さて・日が落ちてから岐阜県多治見から三重県のJR四日市駅に着きました。
私のホテルは近鉄四日市の近くなので歩いて近鉄に、と思ったら歩けるだろうけれどかなり遠いことが判明。
大通りを一直線、3つ目の信号を越えたあたり、らしいのですが街灯も暗く1つ目の信号までしか見えません。
あっさりあきらめてタクシーを使います。
ワンメーターで申し訳ない感じでしたが、街灯が乏しい上に閉まったオフィスばかりの暗い知らない土地の道は歩きたくない。
タクシー運転手さんによると三重で一番大きな町なのにJR四日市周辺はにぎわいを近鉄四日市周辺に奪われてしまって、特急も停まる駅なのに駅構内のキオスクさえなくなってしまったとか。
たしかにとても広い駅なのにアメリカの田舎の駅のようにがらんとして灰色でした。
近鉄四日市周辺には飲食店街も22時まで開いている大きなスーパーもあり、おひとり様ツーリストにも心細くない感じで少し安心。
小さいけれどなかなか居心地の良いビジネスホテルの部屋に荷物を置いて、すでに空腹ではない感じですが
「どうしてもどうしてもラーメンと餃子を肴にビールが飲みたい!」と思ってしまって夜の歓楽街をフラフラ歩きます。
普通の中華屋さんがないかなぁと探したのですが見当たらず、おひとり様でも入れそうなチェーン店の餃子居酒屋なるところに入ります。
ギョーザが8個で280円!もちろん冷凍の中身スッカスカの物ですが、280円だもの文句は言いません。
560円の白湯スープのラーメンとピリ辛キュウリ(280円)、お勧めだという生のピーマンに肉みそが付いたもの(180円くらいだった)、ビールの大びんが650円、という超庶民な晩餐を取りました。
ビールの大びん650円は良心的なお値段。
ちょっとお腹がいっぱいになりすぎてラーメンをハーフサイズの「〆のラーメン」にしてお腹にたまらない肴を取るべきだったなあ、と反省。
でも食べたかったものは食べられて大満足です。
温かいものが食べられればそれで満足だったので味のことは敢えて言いません。
ほろ酔いでも体幹トレーニングだけは夜にして、次の日の計画をしっかり立てて、幸せに就寝しました。
さて・明けて18日月曜日。
なんとなく全裸で体操したりコーヒーを飲んだりしていたら
ぐらぐらっ、と揺れました。
あ、地震、この感じならここは震度3くらいかな、と確認のためにTVをつけます。
大阪北部震源地、で 震度6弱、震源は地下10キロメートル。
関東人は地震に慣れ過ぎているところがあります。
(ので、以下の人でなしな感想はお許しください、状況を良く知らなかったのです)
震度3は痛くもかゆくもない、震度4でちょっと警戒、震度5でも「ちょっと揺れたね」。
私は泊まりがけで大学院の卒制設置をしていた明け方に震度5が来て、大きなパーツを組み上げて作った自分より大きな背丈の作品が微動だにしないのを見ているので「震度6弱」と聞いてもそれは大騒ぎするレベルとは思えませんでした。
情報収集のためにつけたTVでNHKのヘリコプターに乗り込んだアナウンサーが裏返った声で
「建物の倒壊はありません!!!!火の手や煙も確認できません!!!!!!!!!」
とけたたましく叫んでいるのを聞いてあおっているようで嫌気がさしてしまいました。
「ちっ、震度6弱で建物倒壊してたら日本やってらんねーよ、 どこのメキシコだゴルァ」
とつぶやいてとりあえずパンツをはいて身支度を整えました。
電車の遅れなどだけ確かめようとスマホで確認、私が午前中に訪問を予定していた三重県大羽根園の「パラミタ・ミュージアム」までの交通機関は何の遅延もないと知って計画通りに出発します。
「パラミタ・ミュージアム」はイオン・グループの創始者の一族が運営している美術館で、故・池田満寿夫の陶芸を中心に収集された陶磁器や絵画・からくり人形などを展示している美術館。
http://www.paramitamuseum.com/info/paramita.html
ここで毎年開かれている現代陶芸家6人の作品を入場者の人気投票で大賞を決めるコンペ「パラミタ陶芸大賞」に知人が2人も参加していて、しかもそのうち一人は若いけれども作品と制作姿勢が本当に尊敬に値する四国の作家、もう一人は先日会ったばかりの母校の先輩にして工芸科主任教授です。
四国の作家からは入場チケットまでいただいてしまっているので、この機にぜひ展示を見て彼女に応援の1票を入れようと出かけてきたわけです。
第13回パラミタ陶芸大賞展
http://www.paramitamuseum.com/plan/exhibition.html
単線で車両は2つという「近鉄湯の山線」に乗って小雨の中行ってきた展示は、非常に良かったです。
目当てで行ったのは四国の作家稲崎栄利子さんと先輩の井上雅之さんでしたが、他の作家もそれぞれに気合が入った展示で、正直誰に投票するのか会場ですごく迷うことになりました。
命を削るようにして極小の単位で苔の生命体のようなものを作る稲崎さんと、母校多摩美らしい80年代90年代に大流行した大きすぎる陶のダイナミックな作風を今も貫いている井上さんの展示の対比が素晴らしかった。
他の作家さんは正直あまり期待してなかったのですが(失礼)若い作家さんも才気と思いつきのレベルで作っていた作品群から抜けて表現として底力を感じるような作品になってきていて、とても見ごたえがありました。
隣の部屋で展示されていた古萬古焼の展示がまた非常に良かった。
「萬古焼き」は江戸時代中期に桑名の豪商である沼波弄山(ぬなみ ろうざん)(1718~77)という方がいきなり始め、それは一代で絶えてしまうのですがその流れを汲んで三重の数か所で再興された焼き物を「萬古焼き」弄山の作品を「古萬古、こばんこ」と呼びます。
この展示では始祖の沼波弄山の作品を中心に展示されていて、これがもう モダン!お洒落!可愛い!!のです。
沼波弄山は知識人で豪商だったという背景もあって江戸絵画の伊藤若冲と似たスタンスや美意識を感じます。
知的で芸術至上主義で作りたいものを心のままに高い完成度で作りきった、という作品です。
丁度時代背景として西洋の文物や書物が再び解禁になった背景があったため、絵付けや形にインドや西洋の文物の影響が色濃く出ています。
そこがとても楽しそうで垢抜けているのです。
すっかり沼波弄山のファンになってしまって、この展示だけのリーフレットがあれば買いたかったのですが、作られていませんで残念でした。
常設展示の池田満寿夫の「般若心経」シリーズは彼の遺作ともいえる作品群なのですが、迫り来る死に対する苦しみと恐れですっかり池田らしい華やかな良さがなく苦痛とうめき声の聞こえてくるようなものたちなので、できるだけ見ないようにしたい。
でも美術館の構造上どうしても展示室を通らないと2階の企画展示室に行けず、
息を殺して早足で通り過ぎる感じでやり過ごしました。
現代の美術作品で悪い気の出ているようなものってあんまりないんだけれど、
(古い海外から来た仏像や祭具なんかで怖いのはある。)
あの作品群はなんか本当に私にはツラいのです。
2つの企画展が素晴らしく良かったので長居したいところでしたが、次の予定もあるので1時間ほどで四日市へ戻る電車に乗りました。
そこまでは順調だったのです、この旅。(笑)