鬱だ鬱だと言いながら、お出かけ記録。

 
先週金曜日は上野の東京都立美術館で開催されている「奇想の系譜展」へ。
 
 
本当は根津美術館の「酒呑童子」展も観るはずだったけれど、起きられない、体がなかなか動かないで出かけるのが遅くて入館時間に間に合わず。
もう時間なくて再訪できない。トホホ。
 
「奇想の系譜展」の方は金曜日だったからナイト・ミュージアム・デーで20時まで開館だったからなんとか行けました。
 
 
どんな展示かはリンクをご覧ください。
私は学生時代に辻惟雄先生の同名の著書に出会ってからこの分野が大好きなため、「またお目にかかりましたね」な作品も多かったりして、驚いたり感動したりはもうしません。
 
でも岩佐又兵衛があんなにまとまってたくさんじっくり観られたのは初めてでかなりエキサイティングでした!
岩佐又兵衛と言えば、歴史好きには印象深い荒木村重の息子。
織田信長の盟友というか家臣だったのに反旗をひるがえした上に自分は逃亡して家族や家臣がまとめて打ち首や焼き殺され、自分は逃げ回って堺でちゃっかりというかなんというか茶人になって52歳まで生きた、ちょっとわからない人。
村重の末子だった又兵衛は乳母にかくまわれて脱出し命を取り留め、絵師として育ちました。
 
 
岩佐又兵衛は美術史的には「浮世絵の祖」と言われたりしているのですが、やっぱりその時代と生きてきた背景が江戸になってからの絵師とは違う。
その常軌を逸した異常に精密で絢爛豪華な描き込みっぷり、殺人や戦いの場面の血みどろの「リアリティ」が迫ってくる感じは、後年いくら歌川国芳や河鍋暁斎がグロテスクや血みどろな場面を描こうと、追いつくものではないです。
その中を体験で生きてきた人と美学と妄想でそれを描いている人の違いがやっぱりある。
 
(でもすっごい明るいのよ、又兵衛の絵。血みどろでも彩度が高いというのかな。)
 
今回の展示(前期)では上記のリンクで紹介されていた「山中常盤物語絵巻」と「堀江物語絵巻」のちょうど一番凄惨な場面が開かれて出ていました。
いままで岩佐又兵衛は「豊国祭礼図屏風」とか「洛中洛外図屏風」とか大作の屏風でみる事が多かったのでただ描き込む熱量に圧倒されていたんだけれど、今回血みどろの絵巻をじっくり見て、ほとほとこれは後年の血みどろ絵の人達とは違うよ、と首を垂れました。
 
「山中常盤~」と「堀江物語~」を両方並べて見られるのは前期の展示でだけのようで、見られてとても運が良かったです。
 
今回の私の他の見どころは・曽我蕭白のサインがめちゃめちゃ可愛いこと。
絵によってかなり遊んでいて、お茶目なお人柄を感じました。
やっぱ若冲より蕭白だよなー。
蕭白は若冲に対抗意識があったという話ですが、再評価の面でももうすぐ若冲に追いつくよ、待ってて蕭白。
 
さらに・鈴木基一の凄さがやっとわかったこと。
今まであんまりクルッテル作品を見てなかったからあまりピンときてなかったけれど、「夏秋渓流図」の、ありえないビビッドな青い川の水に金の線描きのうねり、ありえないエメラルドグリーンの杉の木や草々、どうかしてるよ。(褒めてます)
 
 
今まで構図的に破綻のない其一の作品ばっかり観てきたから、あまり気がついていなかったけれど、一瞬綺麗綺麗なお花の絵でも使われている色のハレーション加減がどうかしてる。
お洒落狂気。
 
まだ始まったばかりでテレビで紹介されたりしてないようで、あんまり混んでいなくてありがたかった。
本当に久しぶりに激混みでない日本美術の展示を観たかも。
 
ヘトヘトになったから上野公園のスタバの向かいのカフェでビールとシーフードリゾットを頼んだら、サイゼリア以下みたいな味のものが来てびっくりした。
あれー?ここそんなにまずくないと思っていたんだけど?
前は酒の肴的なプレートを頼んで結構良いと思ったんだけど。
もしかして「調理したもの」はダメというかファミレスと同じ味ってことかな。
よく覚えておこう。