「水色のエミリア」第十話
「え?なに?」
「エ・サマンサ・ギガレアント。わたしを造った魔女。すんごーく、えらそうにしてるの。自分がそうだからって、わたしをあの世界で一番の魔女にしたいみたい」
エミリアの顔は、やはり笑っている。それから、自分のことについて、淡々と話しだした。太陽は海の向こうにいなくなって、空の色は青と黒が混ざった色になっていた。
どうやら、エミリアの世界では、つまり魔女の世界では、魔女は自分の魔法で一体の人形を造るらしい。魔女は、その人形に仮の命を吹き込む。人形は、意志を持ち、自分の考えで行動するようになる。魔女は、人形に自分の魔法を教えていく。人形が全ての魔法を覚えると、魔女は、最後の儀式を行う。
自分の命の半分を「真なる命」として人形に与えるのだ。
「真なる命」を与えられた人形は、魔女の分身として生まれ変わる。それは、一体の人形から一人の魔女になるということを意味する。
エミリアは、魔女が造り出した人形なのだろうか?不思議な力を持っているだけで、僕には普通の女の子に見える。
「どうして、僕に、そのサマンサなんとかっていう人を殺してほしいの?」
僕が疑問に思ったことを口にすると同時に、エミリアはつないでいた手をほどいた。
いきなりだった。白い少女の顔が、目前に迫ってきた。その表情に、笑顔はなかった。息が直接あたる距離。赤い唇が少しだけ開く。息を止めて、その表情を観察した。
長いまつ毛が、閉じられた瞼を飾る。綺麗な人物画を見ているような感覚だ。
「ダイスケ・・・」
僕の名前を呼んだ気がした。心地よい響きが、頭の中を満たしてくる。十本の水色の指先が、僕の両頬をすり抜ける。思わず目を閉じてしまった。
僕の唇に、やわらかく、それでいて氷のように冷たい感触があった。
突然の出来事に、目を開けてしまう。ゆっくりと遠ざかる小さな笑顔が、僕を見つめる。
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