先回は、編入物理の力学の必修事項を使う問題として、九州大学理学部物理学科の


平成26年度の大問2を取り上げました。今回は、同じ九大・理学部・物理の平成27年度の


大問2を取り上げてみたい、と思います。前回は、剛体として、板をとりあげました。


そして、慣性モーメントの導き、剛体棒が剛体振り子とみなせる場合の回転の運動方程式


を単振動の方程式への変形、剛体振り子の周期の導き、力学的エネルギー保存則の応用


等を行いました。


今回も同じ、九大・理学部・物理の編入過去問の平成27年度の剛体の力学を扱いました。


しかし、今回扱った剛体は、球です。


ところで、この問題は、「裳華房 基礎物理学演習シリーズⅠ物理学 小出昭一郎著」

の「力学」分野の最後に乗せられている例題と酷似しています。


1 まずは、直径に関する慣性モーメントを求めさせます。


3とうりほどありますが球をZ軸を中心軸とする


微小なたかさdzをもつ微小な剛体円板の


集合体とみなして、求めます。


剛体球の体積密度をρ=m/(4/3*π*a³)とします。


 z=zにおける微小剛体円板の面積は、

π*(√a²-z²)²=dsと、おきます。

高さはdz

よってその質量(dmとします)は、

 dm=ρ*ds*dz

故に、微小剛体円板の中心に関する慣性モーメント

(dIとおきます)は、

dI=1/2*dm*(√a²-z²)²で与えられます。


半径r、質量mの剛体円板の中心に関する慣性モーメントI は、


I=1/2:*m*r²


で与えられることは、導けるようになり、かつ記憶しておきましょう。


次に、剛体球は、微小円板の集合体と考えられるので、剛体球の直径に関する


慣性モーメントI は、


I=∫(-a→a)dI=∫dI=∫(Z:-a→a)1/2*dm*π(√a²-z²)² dZ


=∫(Z:-a→a)1/2*ρ*ds*dz


=∫(Z:-a→a))1/2*ρ*π*(√a²-z²)²dZ


=∫(Z:-a→a))1/2*m/(4/3*π*a³)*π*(√a²-z²)⁴dZ


=2/5*m*r²


以上で、もとまりました。上のこまごまとした数式の羅列


をみるよりも、上図をご覧いただいた方が、すっきりとまとまっている、


と思います。



2














次は剛体球の平面衝撃運動を扱っています。


上図のように、摩擦の発生しない床面上に剛体球を置き、t=0において、


球の重心よりもhだけ高い地点に大きさJの力積を瞬間的に与えます。(状態ア)


剛体に力積Jを与えるときは、


剛体の並進運動  剛体の重心の運動量は、剛体に与えた力積の大きさだけ変化する

            その際加えられた力積は、剛体の重心に集中して作用する、

            

