チェルビ・chelbi #8
日曜日は、二人の休日が一緒だった。
ユイは、マンション近くの小さなカフェレストでアルバイトをしている。平日の朝七時半から夕方四時まで働く。週三日ほどは、アルバイトが終わった後にパソコン教室へ通っているらしい。
僕は、今、ユイを待っている。
時間に関係なく、平日でもたくさんの若者で賑わう、無数の店舗が密集する街。過去に何度か、男友達や昔の彼女と遊びに来たことがある。
駅の改札を出たところで待ち合わせた。僕のほうが早く着いていた。五分ほどたつと、自動改札機の向こうにユイの姿を確認できた。
「ごめん。もしかして、結構待った?」
「ううん。オレも、今来たところ」
ユイの服装は、黒い長袖のシャツに渋い紫色の半袖のシャツを重ね着したラフな感じだ。濃い色の細身のデニムパンツに黒いスニーカーで、全体のバランスが崩れすぎないようにしている。
シンプルなデザインのメッセンジャーバッグの肩ベルトは長めにしてある。斜め掛けを後ろに回していた。
縦長で重厚感が少し漂う小豆色の革製のバッグは、ユイの華奢な体つきによく似合っていた。
二人が付き合ってから、はじめてのデート。ユイの顔をみるのは四日ぶりだ。毎日、電話で三十分ほどの会話をしている。二日前の夜に、ユイの買い物に付き合う約束をした。
たくさんの若者が行き交う通り。ユイの歩く姿は堂々としていて、この辺りに慣れている様子を感じさせる。まるでこの街の住人のように、景色の中に馴染んでいた。
通りに面して建っているビジネスビルの大きなガラス壁に映る、とても恋人同士に見えない二人がおかしかった。
ユイは来月で、ニ十一歳になる。僕と四つしか年齢差がなかったが、どう見ても十代後半ぐらいにしか見えない。彼女のことを気遣っていうのなら、幼く感じるのはあくまでも見た目だけのことだ。
メインの通りから二本入った通りにも、若者の姿が多く見られた。
「あそこ。行ってもいい?」
「いいよ。どこでもついていくよ」
真っ白な四角い建物。三階建てぐらいの大きさだろうか。こちらからは窓らしいものは見えない。
正面まで来ると、黒くて大きな物々しい扉が一つあるだけだった。建物の外観には店の名前は書いておらず、看板らしきものも見当たらない。
大きな扉には、細長い銀色の、年季が入っていることを思わせる引手棒があった。ユイがその引手棒を両手で押しながら、僕より先に中へ入っていく。
中には、二十人ほどの若者がいた。カップルや、男同士女同士のグループが、ほどよい明るさの店内を静かに徘徊している。どの若者もストリートファッション誌で見かけそうな、洗練された格好をしていた。
店内には、聴いたことのない外国のロックミュージックが流れている。
今まで見たことのない異質な空間が存在している。少し緊張気味の僕は、ユイの後ろを付いて歩いた。
古臭い色味をした木の床が、歩くたびにギシギシと鳴る。ゆっくりと歩きながら、灰色のコンクリート壁を飾る派手なイラストやモノクロの写真を観察した。
チェルビ・chelbi 目次【クリック】
↓ランキング参加中♪クリックよろしキュン。