違うとこんなに曲の印象が違うもの?!全く知らない曲にしか聞こえず、一瞬私は違う曲を練習していたのでは?と冷や汗が出る…しかし、本物のカラオケと違って、歌詞が出てくる画面もそこにはなく、延々と続く全く聞き覚えのないイントロを聞きながら、その場に呆然と立ちすくむ…

すると、やがて何となく聞き覚えのある旋律が聞こえて来た…よかった!練習したのと同じ曲だ!しかし、メロディーが聞こえるという事は…歌はもう始まっている?!…という事は…

えっ?いきなり出トチ?!!

 

その2へ続く)