頭を下げる。

山梨の家の寝室と仏間は北の仏壇から南の縁側までひと続きで、古い黒い板戸で仕切れるようになっている。
日中は明け放して空気が通うようにしていて、寝るときにその板戸を締めて寝室を個室にして寝るわけなんですが。
いつの頃からか、板戸を締めるときに仏壇が目に入ると一度手を止めて深々と頭を下げて、
「今日も一日ありがとうございました、無事に過ごせました」と口に出して言うようになってしまった。
毎朝神棚も仏壇も拝んでいるんだけど、それはそれとして、さらに頭を下げたくなってしまうのだ。

今日、オークションで落とした着物達を干して、整理して畳んでいたら。
その生地の良い織りであること、きちんと良い状態で保管されてきたこと、時々はしつけが付いて全くの新品で私のところに来てくれる方もあること、がしみじみ心に染みてきて
元の持ち主はどんなにか楽しい気持ちでこの着物を誂えたのだろうか、そしてどういう経緯でネットーオークションで買い叩かれて私のところに来てしまったんだろうか、と心を馳せる。
思わずガバッと手をついて頭を下げてしまって、「ようこそお越しくださいました、来ていただいてありがとうございます！大事に着させていただきます！」とご挨拶をしてしまう。

１０月の下旬なのに、夏野菜のシシトウやピーマンがまだまだ実をつけてくれている。
特にシシトウなんてまだ鈴なりですよ。
摘みながら幾度となく、「こんなに寒くなったのにまだまだ実をつけてくれてありがとう」と頭を下げて言ってしまう。

ご飯が炊けた時もご飯があまりに神々しく美味しそうなので、その美しさと有難さを口に出して褒めて頭を下げる。
あああ、この調子で行くと１人で物言わぬ器物を相手に一日中ブツブツお話している人になりそうだ。

でも、頭を下げずにいられない何かが強烈に私の感性に来るのだ。
変な人にどんどんなって行くけれど、「良い変な人」だと思うので・諦めることにした。

こういうの、実は著名な女優さんがやっていてブームになる、とか・ないかなぁ。(^_^.)