剛体の重心の周りの回転運動

            剛体の重心に関する角運動量は、剛体の重心に関する力積の

            モーメントの大きさだけ変化する。



という鉄則があります。



次に、剛体球を滑らずに転がる運動をさせるためには、t=0において力積Jを剛体球


のどこにあたえるか?等を問われます。


これは、剛体球には、状態アから状態ウで台のP点に衝突するまでの間、外力が働かない


ので、状態アから状態ウまでの間、滑らずに転がるためには、t=0の初期状態アにおいて、


滑らずに転がる条件を満たしさえさえすればよい。


それは、剛体球と床面との接点において、剛体球の並進運動速度vgと重心の周りの


回転運動の速度vr=a*ω0 とが等大逆向き逆向きであればよい。


vg=vR=a:*ωをみたす高さhの地点に力積hJを与えればよい。


するtと、


h=7/2*a


という関係式がえられます。


hのこの値は、半径rの剛体球の「相当単振り子の長さ」です。


「相当単振り子の長さ」の特徴のひとつとして、


「衝撃の中心」というものがあります。


「剛体のある点に瞬間的に激力を当てた時、その点から、相当単振り子の長さだけ


はなれた剛体上の点は、瞬間的に静止する」というものが、それです。

本問の場合は、剛体球は、セ氏しているので、球と床との接点から、「相当単振り子の長さ」


だけ上部の点に激力を与えればよいです。


この小問は、「編入力学」において、中レベルの問題です。

3










次の大問は、左図のように、状態アから状態イまで滑らず


に転がってきた球が台の左端P点において衝突し、台の上に乗りあがる(状態エ)までを考えます。


状態ウにおいて球のP点での衝突の直前、直後において成立する保存則は、剛体球のP点に関する


角運動量保存則のみです。


P点に衝突する前の剛体球のP点に関する角運動量は、


mv₀*(a-h):剛体球を重心にすべての質量が集中した質点とみなします

        剛体全体の並進運動のP点に関する角運動量


Iℊ*ω₀:剛体球を構成する質点の重心の周りの角運動量


という、2つの角運動量の和として、与えられます。


P点との衝突直後の角運動量は、


I℘*ω`で与えられます。


I℘=Iℊ+ma²(平行軸の定理)

  Iℊ:剛体球の直径に関する慣性モーメント

  ω‘:p点と衝突直後の剛体球の角速度


以上のことより剛体球のP点の衝突直前直後において成立するP点に関する角運動量保存則は、


次のように表すことができます。


mv₀*(a-h)+Iℊ*ω₀=I℘*ω`=(Iℊ+ma²)*ω`


上式より)ω`が求まり、剛体球がP点を乗り越えるためには、


1/2*Iℊ*ω`²>=mg*h


が成立すればよいです。


これから剛体球がP点で台上に登りあがるためにひつような最小の初期角速度ω₀


が求まります。



ここで、剛体球のP点の衝突直前直後において成立する力学量は、P点に関する角運動量


のみです。ある点のまわりの角運動量は、その点に関する外力のモーメントの大きさだけ


変化します。それ故、ある点に関する外力のモーメントが働かないとき、剛体のその点に


関する角運動量は、保存されます。


よって、本問において、剛体球が台のP点に衝突した際、剛体球がP点からうける力fは


Pのまわり力のモーメントの効果は、ありません。


故にP点と衝突直前、衝突直後の剛体球のP点に関する角運動量は、保存されます。


P点との衝突の際、剛体球の表面には、微小な変形が生じます。


また剛体球の周りの空気分子は、衝突によるエネルギーで四方八方に飛び去ります。


つまり、音のエネルギーとして散逸します。


このようなことが生じ、衝突の直前、直後において力学的エネルギーは保存されません。


衝突の直前直後では、運動量は、保存されません。


これは、質点が、壁と衝突する際、運動量は、保存されないのとよく似た理由です。


剛体球がP点と衝突直後角速度をω‘に変化させsてからは、球の接線方向に


静止摩擦力fをうけます。


このfの効果により、剛体球は、台を登り切ります。


このfは、静止摩擦力よりP点を登り切る前後で剛体球の力学的エネルギーは、保存されます。


以上「剛体の平面衝突運動」や「相当単振り子の長さ」の復習のため、


九大・理学部・物理学科 h27年度 の大問2をとりあげました。


本問は、編入の力学に関しては中levelですが、使う知識が多くあり、復習や確認に


関して非常に適しています。


また、冒頭に述べた如く、本問は「裳華房 基礎物理学演習シリーズⅠ物理学 小出昭一郎著」

の「力学」分野の最後に乗せられている例題と酷似しています


これは、同社裳華房「物理学」小出昭一郎 著9の演習を目的に書かれたものです。


旧帝大の編入物理対策として、昔から名著とされているものです。


確かに、そのとうりですが、どちらかというと、重用事項をコンパクトに解かりやすくまとめられた


本です。よって理論の解説は浅いです(編入レベルではじゅうぶんですが)

物理のイメージの広がりは、あまり来たできません。


それから小さな声で、誤りが多いです。