生産的な皆様を横目で見ながら自主的寝たきり生活を送っているわけですが、控えようとしていても読んでしまう電子漫画。
今更なマイブームは「俺はまだ本気出してないだけ」「スラップスティック」の青野春秋先生。(今マンガワンというサイトならほぼ全話読める)

この人、凄く漫画が上手い。
絵も、私は凄く上手いと思う。
松本大洋先生系、いや、つげ義春先生系、で独特な味があるな、と思っていたら病気の後遺症で手に障害あるとのこと。
それでスムースな線が引けないなどの事情があるのを、簡潔にする、スクリーントーンを使わない、構図とコマ運びで最大効果を狙う、など強みに変えていて本当に頭が下がる。
とにかく構図というかコマの構成が驚異的に上手い。
それは子供の頃本当に貧しくて「ドラえもん」23巻を繰り返し読みながら「コマとコマの間の省略されたシーンを自分で考える」という遊びをやり倒した結果に他ならない。
偉い。偉すぎる。

青野春秋、好きになりすぎて彼のnoteまで追っかけてしまったら、「俺はまだ本気出してないだけ」のシズオが厚生労働省のマスコットキャラクターになった話が出ていてなかなか笑った。



「俺は・・」はあまりにも主人公の40歳にして漫画家を目指す異常に楽天家で自信家のダメ中年シズオがリアリティあって、人生のペーソスに満ちたストーリーも相まって作者=シズオ、の噂がながれたのだが、実際青野春秋先生がこの連載を開始した時は弱冠26歳で、ストーリーは全部創作で、主人公のビジュアルだけリアルな身内の「静男兄ちゃん」から借りただけだった、という鬼才な小話がある。

上記リンクのノートにある「俺は・・」実写映画化の話をシズオ役を堤真一で、というのを知り青野先生は「いくらなんでも堤真一が受けないだろう」とOKしたら、堤真一は「いくらなんでも原作者がOKしないだろう」と思ってオファーを受けてしまっていて、お互いの思惑がすれ違って実現してしまった話も面白い。
「俺はまだ本気出してないだけ」、映画はなんとなく前にアマプラあたりで観たけれど、私は面白くできていたと思う。



青野春秋先生の弱点は女の人の顔の描き分けができないところなんだけど、多分本人も分かっていて、「落書き」として色々な女優さんや芸能人の似顔絵で鍛錬していて偉いと思う。




青野先生は凄い虚弱体質で持病もあり、現在は闘病中で「スラップスティック」の連載も止まってしまっている。 

茨城の北の複雑な育ち方をした虚弱でマンガが大好きな男の子、血が繋がっていない元旦那の息子2人を奮闘しながら育てる料理が悪魔のように下手な母親、地域一の不良なのに学業も仕事も優秀なイケメンの兄、引きこもりニートから東京の広告代理店の花形になった静男兄ちゃん、崩壊した名家の息子のクールな友人うーちゃん、みんなの行く末を見届けたい。

主人公も静男兄ちゃんも冒頭でそこそこ成功している姿がでてきたから二人は安心してみていけるけれど、主人公春人の友人の、14代続く薬屋で地元の名家なのに父親はアル中で一家は崩壊し切っているのをクールに耐えつつ暗い闇を心の中に育ててる、秀才でイケメンのうーちゃんが気になって気になって。

それからnoteで青野先生は「身近に自ら命を絶った人がいて身元確認や始末をした」という話を書いていたから、ちょっとお兄さんについても心配だったりもしている。

(これ最初「身内」と読んだんだけど読み直したら「身近」だったんだよね。そうすると春人の友達くらいまで範囲が広がるのがまた心配。意外とお兄さんくらい強いと大丈夫かもしれない)


青野先生は連載の時に結末をしっかり決めてから取り掛かる、基本人気の上下や編集とのやり取りで内容の変更はしないとのことなので、「スラップスティック」に出てきたみんなについてももうある程度の結末が出ているから描けるようになったんだろうと思う。


いつまででも待ちますから、どうぞゆっくり身体を治して完結させてくださいね、青野先生。