さて、今回は、九州大学理学部物理学科平成25年度大問Ⅱを取り上げます。
正確には、大問1の中の大きな小問Ⅱというべきですが。
しかし、力学の分野でもⅠとは、隔絶の感がありますので、分類上
大問Ⅱとしました。
大問1は、ばねを仲介とする質点系Aの衝突問題を扱いました。
大問Ⅱでは、2次元平面において、2つの座標軸の方向に単振動の復元力
を受けて楕円軌道を描いている質点の角運動量、力学的エネルギー
に関する事柄が、出題されてます。
まずは、小問1は、質点の速度ベクトルを求めよ、というものですが、
これは、V=∂⒭/∂tで求まりますね。
次の小問2は、質点がP点に位置しているとき、質点の角運動量を求めよ
というものです。
どの点に関する角運動量かの指定が、ありませんが、原点に関する
と、考えて差し支えはないでしょう。
これは、角運動量ベクトルℓ=r×(mⅤ)の成分を上図のように行列式
を用いる方法で、求めればよいです。
その際、rとⅤは、ともに3次元ベクトルですが、Z成分=0として
行列式に代入すればよいです。
そこは、悩まず、機械的に処理すれば、解が、求まります。
原点に関する角運動量の値とZ成分のみしか持ちえないこと
、が示されます。
これで、小問2まで、終わりました。
小問3は、質点に働く力が、保存力であること、を示せという問いです。
これに関しては、上図のように質点の位置ベクトルを2階微分し、
加速度ベクトルを求めて、ニュートンの運動方程式から、
質点に働いている力Fを求める方針で行きます。
この際、Fのベクトル表示を単振動の復元力の形まで変形しておくと、
のちの処理が、楽になります。
このようにしておくと、質点の受ける力が原点を通るので、
質点の原点に関する角運動量が、保存されるのは、
明らかですね。
力Fが保存力であることを示すためには、
rotF=0
を示すのが、最も精密で、楽な方法です。
上図のとうり、力Fは、保存力であることが、示されます。
次の小問4は、下図のとうり、点Aと点Bにおける
質点の運動エネルギーの差を求めよ、というものです。
これは、下図のように、質点の位置ベクトルrを時刻tで微分したものが、
すでに、得られているので、それにA点、B点における時刻を代入して、
各々の点における速度が求まるので、運動エネルギーの差もたやすく
でてくるでしょう。
これで、小問4まで終わりました。
次の小問5は、楕円軌道を描いている質点の力学的エネルギー
を求めよ、というものです。
小問3において、この楕円軌道を描いている質点の受ける力は、保存力
であることが、示されていますので、力学的エネルギー保存則により、
楕円軌道上の1点における力学的エネルギーが求まれば、いいです。
F:保存力とU:ポテンシャルエネルギーの間には、
F=-∇Uという超重要な関係が、存在するので、
U=-∫Fdr から求められます。
保存力 F=m*ω²r
よりr=0においてF=0より、Uの基準点は、原点r=0に取ります。
A点の力学的エネルギーEaを求めていきます。
まず、A点におけるポテンシャルエネルギーUaは、
Ua=-∫(x=0→x=a)(-mω²*x)dx=1/2*m*ω²*a² で与えられます。
A点における質点の運動エネルギーkaは、
ka=1/2*m*Ⅴa²=1/2*m*(b²*ω²) で与えられます。
以上のことより、
Ea=Ua+Ka=1/2*m*ω²*(a²+b²)というキレイな形の解になります。
詳細は、下図をご覧ください。
これで九州大学理学部物理学科平成25年度
大問1‐Ⅱ(この投稿では、大問Ⅱとしています。)の解答が、すべて
終わりました。
機械的な処理により解き進められる問題より難しくは、ないのですが、
はたして、「これでよかったけ?」という不安が、出がちです。
受験生の中には、全問正解という場合も十分考えられるので、
できれば、そのようになるよう基礎事項の習得と応用を十分に、
しておくべきです。
さて、本問のように、2次元平面において2つの座標軸方向に、
単振動の復元力を受ける場合の質点の運動をリサージュといいます。
この場合の質点の描く軌道は、各座標軸方向の初期条件と、
質点の周期により異なってきます。
本問では、楕円軌道を描きましたが、楕円軌道の特徴として、
考察するに値する面白い性質が、あります。
それは、後日の投稿にまわします。
尚、本問は、サイエンス社基礎物理学演習Ⅰに、「楕円振動」、
もしくは、「リサージュ」として、取り上げられています。