今回は,、神戸大学理学部物理学科編入

試験2014年7月4日実施の大問Ⅱをとりあげ

ます。

前半は,電気双極子の作る電位と電場を

求めよ,というものです。

求める点をP点とするとP点での電位φを

求めて、

E=-δφ/δr

で電場ベクトルを求める,という基本的な

出題ですが,結果を与えられたベクトルで

表すことが要求されており,これが,少々

ウットウシイですね。

近似も精密に考えると,どの時点で,使えば

よいのか?

近似の精度をテイラー展開まで考慮する

のか,それとも,最も平易な近似式である

(1+X)^n≒1+n*x   ※

の段階でよいのか、判断に迷いますね。

結論を先に言うと,※式の精度の近似で,

OKです。

テイラー展開ともなると,多変数なので、

煩雑さは,普通でなくなり、時間が

足りません。

私もそこで悩み、前回からの投稿から,

時間がかかりました。





まあ最も平易な精度の近似である※式を

利用すれば事足りる,ということでひと安心

ですが,解を与えられたベクトルで,表す

ところに難儀に感じますが,高校数学の

青チャート数B程度のレベルです。

こういうところで,高校数学の手法が要求

されるとは,趣向がなされていて、

おもしろいです。







次は,得られた静電ポテンシャルφ(r)

から,E=-δφ/δr

を用いてP点における電場ベクトルEを

求めます。

ここで,

δr/δx=x/r②

δr^(-3)/δx=δr/δx*δr^(-3)/δr
=x/r*(-3*r^(-4))

=-3*x/r^(-5)  ③

②と③は,計算でよく使うので,覚えて

おいても,いいかもしれません。











さて,後半の問題である問3にはいります。

原点近傍にN個の点電荷が,存在するとき、

その全電荷をQとします。

つまり、

Q=Σqi です。

問3では,Q≠0のとき

これは,原点近傍に1個の点電荷,もしくは

1個のイオンが存在する,とみなせる場合

です。

このとき、原点から十分遠い点Pの

静電ポテンシャルφは,下図のように

φ=1/(4*π*ε0)*Q   ④

となり,これが,問3の解です。

次に,問4,Q≠0のとき。

分子でいえば,中性分子のとき,

φ=1(4*π*ε0)*r^(-3)*Σqi*(r・di)


で与えられます。これが問4の解です。

問3の解④式は,1個の点電荷もしくは,

イオンが,遠方に形成する静電ポテンシャル

問4の解⑤式は,中性分子が遠方に形成する

静電ポテンシャル

を各々表しています。

次に,式④⑤を同じ静電ポテンシャルφ

表す式の中に含ませると、

φ=1/(4*π*ε0)*Σqi*r^(-1)

  +1/(4*π*ε0)*r^(-3)* ( μ・r)

=φ4+φ5

ここで

φ4:問3のケースQ=0 1個の点電荷もしくは
  イオンの場合の遠方の静電ポテンシャル  

φ5:問④のケースQ≠0中性分子の場合の
   遠方の静電ポテンシャル

またQ=0の場合で、 出現しているμは,
電気双極子モーメントベクトルです。

μx=Σqi*xi

μy=Σqi*yi

μz=Σqi*zi

μ=(μx,μy,μz) 

で定義されるものです。

よって原点から十分遠方の点Pにおける

静電ポテンシャルは,φ5よりもφ4の

ほうが大きいので超遠方であれば、φ4の

静電ポテンシャルのみ感知することが

できます。

それから原点に近付くにつれφ5の

静電ポテンシャルを感じるようになる。

この問題の結論として,超遠方から原点を

見ると1個の点電荷が存在しているように

見える。

それから原点に近づくにつれ、

電気双極子、電気四重極子が次第に

見えてくる。

これが,結論❗